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”評価”とは一体なんなのか(後編その10)

プロ雑用です!
前回は「ハーズバーグの二要因論」を使って、報酬がどんな影響力を持っているのかについて解説しました。今回は、もう一つの理論を取り上げ、さらに二つの理論を比較することで、給与の影響について理解を深めます。


マズローの五段階欲求

アメリカの心理学者アブラハム・マズローが1954年に発表した、人の欲求を五階層に分けたもの。最新の説では、自己実現の上にさらにもう一段階加える場合もありますが、今回の解説にはあまり関係がないので割愛します。

マズローは欲求を五階層に分けました。それを示したのが下図です。

階層は下から順に満たされることでなりたつ。上層があったとしても、下層が満たされなければ安定しない。下位になればなるほど、本能的な欲求に近くなる。

欲求の分類

欲求の階層の横に示した3つのバーは、それぞれの階層がどんな性質を持った欲求なのかを示します。例えば、安全欲求は物質的・外的・欠乏の性質を持つということです。

  • 精神的↔物質的
    これは精神的な充足感が重要なのか、それとも物質的な充足が重要なのかを示しています。精神的な充足とは目に見えない自分の心の内、物資的な充足というのは財産や環境などの目に見えて手にできるものです。

  • 内的⇔外的
    これはその欲求が自分の内面からのものか、外から与えてもらうかの違いです。外から与えてもらうということは、自分でコントロールできない要因が多分に含まれているということを示します。

  • 成長⇔欠乏
    自己実現欲求以外が含まれているのが欠乏欲求ですが、これはその名の通り「自分に欠けているものが満たされたと感じる」かどうかを示します。他人からではなく、自分が欠けていると感じているかどうかが重要です。欠乏感を抱えているうちは、成長感を得ることができない、ということを示しています。

給与はどの階層に属するか

性質で考えてみましょう。

まず、給与は物質的です。いくらありがとうで心が満たされたとしても、物質的に得るものが無ければなりません。次に、給与は自分の財布からは出ません。必ず外から得られます。

そして、パーキンソンの法則に説明されるとおり、人は時間やお金に余裕があっても、それらをすべて使い果たすように行動を拡大させてしまう。つまり支出の額は収入の額に達するまで膨張し、常に使えるだけ使ってしまうという癖が人間にはあります。給与は常に足りません。これは欠乏の欲求に含まれます。

物質的、外的、欠乏の性質を持つということは、下層の安全欲求か、生理的欲求かのどちらかです。生理的欲求は「食事や睡眠、排せつといった人間が生きていくための本能的な欲求」であり、安全欲求は「心身共に健康、かつ経済的にも安定した環境で、安心して暮らしたい」です。つまり、この二つは端的に示せば衣食住に関する欲求。衣食住を充足させるためには財産が必要です。よって、給与は安全欲求と生理的欲求、二つの階層どちらにも影響があるものと考えられます。

ハーズバーグとマズローの対応関係から考える評価と報酬の不幸な関係性

ハーズバーグの二要因論とマズローの欲求階層を比較した図。なお、ハーズバーグの図は前回のnoteに掲載した図から、要素の順序を変更している。

上図は、前回と今回で解説した二つの理論図を比較したものです。線でつなげている部分が、関係性が強いと考えられる要素と階層です。

さて、前回と今回のnote、そしてこれまでのシリーズを読んでいただいた方の中で、勘の良い方はすでにおわかりでしょう。この図に示したものが、ある意味でこのシリーズの答えです。

評価と報酬は真逆の性質を持っていた

評価制度について、
「従業員の成長」「目標達成」「昇級昇進の目安」「従業員への期待」
というようなお題目を掲げている企業は多いですよね。

上の図、もう一度よく見てください。
例に挙げたお題目は、マズローの欲求階層の高位層に位置していますね。

一方、評価制度とセットで運用される報酬制度・給与はどこにあるか、といえば欲求の低位階層にあります。

こうしてみると評価制度のお題目と、給与には関連性がないことが一目でわかる

高位の欲求階層は、精神的・内的・成長or欠乏の性質であり、低位二層は、物質的・外的・欠乏の性質です。つまり、真逆の性質を有します。真逆ということは「直接的な関連性が無い」ということです。

評価制度で精神的・内的・成長の欲求を満たそうとしながら、報酬制度で安全と生理的欲求を脅かす状態を生み出しているのです。二律背反状態を作り出してしまっている。まさに歪んでいるのです。

そして、もう一つ、この関連性のない評価と報酬の組み合わせが、重大なエラーを生み出しているのですが、それについてはまた次回!

それじゃ、また👋


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