煙草とエイリアンズと百合(短歌なし)

・友人がくれた1mgの煙草が吸いやすかった。愛飲している水道水よりもさりげなく喉に流れていく。「キスするときに苦くないから、軽いのが好き」って言ってた。「軽すぎるから一度に3本吸っちゃう」と笑ってて、この女の子の美点はこう言うところだよなあと思った。
わたしも煙草のタールを落とそうと思って深夜のファミマで購ったら、8mgを渡されていた。いつものより重いけど、しばらく気が付かなかった。
さすがにこれは体に悪いようなんて思ってたら、なんとカプセル入りで(吸い口に香玉が入っていて、歯で潰すと煙にフレーバーがつくの)、ベリーの味がする。プチって潰す感覚も小気味よくほんのり爽やか、しばらくはこれで。

 
 
・キリンジの「エイリアンズ」って歌が好きです。わたしのお葬式ソング。
最後のサビの歌詞ね。

まるで僕らはエイリアンズ
禁断の実 ほおばっては
月の裏を夢みて
キミを愛してる エイリアン
この星の僻地の僕らに
魔法をかけてみせるさ
大好さエイリアン わかるかい

 
この歌には、孤独な2人ぼっちのイメージが一貫している。世界で僕ら2人きりだね、君の事も僕の事も分かり合えるのはお互いだけだよってリリカルに歌われている様な感じ。
題名が「エイリアンズ」と複数形だから、恋人たちの歌だと思ってたんだけど、最後は「大好きさエイリアン わかるかい」って問いかけの言葉で終わっていくの。この世の異物みたいな特別な2人で、頭の先からつま先までピッタリ分かり合える間柄なら「わかるかい」なんて聞く必要はない。この歌はエイリアンからエイリアンへの告白だった。「キミ」が片仮名なのも、訳が分からないものとしての表記だろう。

〈世界から除外された2人〉という塊ではなく(その筋もあるんだろうけど)、目の前の恋人1人がそもそも異質な存在だった。お互いを愛していても、「僕」も「キミ」もそれぞれ何かを理解しきれないひとつの人間だから、呼びかけなくちゃいけない。ずっと伝えて来た僕の気持ちが、ちゃんと分かるかい?分からなくてもいいよって笑いも聞こえてきそう。体は近寄れても、何もかもが月までの距離みたいに遠いね。
 
月の裏も、誰でも見れるような明るい場所じゃなくて、2人しか入れない遠い居場所を求めてるようだし、誰にも見せない心の領域に触れてみたいって夢を見てるみたい。
 
いくら関係を深めたってひとりだよね。一体になれるなんて嘘。卑屈にならないで、人間の形をした謎を愛しているよって両手で包み込んでくれる様なこの歌が心地良い。ひとりとひとりで一緒にいよう。
わたしは演奏に関する分野はさっぱりだけど、静かでたゆたう様なメロディに溶け出しそうな心地がします。ぜひ聴いてね。(記事の1番下にお葬式ソングリンクあります。そこから聴けます)
 

・百合の花が咲くまでを見たことがありますか?百合の蕾は下が一番大きくて、上に行くほど小さくなっていく。咲くのは下から順に。じきに花開く時が来たら、蕾が透き通るように白く柔らかくなります。光にかざすとガラス細工みたいに透けて綺麗なんだよ。
そのうちふわっと息を吐くように口を開けて、のびのびと花びらが広がっていくの。しかも内側はうっすら桃色で、誘拐するように甘い匂いを漂わせるから、ふと手を止めてずっと花を眺めたくなっちゃう。
枯れる時も綺麗で、花びらの端から少しずつ黒ずんでぽろぽろと壊れていきます。醜さも美しいまま百合は百合じゃなくなっていく。

輪菊を挿していた花瓶に、今日から百合も飾りました。お菊よ、まだ蕾のままの百合の面倒を見てあげてね。菊は、握った掌がゆっくり開くように咲きました。花は誰にも教わらなくても、それぞれに咲き方を心得ているんだね。

テレビの前に花瓶を置いているので試しにチャンネルを入れてみたら、画面に映る人が皆、今日はお祝いされているみたいだった。いいなあ。わたしも画面に映りたい。

 
 
嬉しいことが起こると次は悪いことが起こるんだ、そうやってバランスを取っていくんだと思っていたのだけど、最近は禍福の運命にメンチを切ってる。どんなに落ち込むことが起きても、幸せを感じた瞬間は奪えないと学んだからです。(悪い事よ、控えめに小出しに来いや)

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