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特等席

最近の休日は頻繁にバスに乗っている。
高円寺行き、片道15分である。

そもそもバスを利用するようになったのは、ここ最近の話。それまではもっぱら電車移動だった。

良く行く場所なら、基本的に会社負担の通勤定期を使うことができるので電車を使えば交通費がかからない。それにバスはなんだか苦い思い出しかない。
地元で何度か乗ったことはあったが、ちゃんと目的地で降りられたことがない。


そんな私が、初めて都内のバスを利用してみたのである。
理由は休日の新宿に行く足取りが重かったから。

私は少し緊張しながらバスに乗り込んだ。

すると、バスの後方から乗り込んだ私に、
「前から!」と老人に強めに叱ってきたのである。私、かなり萎縮してしまう。

都内のバスというのは前方から乗車し、先払いをするとここで知った。
どこで降りても同じ料金なのだ。

数少ないバスの乗車記憶では、後方から乗って切符を取る、降りたバス停で精算であったのに、その土地には土地のルールがあるらしい。

郷に入っては郷に従え ということか。

老人に対しては、もう少し言い方あるよな〜と思ってしまったけど
その方にとっての当たり前だから仕方ないのかもしれない。

当たり前(価値観)の押し付けはいつでも怪物になりうるから気をつけなければ
ならないと坂元裕二に教わったばっかりだ。

そんなこんなで、ようやく都内のバスに乗りこなせるようになった最近は、
用もないのにバスに乗っている。

そして乗車してはお決まりの席に向かうのだ。
一番後ろの長席の一つ前の左側の窓際。

特に理由はない。いつも座っている場所が落ち着くのでそうしている。

この席で、過ぎ去っていく街並みを横目に黄昏ながら音楽を聴く時間がとても好きなのだ。この時の私、ウォークマンのCMくらい気持ちいい表情をしている(というかウォークマン懐かしいね)

自分の特等席ってなかなか良い。
片道220円、私の心を満たしてくれる有意義な小旅行である。






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