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若き日の自由

中学時代の音楽の期末テストに、自由テストというのがあった。音楽ならば、なにをやってもいい、というテストだった。

あれほど創造力をかきたてられたテストは、中学時代には他になかったように思う。自分の好きな曲を楽器で演奏するもよし、歌を唄うもよし。
1年間の音楽の集大成として秀逸なテストだった。そしてそれをクラスメイトみんなで、鑑賞し、笑ったり、感動したりした。

「この木なんの木、気になる木ー。名前も知らない木ですから。名前も知らない木になるでしょうー」

あの有名な日立のCM曲を、ハモりで歌ったグループは傑作だった。音程外しまくりで、まるで芸人のコントのようで、かなりウケていた。音楽が苦手な生徒にとっても、人前で表現する楽しさを体感できたと思うし、今思い返してもいいテストだったと思う。

僕達は楽器をやっていた友人とバンドを結成し、ドラムセットやら、アンプやら、マイクやらを持ち込んで、セックス・ピストルズのコピーを演った。青春真っ盛り。反抗期真っ盛りだったのだ。
楽曲が楽曲なので、ボリュームはもちろん大きめ。もう校舎中どころか、近隣の家ならしっかり聞くことができたんじゃなかろうか、というレベルの音量だった。

先生はそれを少しも咎めなかった。今思えば、これはすごいことだ。きっと他の先生から滅茶苦茶怒られたのではないかと思う。先生は当時まだ結婚して間もない、若い女性だったのだが、よくあんなことをやらしてくれたと思う。

その自由テストのあった日の放課後、このまま帰るのもつまらないと、僕達は教室で放課後ライブと評して、日が暮れるまで演奏した。もうやりたい放題。英語の先生が、教室に何度も、

「やめろ、うるさい!」

と怒鳴り込んで来たが、やめなかった。最後は教室の鍵をかけた。
先生の言うことなど聞くわけはなかったのだ。
その時もきっと、音楽の先生が職員室で怒られていたんじゃないかと思う。でも先生から後でその事に関して、何も言われなかったし、その後の授業も何一つスタンスなどは変わらなかった。先生が怒られていないはずはないと思う。

先生は妊娠していて、産休に入る、と聞いていたから、僕達は先生にその時の放課後ライブを録音したテープを、
「先生、プレゼント」
と言って渡したのだった。先生はありがとうと言って、笑っていた。

産休中にセックス・ピストルズの曲はないだろうけど、当時の僕達はものすごく真面目だったのだ。そして先生はそれをしっかりと受け止めてくれていたのだ。


I am an antichrist
I am an anarchist
Don't know what I want
But I know how to get it
I wanna destroy passer-by

俺は 反キリストだ
俺は アナーキスト(無政府主義者)だ
自分の欲しいものは 知らないけど
手に入れる方法は 知ってる
側にあるもの 片っ端からぶち壊したいんだ

(アナーキーインザUK /セックス・ピストルズ)

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