誠実、実直、愚直

 『嘘つき』
 この言葉はだいたい悪いイメージが付く。真実を隠して偽りを告げる『嘘』という行為そのものに悪印象が多いからだ。エイプリルフールなどという『嘘をついても良い日』なんてものが存在するのが普段の嘘を悪印象たらしめる証左となるだろう。悪印象の無いものであれば特例で許される、なんてことがそもそもないのだから。

 しかし一方で、『優しい嘘』なんて印象の良いものもある。真実を告げないことで傷付けたりしないように配慮することだが……やっていることは結局『嘘』。誠実か、と問われると些か疑問に思ってしまう。それが仮に善意だとしても。

 『嘘』というものは普段の生活に散りばめられている。善意だろうが悪意だろうが。


 なぜ、ここまで嘘の話ばかりするのか。本題に大きく関わるからだ。

 タイトルにある『誠実』『実直』『愚直』これらの違いは何だろうか。○○な人、と繋がるこの言葉達の印象としてはどうだろう。誠実=実直とか思っている人も多いのでは無かろうか。誠実な人は嘘をつかない、とかも思われてそうだ。
 愚直な人はただただ真っ直ぐで衝突を恐れず正しい道を進んでいると思っているのではなかろうか。

 これは持論だが、『誠実』は上手く嘘をつく人、『実直』は上手いこと嘘をつこうとして嘘をつけない人、『愚直』は嘘を一切つけない人もしくは嘘をつく気がない人だと思ってる。
 何故か。ここでまず考えてもらいたいのが、『コミュニケーションが上手く誰からも愛される真面目な人』、『天然で多少のポカをやらかすが真面目な人』、『嘘をつかないことに定評のある真面目な人』の3種類の人だ。
 ……思い浮かべただろうか。さて、この中で誠実な人と称されるのは誰だろう。ここで俺が3人目を選んでしまうと思われてるようならおそらくここまで超流し読みだったのだろう。
 個人的には1人目が『誠実』だ。誰からも愛されるにはそれなりの嘘が必要だ。そしてそれを嘘と悟られない力も要る。嘘なんか吐かずともみんなに愛される自分は作ることができる!というのであれば是非とも検証して見せてほしい。

 コミュニケーションの中では必ず返答しないといけないが、自分の考えをそのままぶつけて相手が嫌がるかどうかを考えなきゃいけない場合がある。これを上手いこと捻じ曲げてやんわり本当の自分の気持ちを伝えるのか、傷ついても構わず本音をストレートにぶつけるのか、自分の考えとは関係無く相手に適当に合わせるのか等々……選択肢が諸々存在する。
 その中で誠実な人間は3番目を選ぶ。つまりは嘘を吐くのだ。相手に迎合した方が相手は喜ぶし、自分とは違う考えであると切り離して考えられるから。
 不器用な人間や、『人情』なんてものを盲信している人はただただ無駄にストレートにぶつけたりする。それが相手を傷付ける行為だとしてもそう気づくことはできない。それでわかりあえると盲信しているから。
 傷付けるのは果たして誠実だろうか?自分はそうとは思わない。

 嘘を毛嫌いすることなく、上手く使いこなして、誠実な人間でありたいと切に願う。

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