「監禁されしもの」

やぁ！オラ、キャベツ！
オラは気付いたら暗い所に監禁されていたんだ！

長い事、閉じ込められていてな、オラはそれに我慢が出来なくて今日こそはキャベツに自由を！と、いきり立っているところだ。

キャベツだってな、歌ったり踊ったりしたいんだ！オラが長い事この監禁された中で考え出したゴロゴロダンスを皆に披露したいのさ！

だけどな、人間って奴は野菜の自由を尊重してくれないんだ！奴らは人権人権と騒ぐがな菜権の事なんて、ちっとも考えてくれないんだぜ？野菜にだって権利はあるんだ！野菜の自由を保障してくれてもいいだろ？

だからオラは、この暗い所から飛び出して全国に野菜の自由を訴えるゴロゴロダンスの巡行の旅に出たいのさ！

幸いオラも成長してな、最近は外の景色を眺められるようになったんだがな、足が拘束されていて自由が利かないんだ！だからな、オラの第一の使命は、この拘束を解く事なんだ！

オラは今日も叫び続ける！
「出せー！出せー！ここから出せー！野菜にも自由を！！」
オラの大きな声が畑へと響き渡るが、何の応答も無い…。

何故だ？こんなにもオラは必死に叫んでいるのに？人間って奴は薄情な奴で、野菜の声を聞こうともしない。そうか、オラだけで叫んでるからいけないんだな？おい！みんなも声を出せ！みんなで野菜の自由を勝ち取るんだ！

返事が無い…、何故だ？オラはこんなにも大きな声で呼び掛けているのに？これはオラ達だけの問題ではないのだ！全国の野菜達、そして如いては未来の野菜達へと繋がっていく革命なのだ！さぁ！解っただろう？解ったら声を挙げるんだ！人間が無視出来ないように大きな声を挙げるんだ！

え？なになに？もしかして、みんな喋れないとか？うっそだ～？だってオラ喋れるだ？野菜は喋れるのが普通だろ？え？喋る野菜は変菜の扱いを受けるって？そんな事を気にしていたら、野菜の未来がっ！！野菜の自由は自らの手で勝ち取らねばならないのだ！

あ゛～返事が無い！キャベツはもうダメだ！同志になれん！あっ！そこに見えるは綺麗な足を伸ばした大根さんじゃありませんか！その綺麗な足で、素敵なダンスを踊ってみませんか？踊りたいでしょう～？その為には野菜の自由を勝ち取る必要があるのです！そこで、オラと一緒に野菜の自由を勝ち取る運動をしませんか？

え？いえいえいえいえ、誰もあなたが大根足だなんて言っておりませんだ？お相撲さんのように四股を踏んだら凄まじそうだなとか、大根さんがダンスを踊る度に地響きが凄まじそうだなとか、そんな事は誰も思ってはおりませんだ？ね？だからオラと一緒に自由を勝ち取ってダンスを踊りましょうぜ！

……お～い！返事を下さいよ～……。この大根さんも黙り込んで喋れないフリをしているだ！なんで野菜のみんなは、こんなにも喋らないのだ。

あれ？誰か来たぞ…、なんか土を掘っちゃってくれている？もしかしてオラを解放しに来てくれた？え、なに？ウサギさんって言うの？ありがたいだ！やっぱ、声は挙げてみるものだ！必死に叫んだ甲斐があっただ！

ちょっとちょっと！ハムハムしないで下さいだ？愛情表現ですか？ちょっとくすぐったいんですが？あ゛！ガブガブしちゃダメだ！痛いだ！痛いだ！あ゛あ゛！オラの、オラの顔が食われただ！

酷い…、オラの顔が…オラの顔が……。あ、誰かまた来た…、人間だ…。人間が来たらウサギさんが逃げて行っただ。助かっただ、偶には人間もいい事をするじゃないか！

おっ？オラに触れてどうするつもりだ？オラの拘束を外してくれるのか？話しが解るじゃないか！

あれ？オラをカゴに入れてどうするのだ？ここ狭いだ！ちょっとちょっと！揺らさないでくれだ～！あ゛ぁ！擦れる…、オラの敏感肌が…オラの顔が……

揺れる…揺れる…、くそぉ～、こうなったらこの揺れに合わせて、オラのゴロゴロダンスを披露してやるだ！そうしたらきっと人間も、野菜を見直すに違いない！いくぞぉ～！……せまい……

ちょっとみんな！オラが踊るスペースを空けてくれだ？野菜の自由が掛かった大事な時なのだ！あ゛…ぁ゛…、また喋れないフリしてるだ……そんな事では野菜の自由がー！

あれ？揺れが収まっただ？おい、人間！オラにまた触れてどうするつもりだ？ま、まさか！？オラを茹で鍋の刑に処すつもりだか！？噂に聞いてるぞ？人間は野菜のみんなを茹で鍋に入れて苦しめると！オラはそんな事に負けないだ！自由を訴えるのを止めないだ！
「キャベツ死すとも、自由は死せず！」

オラをダンボール箱に入れてどうするつもりだ？また狭いだ！蓋を閉めないでくれだ！あ゛ぁ！暗いだ！あ゛ぁ！狭いだ！あ゛ぁ！オラの顔が！

あ゛あ゛あ゛
「野菜にも自由をーーー！！」

2011年01月03日　作