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「Little Letter」曲目解説(7)R357

使用ギター:Gibson J-50
使用マイク:Schoeps CMC65

R357とは、国道357号線の事です。
通称「東京湾岸道路」。その名の通り、千葉〜神奈川まで東京湾岸沿いを走る道路です。

私は副業として「自走屋」(車を運転してその車自体を運ぶ仕事)という仕事をたまにしていてて、この道路はよく使います。
357は基本的には港や空港を起点としてトレーラーやトラックが走りまくる道です。私が乗るのは乗用車ばかりなので、夜遅く港に向かって走ると前後左右大型車だらけということもあります。


さて港に到着すると、そこにはコンテナの山と今日の役目を終えて明日を待つトレーラーの群れがあります。
海がそこにあるにも関わらず、「自然」など一欠片も感じない鉄と排気ガスの世界。ここは物流の前線だと感じます。


あのコンテナの中には、体に良いとされる無添加の食品や天然素材なども入っているし、違法薬物や軍用航空機の部品も入ってる。等しく、この鉄だらけの風景に同化しているのだなあと。

皮肉ではなく、物流は様々なイデオロギーを持つ現代人の共通の前提なんだと思います。誰かが発注すれば誰かが運ぶ。そしてその現場は、「高い意識」が薄れていくほど現代そのものの風景です。


使用ギターはギブソンJ-50(1958)です。
透明感のある単音、存在感のある太い低域。この曲の散文的な展開によく合っていると思います。

そしてこのギターは、ナチュラルなコンプレッションを持っています。

コンプレッションとは「潰れる」という意味で、要するにダイナミクスの幅が狭く、音が発せられてから伸びていかないという事です。これは決して悪い事ではなく、要は使い方です。

いざ録ってみると、驚くほど前に出てこないのがわかります笑 大屋ギターがものすごく前に「来る」のと対象的。
逆にいうと、録ってからの細かい処理が必要無いほど自然に音像がまとまります。
このテイクはほとんどマイクとの相性だけで良い結果になった例です。

ガツンと低音を弾いても減衰が早いので、他の声部とぶつかる前にいなくなる。
ストロークでは押しが強い音に聴こえますが、実音はそこまで主張しないことに気づくと思います。
ぜひ聴いてみてください。

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