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オンライン父さんの憂鬱

 苦しい、息ができない。
「おやじの・・・おやじの太ももが・・・」
休日の朝、出かける予定も相手もいない男は、最悪な気分で目が覚めた・・・

「エナマエ様どうしたの?」
頭までかぶった布団の上から声が聞こえてきた。
「お前なのかニーナ?息ができない。
何の真似だ?朝っぱらから人のお腹の上に乗っかって?」

聴こえているのかいないのか?
「エナマエ様、エナマエ様。もう睡眠時間8時間経過したよ~
起きてくださーい、休みの日くらい一緒に遊びましょうよ。」
気を使っているのか膝枕ニーナは、男のお腹の上から、男に向かってささやいてきた。
「良いから、とりあえず降りてもらっていいかな?」

膝枕ニーナとは、女性の下半身をかたどった、自称。膝枕型健康管理端末
一世を風靡した膝枕シリーズのうちの一つ、対話型膝枕である。

「おい、おい何だよ、休日くらいゆっくり寝かしてくれよ」
「ねえ、ねえ、エナマエ様。ユウウツって書けますか?」
「なんだよいきなり。」
「だからさ、ユウウツって書けます?あのね、あのね、ニーナが教えてあげようか?」
「だから何なの?いいから、腹の上から降りてくれ。」
少し強めの口調にニーナーはおずおずと、布団の上から降りて自分の座布団の上に戻った、なんだか少し寂しそうだ。

呼吸を荒げ、寝ぐせのついた頭をかきながら、起きてきた。
瞬間湯沸かし器でお湯を沸かし、スティックのインスタントコーヒを入れる。もちろんブラック。
可愛らしいネコのイラストの入った白いマグカップを手に、
テーブルの前に座ると、点けっぱなしのTVからは情報番組が流れていた。
若いアイドルタレントが、爽やかな笑顔で街頭インタビューをしている。
「これか?」

「エナマエ様、起きた?」
コーヒーを飲みながら、TVを観始めた男にニーナがにじり寄ってきた。
「はいはい、起きました、なんだよ朝っぱらから?」
「エナマエ様、ユウウツって漢字かける?」
「ユウウツって・・・優しいに・・・優しいに・・・・あれ?」
「3・2・1 ハイ残念、時間切れ・・・ブブー!」
「しつこいな」
「残念、優しいじゃないよ、憂う(うれう)だよ。ウツはね・・・
憂鬱なリンカーン(林・缶)は(ワ)、アメリカン(米)コーヒーを三杯飲んだって書くんだよ、すごい?ニーナ凄い?褒めて、褒めて」
ニーナは嬉しそうに軽く弾んで見せた。

「いやいや、よくわからん」
「だから、こうなんだって」
いきなり部屋の隅にあったプリンターが動き出した。
プリンターからはA4の用紙一面に、大きく憂鬱の文字が打ち出された。
「すごいなニーナさん、プリンターまで使いこなすとは。」

「じゃーね、じゃーねリンゴ。林檎の漢字は、やねのしたでなべぶたあけるめことむこ」
凄いな、調子に乗って来たね。」
「薔薇って書ける?薔薇はね“佐渡(サ土)の人々口々に、サー微笑みに中一本”って書くんだよ。」
次から次にプリンターからは、難漢字が出てくる。
男は、床に散らばるプリンター用紙を拾い集める。
「ニーナ、わかった、わかった。ニーナさんは賢いです。」
「そうです、ニーナは賢いのです」
「なんでこんなこと始めたの?」

「エナマエ様が、起きてこないんでテレビ見てたら憂鬱の描き方やってたの」
「はいはい、もういいから」
「次はね、次はね。びゃんって漢字かける?」

プリンターからA4紙いっぱいに、初めて見る漢字が打ち出された・・・。
「そんな字どこで使うんじゃ」



お疲れ様です、新しいネタが思いつかない・・・
しばらく、止まっているネタもありますが、一つのネタとして。

なかなか朗読で表現するには厳しい、話となってしましました。
失礼いたしました。






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