カリフリ農場より 5.大切な水
畑、家畜をやっていると水はたくさん使う。うちの水道水は半世紀ほど前に事業によって作られた農業用水を使っている。かつてトマムにも何10軒もの農家がいてこの農業用水を使っていた。水源地は農場迎えにある狩振岳から流れる、鵡川源流にある。現在この水源を使っているのは当農場だけである。標高700㍍付近の小渓流より水を取り、そこから配管を通りすこし離れたところにある、濾過槽に送られる。そこで濾過された水は貯水槽に貯められ、そこから200㍍近くの落差によって、農場まで送られる。
水道料金はかからない。でも、当然管理してくれる人は誰もいないので、自分たちで水源地の維持管理しなければならないのだ。年に3回ほど水源と濾過槽の掃除をしている。沢から水を吸い取る部分に枯葉や砂などが徐々に詰まって水が止まってしまうからだ。
台風や大雨、春の雪解け水で川が増水したときは、濁った川の水をそのまま吸ってしまうので、水道水も薄茶色の水がでる。ひどい時は水がとまってしまうこともある。吸水口に泥などが詰まってしまうからだ。
朝、家畜達の世話で水道は必ず使うが、川が増水した後は朝から水が出ない何てこどがしばしある。水が出ないことは農場にとって緊急事態である。生活用水はもちろん、家畜の飲水や畑の冠水で、毎日何百㍑という水を使っている。1日でも水が出ないと大変なことになる。だから、すぐに水源地に直行する。農場から水源地までは2㌔ほどあり、途中車も入れない悪路である。よって、いつもトラクターで、現地まで向かう。そして、吸水口に詰まっている泥や枯葉などを除去して掃除する。大抵はこれで解決する。しかし、今年は特に問題は発生していない。春に1回水源掃除に行って以来夏の間は行かずに済んだからだ。とても順調な年であった。あとは冬前に1~2回掃除に行けば大丈夫だと思う。ひどい時だと、真冬に水が止まったことがある。スノーシューを履いて1㌔くらい、雪に埋まった林道を歩いて水源地へ向う。そして、氷点下マイナス10℃のなか、凍えながら川に入って掃除するのだ。だから、冬に断水すると心が折れそうになる。
増水以外にも、水源地から農場に来るまでの途中水道管の漏水が原因の場合もある。これはかなり厄介である。地面に埋まっている水道管がとこで漏水しているか、見つけるのが大変だからだ。最近はだいたい検討のつくところで漏水することが多いが、そうでない時は気が遠くなる。水道管が何処を通ってるかは大まかには分かっているが、半世紀も前に作られたものなので、配管の図面も残ってなければ、建設当時を知る年寄りももういない。水道管もかなり古いので、今後何処で詰まったり破裂してもおかしくない。老朽化による不安は今後の問題である。
しかし、人の立ち入らない、川の最上流から引いているからは何にも汚染されることなく、キンキンに冷たく美味しい水である。この水でなれているので、他で水道水をのむのは抵抗があるくらいだ。とにかく大切な水である。これから先もずっと使い続けられるように維持管理をしっかりしていきたいど思う。
もちろん塩素消毒はしていないので、数年おきにエキノコックス検査はしている。
(えとう・かずま=1999年生まれ。豚・鶏・羊・山羊・牛・馬と無農薬無化学肥料で多品種の野菜づくりや自伐型林業を家族で営む。北海道占冠村字上トマムtel&fax:0167-57-3315 http://karifurifarm.blog.fc2.com/)
『市民活動のひろば』194号(2021.10.1)
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