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理学療法士になるための関門

はじめに

本日、2022年2月20日は本年度の理学療法士国家試験でした。
理学療法士を目指す皆さん、試験の出来はいかがでしたでしょうか?
今回は、理学療法士になるための関門、国家試験臨床実習について思うことを書いてみます。

関門①国家試験について

読んで字のごとく、日本国(厚生労働省)が「あなたは理学療法士として認めるに値する知識を持ってますか?」って事を試験するわけですね。

ここで試験について知らない方に私の記憶の範囲で軽く解説です。
マークシート方式で、午前100問午後100問。厚生労働省が決めた範囲(解剖学、生理学、運動学、理学療法評価学など)を5者択1or択2の問題となります。たしか6~7割を正解出来たら合格だった気がします。1回/年のため、不合格なら1年丸々浪人生活となります。大学入試の共通テストと違って昨年、今年ともコロナによる欠席でも追試は実施されません。詳しくはグーグル先生にご確認ください。

そして試験範囲が年々拡大していってるようです。なにしろ医学の進歩に合わせて臨床で求められる範囲が日々拡大しているので致し方ないですよね。学校で習う範囲も当然増量しています。
養成校には3年制専門学校と4年制専門学校&大学があるのですが、この増量した知識量を3年制ではさばき切れなくなってきている現状があります。理学療法士協会も4年制をなんとなく推奨しているような印象が…。
要するに3年制専門学校では、国家試験合格のために短時間に大量の知識を詰め込む必要があるわけですね。

ところが理学療法士養成校に入学してくる学生の学業成績は年々下降傾向を示しています。特に3年制専門学校希望者。というのも少子高齢化だからです。だって大学全入時代ですよ。とりあえず大学行けるんだったら法学部とか経済学部とか将来の選択肢が多そうな学部を目指すでしょ。早慶上智なら最高でしょ。モテるでしょ。理学療法学科にしたって専門学校より大学に行くっしょ、憧れのキャンパスライフっすよ。
その結果かどうかはわかりませんが国家試験合格率も大学に関してはほぼ変わらないのに対して、専門学校では下降傾向となっております。そりゃ、入学時の成績が悪い人が短期間で国家試験に必要な知識量を詰め込まれても、結果が出ないのは想像に難くないでしょ。そもそも高校卒業する時点で勉強する習慣がほぼゼロだから3年制の専門学校しか選択枝が無かったワケだから…。
ココは私の思いですが「理学療法士ってかなりアタマ使う職業だから、勉強できる人じゃないと…。」これ以上言わせないでください…。

関門②臨床実習について

ところで、識者の中では知識だけを問うこの国家試験のあり方が少々偏ってると言われているとかいないとか…。
というのも、良い理学療法士に必要な能力って、十分な知識はもちろんですが、高い治療技術の基礎となる身体能力だったり、対象者の信頼や安心感を生み出すコミュニケーション能力が必要になります。しかし理学療法士免許は知識があれば取れちゃうワケです。
その点、厚労省や理学療法士を日本に導入した方々は、臨床実習という形で理学療法を目指す若者の総合力を試す場を設定したのでした。これは他の医療系専門職も同様ですね。
なんだけど、この臨床実習って奴が曲者で、現在理学療法士として活躍しているセラピストたちも必要だとは思っているとは思いますが、「もう1回やる~」って言われて、「ハイ、よろこんで~」って即答できる人は少ないのではないでしょうか。かく言う私も実習については苦い思い出のために表情筋の一部が不随意的に収縮してしまいそうです…。

実習ってのは、学生にとって完全アウェーの病院なんかに1ヶ月~2ヶ月くらいお世話になって、そこにいる現役バリバリの理学療法士の下について(だいたいが1on1)、患者の診方から治療の仕方他職種との関わり方なんかを仕込まれるわけです。むりやり弟子入りさせられるみたいな感覚ですね。
で、これが(学生にとって)良い指導者にあたれば学びやすい環境の中、笑顔で実習終了できるのですが、(学生にとって)それほどでもない指導者の場合にストレスや寝不足によってダイエットに成功してゲッソリするか、もしくは極度のインドア派に転向して他人と会いたくなくなっちゃう羽目になったりします。
ごく簡単な疾患名を渡されて、評価内容を挙げて、患者さんの評価して症例レポート書かされたな…。評価の信頼性がないとか、考察が浅いとか、何が言いたいのかわからんとか、そんな感じで真っ赤になったレポートを返していただき、睡眠時間を削って修正レポートを仕上げ、また翌日の朝に指導者に提出っていうリズミカルま日常でした。
思い返せば、あの日々のおかげで新人セラピスト時代に曲がりなりにも一人前の理学療法士として対象者の治療ができる臨床思考回路が獲得されたんだから「苦しいものではあったけど、悪いものじゃなかったのではなかろうか…」大人になると思い出が美化されていくってホントですね。死んだらみんな良い人です。

理学療法士教育を考えるエライ人たちにとっては、この指導者によって学習効果に差が出たり、身体症状が出るのが好ましくなかったようです。また資格を持つ前の学生が患者の治療を直接やっちゃうのも法的にまずいんじゃないの?って指摘もあった点も見逃せませんね。
加えて、実習先の指導者さん達がメリットを感じられてないのも忘れちゃならない観点です。実習生へ良い指導をするモチベーションが各個人の志のみに頼っているように見えるのはいかがなものでしょう…。

で、この臨床実習については、現在の養成校2年生からルール改正がありまして、今後いろいろ変化が出てくることが予想されます。結果の方は数年後に出てくるでしょう。果報は寝て待ちましょう。
要するに、今までの臨床実習には問題点が多いみたいだから変えてみましょうって事なんだろうけど「仕組みとしてそんなに悪かったのかな」ってのが私の感想です。

おわりに

理学療法士になるには養成校に入って卒業して国家試験に合格すれば良いんだけど、そこには大きな2つの関門があるってことがおわかりいただけたでしょうか。
忘れちゃならないのは結構お金もかかります。教科書代(専門書は高額)から白衣代、遠方実習地だと宿代など。学費だって安くないし…。
自分の仕事を失う覚悟で書きますが、
「高校卒業してもすぐには働きたくないし、とりあえず何でもいいから進学しよう」って感じで理学療法士の専門学校を選ぶのは危険だと思いますよ。特に3年制
なにしろ入学早々、いままで経験したことがないほどの知識量を日々視覚と聴覚にぶち込まれます。だって国家試験に受かる、ひいては理学療法士として対象者の治療をするのに必要な知識量って膨大なんだもん。人間の命を相手する仕事の一端を担うんだから、その責任も大きいってことですよ。

まとめ

理学療法士ってとても良い仕事だと思いますよ。
ただし「良い医療を提供できる人になる」って甘くない、ってこと。

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