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福島に安心を取り戻せ!

風評加害を撲滅するためのアクションプランの私案
※画像は復興庁webサイト「風評の払拭に向けて」(https://fukushima-updates.reconstruction.go.jp/fukushimanow/pamphlet/huhyou-higai-husshoku_J.pdf)より


福島の復興を阻む最後の壁は何か?

2011年3月11日の東日本大震災は、東北地方太平洋側に深刻な爪痕を残した。特に福島県は、災害そのものに加え、付随して発生した福島第一原発事故からも大変な影響を受けている。あれから13年が経過したが、これらの内、驚くべきことに今もなお現在進行形でダメージを与え続けているものがある。

放射性物質か?…と思った方もいるかも知れないが、幸いなことにそうではない。IAEAやUNSCEARと言った国際機関、日本政府や福島県による徹底した調査により、これらは現時点では完全に無視できる量であることが判明している。

事故当時の吉田所長(https://ja.wikipedia.org/wiki/吉田昌郎)をはじめとする作業員らの奮闘などあり、現在は、事故の影響は最低限の気にする必要のないレベルで食い止められている。

では、今もなお福島県の人たちを苦しめる恐るべきものの正体は何か?上記の通り「安全」を示すデータは山ほどあるのに?…それこそが情報災害である。

情報災害と風評加害

情報災害とは、一言で言ってしまえば、(大災害時に限らず)誤った情報によりその当事者が言われなき被害を蒙ることである。さらにはそれを自ら引き起こすことを風評加害と呼ぶ。

風評加害の実例

  • 「福島は放射性物質で危ない」※科学的証拠は何もなく誤っています

  • 「福島の農産物は高い放射線量を示す」※科学的証拠は何もなく誤っています

これらの誤った情報を、信じがたい事に善意・正義感で流す者がいるのである。その引き起こした結果を鑑みれば、「風評加害者」と呼ばざるを得ない。

福島以外にも、同様のいわれなき情報災害の例は近年増えている。例えば自分がすぐ思いつくだけで以下の通りである。もっとあるかもしれない。

風評加害との戦い

この「情報災害」について、福島原発事故に関連した記録を詳細にまとめたのが、林智裕氏による以下著作である。

まずこちら。情報災害について定義し福島原発事故に関するものをまとめ解説したものである。

さらにこちらの最新刊では、BLMなど海外の事例・研究と踏まえて分析し、対策について考察している。

これら前掲書の豊富な実例に基づく解説によれば、情報災害は、災害そのものよりも尾を引いて残り続け、被災者に甚だしい苦しみを負わせ続けるのである。

風評加害私見

それにしても、なぜこのような風評加害が発生してしまうのだろうか。ここでは、前掲書の解説や事例を基に自分なりに考えてみた。

まず、多くの風評加害者の自己認識として、以下のようなキャラ設定があるように思われる。

  1. 政府や大企業など、巨悪が存在し、弱い民衆を傷つけている

  2. 弱い民衆に寄り添ってこれらの巨悪と戦う自分は、とても優れた意識の高い存在である

この図式は、例えば公害・優生保護法長崎の被爆者認定ブラック労働など、政府や再企業の対応が適切でなかった可能性が高い案件においては有効かもしれない。また、災害初期に被災者に寄り添って政府を批判する言説には、政府の対策の妨害になる情報でない限りは、「被災者のための迅速なアクションを促す」と言う一定の正当性がある。また、時間が経っても復興が進まない場合もそうだろう。

ところが、政府の初動が的確で復興が順調に進む場合、あるいは被災者が政府とうまく協調しながら着実に復興を進めている場合には、何が起こるだろうか?
このような場合、先述の「巨悪」「それと戦う自分」設定が崩壊している。勿論、それでも復興や被災状況の回復が進んでいるのであれば、(本当に被災者に寄り添う立場からすれば)それは歓迎すべきことのはずである。この時点で無理筋な政府批判を止め世界観を修正すべき、と考える人がほとんどだろう。

ところが一部の人は、先ほどの世界観を信じきっており、その世界観の下で各地流されている自分の優位な立場を失うことを恐れてしまう。更にひどいケースでは、この設定を利用して善意の人たちを騙して誤った言論活動に巻き込み、ちゃっかり自分のビジネスに取り込んでいたりする。

ここでおかしな事になってくる。彼らは、客観的な事実を無視した挙句、「復興が進んでいない」「原発事故は終わっていない」「〜〜は解決していない」などといった間違った言説を、データを捻じ曲げたり、ひどい場合は自分の妄想(信仰)を根拠にして唱え出してしまうのだ。しかも、政府の適切なアクションを利用して復興を進めていこうとする人たちを「政府の犬」などとみなし、無視したり、ひどい場合には攻撃する。そして、自分の世界観に合う主張や被災者の声ばかり選んで採り上げる。

こうして、被災者に寄り添う立場から出発したはずの言論活動が、最初のキャラ設定に固執した結果、気がつくと被災者を苦しめる言説を根拠なく垂れ流すだけの風評加害者に成り果てる。

尚、前掲書においては、上記のメカニズムについて海外の事例や先行研究との関係も含めて議論されており、読み応えがある。詳しくつっこんで考えたい方は是非購入いただきたい。

風評加害を撲滅する3つのステップ

ここまで読んでいただいた方の多くは、風評加害者の存在に唖然とし、眉をひそめ、何とかしたいと思われるだろう。では何ができるだろうか?以後、前掲書をもとに自分なりに考え、実践しているステップを紹介したい。

風評加害者になることをやめる

まず当たり前の話だが、風評加害者にならないことだ。
しかし、これは案外難しい。人間である限り誰でも、間違えない事は不可能である。また、目立つ存在をけなし、くさすことを通じて自己の立場を上げることは、容易で有効な自己アピール手段だからだ。
一つ言えることは、「自分は安易な自己アピールに走っていないか?」と問い続け、間違えたと感じたらすぐ謝る覚悟を持つこと、である。人は誰でも自分をアピールしたいという願望があると思うし、それ時代は人間社会を発展させてきた一面でもあるので、否定する必要はない。ただし、その際に無意識的に人に害をなしていないかどうかだけは、絶えずチェックすべきだ。人を殴って良いのは、同じ武器で自分も殴られる覚悟を持つ者だけだ。
...と言っているこの私自身も、何か大事なことを見逃している可能性がある。ただ、自分の考えを公開してみることで初めて、間違っていることに気づける場合もある。そこで、個人攻撃はしないように心がけ、自身の間違いを発見するために意見公開に踏み切っている。

風評加害と戦う人に寄り添う

前掲書の著者である林さんは、福島に根を張って、復興活動に携わりつつ風評加害に対峙する言論活動を行っている。その負担は大変なものであろう。このような戦士に孤独な闘いを強いてはならない。

そこで次の手として、風評加害と戦う戦士たちの後方支援をお勧めする。まずは、林さんや同じように福島で風評加害と戦う人たち、そのほかの風評加害に敢然と立ち向かう人たちについて、XやWebでの発信をチェックしてみて、気に入ったものをいいね・拡散して支援することから始めよう。ほぼノーコストで誰でもできるはずだ。

また、2024/01の能登地震以来、岸田総理の元で政府が情報発信を強化しているこ
とも見逃せない。

対国内だけでなく対外についても、例えば2023年に行われたALPS処理水排出に際し外務省は活発な情報発信を行なった。

政権側のこれらの動きについては、さらに発展し、公的な情報整理機関設立まで行くことが望ましい。ただ、まずはこの流れを積極的に支持して後押ししていくことが重要だ。

有償支援

「いいね」をしながら調べていくうち、重要と思われるキーパーソンが絞れてきたら、その人に届くような支援にも積極的に取り組んでみることをお勧めしたい。例えば、著書を買ってみる、記事に差し入れをしてみる、など。

愛情をお金であがなうことはできません。
けれどお金に、
愛情をこめることはできます、
生命をふきこむことはできます。
もし愛する人のために、
お金が使われるのなら。
『愛する人のために』谷川俊太郎 より

さらに強い連帯の気持ちがあるようであれば、覚悟を決めて論戦に参入する選択肢もありだ。ただ注意すべきなのは、怒りで筆が滑って風評加害者への誹謗中傷をやらないよう細心の注意を払いつつ、事実のみ冷静に反論していくことが重要だ。風評加害者の中には、切実な利害を守るために参入している者もいる。こちらに失言をさせ、それをしたたかに利用することをねらっているかもしれない。

そして奥の手は「復興の一員」になること

前掲書や林さんの記事を読めば、風評加害に対する怒りと苦闘ぶりが伝わり、あなたの胸を打つだろう。しかし、さらにもう少し洞察してみると、林さんたちの真の願いは福島の復興であると思われる。
そこで考えられるアクションは、「風評加害を受けて」、福島を満喫することだ。遊びに行くもよし、福島の農産物を買うもよし、福島の素晴らしさを拡散するもよし…これらは、復興に貢献しつつ風評加害者の拠って立つ世界観(巨悪&弱い民衆&寄り添う自分)に大きなダメージを与えられるだろう。
幸か不幸か、大部分の加害者たちは、結局個々の事例の関係者への真の意味での興味を持っていない。抵抗にあって思い通りに行かないと興味を失い、次のターゲットを探してどこかに行ってしまうだろう。別の場所で出会ったら、それを見逃さず、風評加害との戦いを余儀なくされた人たちへの後押しを行う。
これを繰り返すことで、風評加害者の基盤は白日の元に晒され、その基盤は失われていく。風評加害から脱落して本当の意味での正義感を取り戻す者を少しでも増やせるかもしれない。息の長い取り組みが必要である。

ちなみに自分は、林さんの「正しさの商人」を読み、風評加害社の存在を意識して以来、ふるさと納税で福島の農産物を購入するようにしている。ただ今年は、正月に能登地震があったので、まずは能登地方の米を購入した。先日それが無事届き、復興も順調に進んでいるようである。そこで、安全な福島の農産物を安心して購入したい。その際には、以下も大いに参考になるだろう。

南海トラフ大地震に備えて

先日、宮崎県南部で地震があり、南海トラフ地震注意情報が発令されている。

各自治体・企業・家庭で、防災体制の見直しが進むと思われる。と同時に、ひとたび大地震があれば、呼応した情報災害と風評加害者の出現が懸念される。日頃から風評加害の芽を潰しつつ、実際に地震が発生した際に、それ以外の地域の人たちが力を合わせて風評加害を潰すことも重要と思われる。
先述した岸田政権のもとで立ち上がりつつある公的な風評迎撃についても、この南海トラフ地震も念頭におきつつ、引き続き強化するよう求めていきたい。自身の活動においても、積極的に後押ししていきたい。


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