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2022上半期ベストトラック33選(6選)

早いもので今年も半分が終わってしまった。体感的には2ヶ月くらいにしか思えないのだが。なので今年も去年と同様に、自分が今年聴いた中で最上の33曲を選出し、プレイリストにまとめてみた。曲順はざっくりリリース順。時間のある方はぜひともチェックを。

また、その33曲の中から特に印象に残った6曲を以下にピックアップする。



蒼山幸子 "ハイライト"

ねごと解散からソロに転向し、サウンドの先鋭性を求めるよりも、これまでの経験を基とした良質なポップスを作る「作家」「職人」のタームへと移行した印象のある蒼山幸子。特にこのアルバム表題曲は、清涼感に満ちたメロディ、伸縮性のあるグルーヴが効いたシンセサウンド、また歌い回しの細かな一部分を取ってみても、実に彼女らしいと言える衒いのない個性が発揮された秀曲。詞曲提供の外仕事も少しずつ増えてきていることだし、最も信頼できる国内ポップソングメイカーのひとりとして確固たる地位を築き上げるのも、そう遠い未来ではないだろう。


優河 "灯火"

自分は今年に入って初めて優河の存在を知った。もっと早くに知っておくべきだったと後悔している。彼女が今年上梓したアルバム "言葉のない夜に" は収録曲のいずれもが素晴らしい出来栄えだが、特にこのリード曲はそれこそ歌詞中にある「夜明け」のイメージで、ゆっくりと鈍い陽が差し込んでくるように音が開け、柔らかな歌声が持つ包容力、雄大なスケールを感じさせる世界観で聴き手を魅了してくれる。素朴なフォーク調でありながら、ポストロックに通じる音響の緻密さも兼ね備えた魔法バンドのサウンドプロダクションにも唸るほかない。


beabadoobee "Talk"

2020年作 "Fake It Flowers" を聴いた時は、狙いはわかる、だけど個人的にはそこまで…という感じだったのだが、この曲でドンズバと撃ち抜かれた。敢えての時代錯誤なシェイクビート。ポップパンクとオルタナティブロックとシューゲイザーの中間を射抜くギターの垢抜けない歪み。そして甘酸っぱいとはこういうものを指すのだと言わんばかりのキュートなメロディ。どれもこれも狂おしいほど突き刺さる。かつてゼロ年代を彩った数々のロックアイコン…例えば Avril Lavigne 、Karen O 、Hayley Williams …そういった血筋を新たな時代に受け継ぐ存在として、beabadoobee こと Beatrice Laus の魅力は今こそ見逃せない。


Soul Glo "Jump!! (Or Get Jumped!!!) ((by the future))"

このアメリカ・フィラデルフィア出身の4人組がぶっ放すハードコアパンクは、秒で血液を沸騰させる即効性があり、とにかく獰猛だが、その叫びは衝動的なアジテーションと言うよりも苦悩の叫びのように響く。ハイトーンの声質は少し H.R. (Bad Brains) を彷彿とさせるが、ほとんど途切れなく矢継ぎ早に言葉の散弾を浴びせてくるスタイルはヒップホップからの影響を感じるし、実際に歌詞中には Juicy WRLD や Pop Smoke といったラッパーの名前も飛び出す。 若くしてこの世を去ってしまったラッパーの名前が。銃、ドラッグ、人種差別。彼らは歌詞と演奏で混乱を混乱のまま表現し、我々は混乱という名の未来へ向かって飛び跳ねていかざるを得ない。


tofubeats "PEAK TIME"

tofubeats は新譜 "REFLECTION" に関するインタビューの中で「一大アンセム狙いの曲が入っているわけではない」と述べているが、いやいやどうして、この曲は十分ニューアンセムと呼ぶに相応しいきらめきを放っているじゃないか。自分は tofubeats が歌詞の中で見せる素のエモーショナルな部分、すなわちダンスフロアの享楽に身を埋めようとする中で内面に立ち昇る哀愁や逡巡といった部分に惹かれてしまうタチなのだが、この曲はそういった翳りを「今夜」の叫びでまとめて吹き飛ばしてしまうような、極めてポジティブな爽快さがある。フロアで生じる喜怒哀楽をすべて引き受け、その上で真夜中の熱狂を生み出そうとしているかのような。


OMSB "大衆"

かつて「普通って何?常識って何?/んなもんガソリンぶっかけ火付けちまえ」と扇動していた人間がこの曲に辿り着いたことに、年月の重みを感じずにはいられない。幼少期へと記憶を遡って OMSB 自身の半生を綴るリリックなのだが、何も劇的だったりすることはなく、ただ少し大勢の他人と違っていた自分を見つめ直しながら、「根に持っちゃいないよ 覚えてるだけ」「仲間外れじゃなくて そこに居なかっただけ」など心の機微をさらりと捉えた表現がいちいち心の琴線に触れる。そして「さあお前も今日から大衆だ」のとどめ。人生のステージが移行し、変わった自分と変えられない自分を受け入れながら、毎日は淡々と進んでいく。

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