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2023 ソロギター・コンペティション 審査を終えて

去る10月7日、第一回ソロギター・コンペティションにおいて審査員を務めて参りました。

何についても言えますが、「第一回」というのはとても重要なものです。

進行面も音響面も、第一回にしてきっちりしたコンペティションの「体」をなすことが求められます。「昨年の前例」も無く常に手探り状態を強いられ、特に今回はクラウドファンディングでの開催という事もあり、懸案事項は山のようにあったはずです。

発案から開催まで、昨年のプレ大会を含め、長い長い道のりを進んで来られた、主催のアコースティック・ギター・ワールド重枝譲氏に心より敬意を表します。


今大会は「カヴァー部門」「プロフェッショナル部門」と2つの部門を設定したものとなりました。
「プロフェッショナル部門」ではオリジナル楽曲と、オリジナルアレンジ楽曲の2曲の演奏が必須。それに対し「カヴァー部門」は、オリジナル曲を持たずとも、自身のアレンジでなくとも、既存のギター曲やアレンジを2曲演奏することで出場できます。純粋に「演奏」のみに特化した部門。これはコンペティションの門戸を広げた意味で、非常に画期的だったと思います。


出場者は、ステージに設置されたマイク(ゼンハイザーe914。実はこれ、私の私物でした・・・)を使用し、MCを介さず2曲を演奏します。
審査は別室でのブラインド審査ではなく、客席で行われました。

また今回は司会者がいて、演奏者の名前と演奏曲をステージ上でアナウンスします。
これが個人的には結構重要だったなと感じました。
他のコンテストではブラインド審査の公平を期すために、進行役が演奏番号のみを述べる方法を取る場合があります。それはそれで独自の緊張感を持ちますし、良い面もたくさんあります。
ですが今回、司会者の明るく柔らかな声は、会場全体の「がんばれ!」という気持ちを代弁しているように響きました。これは今大会が終始明るい雰囲気で進行した大きな要因だったと思います。


当日の審査員は5人。
全員現役のギタリストです。

小川倫生、エバラ健太、龍藏、矢後憲太、伊藤賢一。
(第一次音源審査は小川倫生、松井祐貴、井草聖二)
面白い5人だったと思います。
審査員室は終始和やかで、忌憚なく意見を言い合える健康的な空気でした。全員がバリバリのステージマンということもあり、ステージ上での出来事には非常に敏感という意味では厳しい審査となったと思います。

審査の内容について詳細は伏せますが、個人的に注目した点についていくつか述べてみたいと思います。

①ステージング
平たく言えば、音楽に入り込めているか。
これは大前提のように感じられるかもしれませんが、とても難しいものです。単に「リラックスしているかどうか」とは違います。
楽音が損なわれずコントロールされ(手の内に入り)、ダイナミクスが表現されていること。
「ダイナミクス」というと大きな音が必須と思われるかもしれませんが、そうではありません。楽曲のサイズに必要な強弱やアーティキュレーションが実現されているかどうか、です。
なので例えば、小さな音量「のみ」も避けたいですがtoo muchもまた同様なのです。
それらがしっかり表現されるステージングであるかどうか、そこに第一に注目しました。


②音質
①のステージングを基として、その重要要素である音質にも注目しました。
これは基本的にタッチコントロールの事ですが、もっと上流に要素を求める事もできます。つまり楽器です。
楽器及び楽器のコンディションですね。
演奏性のために音質を犠牲にする、これは非常によく見られる光景です。要するに弦高を下げすぎるとギター本来の音質は得られません。これは厳然とした事実です。
その上でタッチコントロールの説得力や巧みさがあるかどうか。
そしてそれらが最終的に音楽に帰依しているかを見ていました。


③楽しさ
コンテストの審査員とはいえ、客席にいるからには楽しむつもりで臨んでいました。
楽しさにも色々ありますが、その要素は明るさや華やかさだけではありません。音楽表現でワクワクさせてもらえるならば、沈着した世界観でも心から楽しい。
私が「音楽表現」項目で最高得点を付けさせてもらった演奏者は決して大きな音ではありませんでしたが、アーティキュレーションが縦横無尽で非常にスリリングで楽しかった!
私は常に音楽を楽しみたいのです。そんな期待感で客席に座っていました。


皆さんの演奏、本当に素晴らしかったです。
心から、全員を褒めたたえたいです。

コンテストなので結果は必ず出ますし、それが醍醐味だと思います。
それぞれが結果を受けて次にどうするのか、これからも注目していきたいと思います。

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