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忘れられない人はいますか 1

1990年代。
高校生だった私。

その日は真っ青な青空に包まれていた。
初夏の香りが漂っていた。

「ほら、早くしないと遅刻するよ!」と、母の声。
「わかってるって!」
父はもうすでに仕事に行っていた。
とにかく家のことをそつなくこなす母、特に食に関しては、おやつも手作り、朝ごはんもお弁当もお夕飯も手を抜くことなく作ってくれる。
私は大学で一人暮らしをするまでカップラーメン一つ食べたことがなった。

「朝ごはんはきちんと食べなさい!」母の声をよそに
「時間ないし、朝からそんなに食べられない!」と絶賛ダイエット中でもあった私はお味噌汁だけを飲んで母の作ってくれたお弁当をカバンに入れ、家を飛び出した。

「高校生女子はガツガツ大きなお弁当箱に入れたお弁当を食べるなんて恥ずかしくて持っていけない!」と喚き、この春から小さな小さなお弁当箱に変えてもらっていた。
小さな小さなお弁当箱でも手抜きなどなく、多くの食材の詰まったお弁当。
母の手作りのミートボールは大好物だった。

高校2年生、ゴールデンウィーク明けのいつもと変わらない朝の日常だった。

気持ちのいい朝。
憧れだった高校に通っている。
制服も大好き。
この日も自転車を漕ぎながら、鼻歌が自然にでていた。

学校の駐輪場に到着し、友達と「おはようー!」「おはようー!」と挨拶を交わす。
「英語の予習やった?」「いや・・・やってない」「やばいじゃん!」
そんな会話を友達としながら、教室に向かう。
「そう言えば、今日って席替えじゃない?」

席替えをした。

隣の席になった彼。

私の青春は彼で染まってゆくこととなる。

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