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9.ピアノがならない


エレクトーンを 習っていた私は
ピアノも弾きたいと 先生に申し出た。


先生は
「またそういうこという!」と言ったけれど
ダメとは 言わなかった。

エレクトーンの子は
ピアノが弾きたくなって
ピアノの子は
エレクトーンが 弾きたくなるのだ。

おしゃべりの後
エレクトーンで1曲
ピアノで ハノンともう1曲になった。

ピアノで 弾きたい曲を
1曲もっていった。

エレクトーンでも 弾いたことがあって
気に入っている曲だ。


最初に 言われたのは
「音が汚い!」
だった。

先生は 私が弾くたびに
やめて やめて という素振りをしたから
ほんとうに
聞くに 耐えなかったのだろう。

でも
私は 必死だったのだ。

ピアノの鍵盤は
エレクトーンよりも はるかに重い。
力の限り 叩かねば。

それなのに
こんなにも 一生懸命弾いているのに
弾くたびに先生は
いやだいやだ という顔をする。

とうとう 私は言い返した。
「だって ピアノがならないんだもん!」

先生との不毛な争いに 終止符を打つべく
ハノンを たくさん弾いた。

電子ピアノの
TOUCH RESPONSEを
3にして がしがし練習した。

ハノンは 好きだったから
苦ではなかった。

そのうち
そっと 弾けるようになった。
こんなんでいいのかな?
と思うくらい そっと

先生も いつしか
イヤな顔は しなくなっていた。

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