カムチャッカ半島でクマを撮るその3〜撮影編〜
ようやく現地に降り立ち撮影に入る。
事前に調べて行ったので、よくクマと出会える場所とは知っていたものの、本当にすぐに出会える。
世界中探してもこの密度やこの至近距離でクマと出会えるのは、カムチャッカ半島だけだろう。
普通は何日も歩かないと見れなかったり、見れたりしても10メートルという距離で出会うことはまずない。
それだけの距離で出会えてしまうため、撮影するときも標準レンズでも撮影が出来てしまうほどだ。
この写真は5〜6メートル先にいるグリズリーを川の中から標準レンズで撮影をしたものだ。
そんな状況の中、川沿いを進みながら撮影した。1日10キロ〜15キロほどの距離を機材を背負って毎日歩く。
川の水深が深いところで腰くらいの高さがあり、それを何度も何度も渡りながら撮影を繰り返すため体力的には非常に大変だ。
その間、正確には数えていないが、多分数十組の以上のクマにはあった。
なぜそれだけ川沿いにクマ達がいるのかというと、このクリル湖には幾千の川が注いでおり、そこに毎年700万匹という数の鮭が遡上してくる。
川が真っ黒になるくらいのサケたちがクリル湖を目指す為、そこにクマが密集するのだ。
そしてクマは贅沢にも卵の無いサケは食べない。
選り好み出来るくらいサケがいるため、身が細いサケたちはすぐに捨てられてしまう。
この写真はクマがサケを獲ったが、結局食べずに僕らの目の前に捨てて行ったものだ。
川からサケを咥えてこちらに向かってきて、目の前で捨てていく。僕らを餌が取れない可哀想なクマなのだと思っているかのようだった。
ちなみにここは人里から200キロほど離れているため、ほとんどのクマが人間を見たことがない。
そのため逆に警戒心が薄いクマが多く、そのような行動をするのだそうだ。
ある程度の距離まで近づかれると、撮影の興味よりも恐怖心が勝る。
危なくても撮れる瞬間とそうではない瞬間は確実に存在するため、そこを見極めるのが非常に苦労した。
もちろんライフルを持ったガイドさんがいるとは言え、当然100%安全なわけではなく、こちらに銃があったとしてもあれだけの恐怖心を抱く動物はあまりいない。
自然への畏敬の念、まさにそれを感じた瞬間だった。
そんなことを繰り返し、時は夕方へ。
この地方は夕方といっても日が沈むのはかなり遅い。
大体21時頃までは明るい時間帯が続くのだが、夕方になればなるほど危険度が増していく。
日中森にいたクマたちが続々と川へと集まるのだ。 あまりに個体数が多いため、森の途中には人間が避難できる檻がある。 そこを目指しながら歩き、シャッターチャンスがあれば撮影をして、またそこを目指して歩く。
それを永遠と続け、ようやく檻が見えてくる。
ここは「人間が檻に入る側」なのだ。
クマが多ければ檻に待避し、タイミングを見計らって脱出する。
そのあとはまた数キロ歩き、ようやくベーキャンプ地へと戻れる。
ベースキャンプ地のことは次回話そうと思う。
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