ワールドトリガーにおける「ボーダー入隊編」の細分化
◯はじめに
ワールドトリガーにはいくつかのエピソード(◯◯編)に分かれていますが、ジャンプSQにはこのように記載されています。
これがいわゆる「公式」のエピソード分けだと思いますが、私の中では時系列を分かりやすくするために「ボーダー入隊編」と「近界民大規模侵攻編」をさらに細分化して整理しています。
今回は「ボーダー入隊編」の細分化を紹介しながら、各エピソードで何が描かれているかをまとめていきたいと思います。
■①〜⑤ ボーダー入隊編
●第1話〜第11話 イレギュラー門編
ワールドトリガーの物語はボーダー隊員の三雲修と近界民の空閑遊真の邂逅から始まりますが、
という台詞から遊真のセントラル・クエスチョンは「父親の知り合いに会う」になります。
しかし第3話で警戒区域の外であるはずの学校にモールモッドが出現したことで、遊真は三門市で起きている「イレギュラー門」の事件に巻き込まれることになり、しばらくはその対応に追われることになります。
第11話でイレギュラー門の事件は解決するので、ここまでを「イレギュラー門編」としています。
「イレギュラー門編」は後の「近界民大規模侵攻編」の前振りとなっている重要なエピソードと言えます。
●第12話〜第23話 玉狛支部入隊編
このエピソードの中で遊真の「父親の知り合いに会う」というセントラル・クエスチョンが達成不可能と判明し、解消されます。
また修のセントラル・クエスチョンであるところの「雨取千佳を守る」も、千佳がボーダーに入隊する意志を示したため、ボーダーの保護下に入ることで間接的に解消されてしまいます。
つまり主人公である遊真と修のセントラル・クエスチョンが解消されてしまうことになりますが、これは物語としてよくある手法であり、例えば『アナと雪の女王』でも
と物語の途中で最初に用意された表面的なセントラル・クエスチョンは解消されています。
ワールドトリガーの場合、表面的なセントラル・クエスチョンが解消された直後に物語の根本的なセントラル・クエスチョンである「遠征部隊選抜」が提示されます。
いよいよ物語が本格的に動き出す訳ですが、この時点ではまだ読者は「遠征部隊選抜」というセントラル・クエスチョンの重大性を真に理解しているとは言えません。
遠征部隊に選ばれるA級隊員や遠征先で戦う人型近界民の強さを正確に把握していないからです。
それを理解するために用意されているのが、次のエピソードである「黒トリガー争奪戦編」です。
●第24話〜第32話 黒トリガー争奪戦編
ここでセントラル・クエスチョンである「遠征部隊選抜」をすでに達成している遠征部隊のA級部隊(太刀川隊・冬島隊・風間隊)が登場します。
この遠征部隊が戦闘する描写を描くことでA級隊員の強さを読者に認識させるのが「黒トリガー争奪戦編」の意義であると言えます。
しかし「黒トリガー争奪戦編」ではそのA級隊員が黒トリガー「風刃」を有する迅に敗北します。
これは次の「近界民大規模侵攻編」で敵側に黒トリガー使いが登場するので、その前に黒トリガーの強さを読者に認識させる狙いもあると言えます(遊真が黒トリガーを使った三輪隊との戦いは「初見殺し」としての性質が強いためやや不十分)
●第33話〜第43話 ボーダー本部交流編
ついに正式にボーダーに入隊する遊真と千佳ですが、このエピソードでは今までほとんど玉狛支部だけの人間関係しかなかった修、遊真、千佳が本部での人間関係を形成することになります。
これにより修たちと本部の隊員、双方で認知度が上がり「近界民大規模侵攻編」がスムーズに進行する効果があります。
そのため「近界民大規模侵攻編」のプロローグとしての意味合いが強いかもしれません。
迅が三輪に接触しているのも「近界民大規模侵攻編」の重要な前振りですね。
◯終わりに
今回は「ボーダー入隊編」を細分化しましたが、次は「近界民大規模侵攻編」も細分化してみたいと思います。
【参考文献】
「ストーリーのつくりかたとひろげかた 大ヒット作品を生み出す物語の黄金律/イシイジロウ」
【関連考察】
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