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臨死体験の話1 (白龍天)

いろんなところで話しているのと、白龍にまつわる話も関わってくるのでどこかで聞いたことがあるような話かもしれません。よくある話かなと思います。

生まれる予定を10日過ぎて、学年も変わって仕舞った春の日、破水、回旋異常というやつで緊急に手術となった。赤ちゃんが産まれ、臍の緒を切って、すぐに手術室の中の人が赤ちゃんを連れて私の顔のところまで来てくれた。私はその赤ちゃんにキスをして、また後でね、と言った・・・言ったのか、思ったのか。

ふと視界がコポコポと、まるでねかされている手術台の下から水の中に入っていくような。というか、手術室がゆっくり水の中に沈んでいくというか。手術室の中が、床の方から水で埋まってゆくというか・・・そんな感じで、視界が水の中のようにゆらゆら揺れて、それは涙ぐんだ時のような視界でもあったけど涙とは違った。気がつくと、私は手術台に寝ている私の左側の、地面から多分少し上に立って、寝かされている自分を見下ろしていた。のと同時に、(これはどうやったら読んでいるあなたに伝えられるだろう)寝かされている自分も、少しだけ背が高くなった(位置にいる)自分を見上げていて、その両方が同時に“私”として存在しているというか、とにかくそういう状況だった。

(あっ・・・死ぬ!今死ぬんだ。)(いやだ!死にたくない!!)そう思った。

すると段々と意識は、立っている自分の方に移って行き、立っている自分だけが自我になった。と同時くらいに、寝かされている自分の左の足元の方に渦巻きが見え、そこは手術に入る前に通ってきた何もない前室(アルミホイルのような銀色の壁で正四面体のような部屋だった)のある方向で、本来なら扉があるはずのところだったが、そこにあったのは銀色の丸い(竜巻の中心のよう)トンネル?で、穴の向こうから強い風が吹いてくる。大きさは、最初は遠近感がよくわからなかったが2メートルくらいの直径になったかと思ったら、ぐわーーっと広がってゆき、2車線の道路くらいの幅になったかと思うとその倍くらいになった。それから、どんどん広がっていった。(なんと言ったらいいかわからない)

つい数秒前に死にたくないと強く思ったのに、(もういいや)って気持ちになっていた。とにかく心地よいのだ。白くて金色銀色で明るく、強く心地よい向かい風で、優しい・・・

私は自然と台風の中心のようなそちらに歩いて行った。と言っても、形が似ているだけで暴風だとか強(こわ)い感じや、そのほか嫌なイメージは全くない。感覚的には斜め上に向かう感じで、歩いているのか滑って行っているのか飛んでいるのかわからないがとにかくゆっくり吸われるようにそちらに向かっていった。手術室はもうどこにもない。向かい風で、遠くそのトンネルの向こうに宇宙空間が見えた。トンネルは、白くて白銀で明るく光っていて、ラメのようなキラキラした煌めきもあった。銀というか白というか不思議な色で、

中心から私は向かい風に吹かれていたのだが、そのトンネルの両端は逆方向に風が吹いているようで私の右と左には、私の背側に頭、トンネルの向こうの宇宙空間に向かって尾を向けたような、切れ目のない吹き流しのような白いキラキラした筒状のものがはためいていた。それはばたばたと音を立てて、幼い頃父が庭にあげた鯉のぼりが風にはためく音によく似ていた。

そのふたつの白く長い筒状で帯状のものを見て、私は

「ああ、あの時の龍が赤ちゃんを見にきたんだ」と思った。

死ぬんだなと思った。

でも、とても気持ちが良くて、こんなに気持ちがいいならあちらに行きたいと思った。

この時私は意識を失っていて、予定の倍以上の出血で、私の家族は輸血の同意書にサインをしている最中だったらしい。ボヤンと気づいたらベッドごとガラガラと運ばれており、名前を呼ばれ肩を叩かれて、「聞こえますか??」「聞こえますか!」と誰か女性の強めの声、また、遠のき、そのあと気が付いたのは翌日だった。

あの気持ちの良いところから引き戻されて私は地獄だった。痛い苦しいが一ヶ月続いた。もう二度と子供は産みたくない。またすぐ産みたくなるとか、出産の痛みは忘れるとかいうけど私は5年たった今でももう2度と嫌だ(実際もう産めないけど)産めたって産みたくない。怖かった。戻ってとても痛かったし苦しく怖かった。


そういえば、今はもう連絡も取っていない知人(昔は友人だった)は臨月の時まだ34歳だった夫を交通事故で亡くしていた。その子が出産した時、やはり臨死体験をしたよと言っていた。

通常分娩だったのか、帝王切開だったのかわからないが、彼女は2日苦しい思いをしてようやく産まれたと言っていた。

楽しみにしていた子供の顔を見ることなく旅立って仕舞った夫。ずっと、夫のところへ行きたい、子供を産んだら夫のところへ行こうと思わない日はなかったと言っていたが、

ふと真っ暗な空間の中にいて、観覧車に一人で乗っていたそうだ。観覧車は暗闇の中をゆっくり回って、ふと外の景色があるところについて、観覧車の扉の向こうに青空と花畑が見えた。でも、そこに夫はいなく、誰もいなかったという。それで彼女は、「もう夫はいないのだ。」と、思ったそうだ。

「それでね、目が覚めて、もう、全部夢だったんじゃないかって思って。あの人と結婚してた2年も、結婚する前に何年も片想いしてたことも・・・でも、赤ちゃんいるし・・・やっぱりあのひと死んじゃったんだなって。けど、生きるよ。この子のために私生きる。」そう言ってた。

もう10年以上前のこと。



私の右と左に白くキラキラとはためく二尾の帯状のものを見て、「あの時の龍が・・・」と思ったのには数ヶ月前に経験していた一つの神秘体験談があったからだ。

それは、お腹の赤ちゃんがまだ四ヶ月か五ヶ月くらいだったころ。その話は、また今度・・・。


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