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カリフリ農場より 1.ガンバ 山仕事のパートナー

 私は江頭一馬(21歳)。高校(帯広農業高校林科)卒業後、実家であるカリフリ農場に就農した。そして今、3年目の春をむかえているところだ。

 当農場のある、ここトマム(北海道占冠村)は標高が約600㍍、冬は日本一の極寒地域で雪だって1㍍は積もる。そして夏は涼しい。
 そんなトマムのどんな農場なのか? 簡単に言うと、2㌶の畑で、色んな作物を無農薬無化学肥料で栽培している。ヤギ、羊、牛、豚、鶏、ウサギなどの家畜がいて犬と猫、馬がいて、農場隣に15㌶の森林が隣接する。その他、放牧地や採草地を含め総面積が35㌶ほどある。簡単すぎる説明だが、これがカリフリ農場だ。のちに、それぞれ紹介していきたいと思う。今回は昨年新たに増えた動物、馬がいる意味について。

馬のガンバ

 3月、当農場に春が来る。野菜の種まきに始まり、ビニールハウスの除雪にビニールはり、籾殻くん炭(籾殻を炭化させたもの)作り。去年からイタヤカエデの樹液を取ってメープルシロップも作っている。それともう一つ大事な作業が山仕事である。1年分の薪と、きのこ栽培の原木を森から切り出すのだ。家の暖をとる薪ストーブ、給湯は薪ボイラー、その他にも野菜屑や残飯などを加熱処理し乾燥させる飼肥料製造機があり、これらは薪が燃料である。きのこ栽培は、3年前から椎茸となめこを原木栽培で作っている。
 薪、原木の調達は、農場に隣接する森から切り出している。今時期は、積雪も下がり溶けた雪が締まり、坪足(長靴で雪中を歩く)でも埋まりにくいため森に入りやすいのだ。丸太の搬出も雪があった方がやりやすいし、玉切り(一定の長さで切って丸太に)する時も雪の上だと地面を切ることがないのでチェーンソーの刃もいためにくい。
 伐倒した木を山から出すのは大変な作業である。昨年までは、トラクターで引っ張り出していたが、森の中は道もないので入れるところは限られる。人力でもやったが、量は出せない。そこで登場するのが馬だ。森から丸太を搬出(馬搬)するために去年から飼い始めた。名前はガンバ、2歳馬。馬飼いの知人の指導のもと当歳(産まれた年)の時から調教してきた。もう乗馬はできる。

搬出作業

 4月に入って積雪が30㎝くらいになったらガンバもようやく森に入れるようになった。そして森から木の搬出を始めたのだ。最初は上手く搬出してくれるかかなり不安だった。それに初めてなのに足場も悪く、木も入り組んでいて悪条件な現場であった。しかし、ガンバは難なく丸太を引いてくれたのだ。半日で小口が20㎝で長さ6~7mの丸太を20本ほど搬出してくれた。まだ、搬出量は少ないが最初にしては上出来だったと思う。

 馬搬は重機搬出と違って林床を痛めず、余計な木も切らずにすみ幼木も守られる。それに森の中で重機のように騒音が出ないのもいいことだ。林内に響き渡る馬の息づかいと、丸太が地面を擦る音、シャランシャランと馬具の金具が当たる音は鈴みたいだ。馬との作業は、楽しさもあり、難しさもたくさんある。馬は生き物なので機械のようにはいかない。その時の体調や気分、やる気次第で仕事の調子はかわる。だから、日々の世話や接する時のコミュニケーションは大切にしていきたい。ガンバはまだ若い、働く馬は歳を取り経験を積めばどんどんよくなっていく。
 先はまだ長い。ガンバと、良い山仕事のパートナーになれるよう頑張っていきたい。

(江頭一馬 えとう・かずま=1999年生まれ。北海道勇払郡占冠村字上トマム カリフリ農場 tel&fax:0167-57-3315 http://karifurifarm.blog.fc2.com/

『市民活動のひろば』190号(2021.5.1)
『市民活動のひろば』ホームページ http://a-simin.com


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