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”評価”とは一体なんなのか(後編その9)

プロ雑用です!
このシリーズいつ終わるのかな、って思ってる人もいそうですが、僕もそう思ってます!(ぉ
元々まとめてた記事がそもそも2万字ぐらいだったので、最低10回の予定でしたけども、小分けにしたらなんか余計に文字が多くなってきたのでたぶん、あと10回は続きます。知らんけど!いや、あと5回ぐらいだと思う…

ということで、前回は、ジョブディスクリプションなくバイアスまみれとなった評価制度が報酬を左右している、ということを解説をしました。

今回は、報酬がそもそも労働者にとってどういうものなのか、それが評価が結びつくことによって不幸が生み出される理由について解説していきます。


ハーズバーグが語る報酬の影響力

ハーズバーグの二要因論

ハーズバーグの二要因論というのは、フレデリック・ハーズバーグによって提唱されたモチベーション(職務満足および職務不満足)に関する理論です。以下のような図式で表されます。

ハーズバーグの理論は、各国の文化によって多少の変化があることがわかっており、上記は日本での研究結果を踏まえて図化されている。日本の場合、達成感と対人関係の要素の割合が大きく異なっているのが特徴とされる。

図の左側は衛生要因、右側は動機付け要因と呼ばれており、それぞれ以下のように説明されます。

  • 衛生要因
    不満を感じるとモチベーションが下がる要素。一部の要素を除いて、これらの要素を満たしてもモチベーションはあまり上がらない。上がっても持続しないという要素。主に、外的な自分ではコントロールできないものが並んでいる。

  • 動機付け要因
    満たされるとモチベーションが上がる要素。ほとんどが内的要因に当たる要素が並ぶ。一部の要素を除いて、これが不満になってもモチベーションへの影響が少ないとされる。

報酬は、ほかの要素とどのような関係があるか

この中で報酬はどこに含まれるか、といえば、昇給・給与の項目が主でしょう。(※報酬の種類は給与ばかりではなく、仕事そのものや昇進や達成感を含む場合がありますが、本シリーズでは報酬は金銭的な要素として話を進めています)

図を見ればわかりますが、報酬=給与の要素の大部分は、衛生要因に属しています。つまり「給与は増えてもモチベーションアップへの影響は少ないが、減るとモチベーションは著しく減退する」という性質を原則として持っています。

また、図に含まれる要素は、単一で作用するだけではなく、お互いが影響を与え合います。日本企業について要素を分析した研究から、給与に影響のある項目を抜き出して、その関係を示したの下図です。

右を過去、左を現在とおいたとき、悪化するする場合(満足が不満につながる)、回復する場合(不満が満足になる)、維持される場合×2(満足→不満、不満→満足)の計4パターンで分析。

これによると、まず、過去の給与に満足していても、時がたち他者からの承認・期待が不満に転ずる、過去に仕事そのものに満足していいても、時がたてば給与の不満に転ずるということがわかります。
次に、過去に給与が不満だった場合、いかなる要因も満足につながらないということがわかります。
この二つは前述した「給与は増えてもモチベーションアップへの影響は少ないが、減るとモチベーションは著しく減退する」を端的に示しています。

そして注目すべきは、変化では無く、保持のほうで、対人関係と給与に密接な関係があることがわかります。

対人関係と報酬が密接に関係している、その意味

では、対人関係は、どのように変化するかを調査から抜粋すると、下図に示す二つのパターンがありました。

対人関係の変化は悪化のみで、図に示したとおり、達成感、他者からの承認・期待、仕事そのもの、昇進に対する不満につながっています。
また、保持は過去の満足から現在の満足のみで、不満同士の保持はありませんでした。その要素は、給与と労働環境・労働条件に関係しています。

重要なのは、悪化させる要素が多いということ。これはまとめると「給与はモチベーションアップにはつながらない。しかし、給与は対人関係によって悪化し、対人関係の悪化は、ほかの多くの要素の不満のトリガーとなる」ということがいえます。

報酬はもらえる額ではなく比較で見ている

おかしな話ではないか。給料の多さと幸福感のあいだに、私達が思っているほど強い関連がない(というより、むしろ関連は弱い)ことは、これまで繰り返し立証されている。(中略)それなのに、わたしたちは、より高い給料を求めてやまない。そのほとんどはたんなる嫉妬のせいだ。

予想どおりに不合理 より

行動経済学で上記のように指摘されていること、加えて前述の対人関係との関係性を考えれば、自ずと給与の影響が見えてきます。

つまり、給与は「もらった額」ではなく、他者との「相対比較」によって満足度が左右される、という性質を持っているのです。同僚、同級生、家族などいろいろ関係の性質はいろいろありますが、要するにそこには「好き嫌い」が強く影響をしていることがわかります。

嫌いなやつが自分より多くの給与を得ていることは、認めたくない事実なののです。逆もまた真で、日本人が他者の前で表彰されたりすることを過度に遠慮するのも、無用な嫉妬を買いたくない、関係性に影響を与えたくない、という心理が影響しているのは間違いありません。

だから、SNSで話題になる給与額の話は、物事の一側面でしか語れていない話なのです。繰り返しますが、自分がいくらもらっているか、ではなく、他者がいくらもらったか、特に自分が所属している組織やクラスタで、誰と比較して自分がいくら得られているか、それこそが最も重要なことなのです。

今回はここまで。
次回はもう一つの重要な理論を取り上げて解説していきます。

それじゃ、また👋

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