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こちらがラッキーボーイと呼ばれた男です

前回はキジトラ猫の律さんを迎えた時の話をしたけれど、我が家にはもう1匹猫がいる。
白黒ハチワレのルパンさんである。
こちらも保護猫と呼ばれる子ではあるのだけれど
律さんをお迎えした時のような葛藤とかドラマみたいなものはない(笑)

律さんをお迎えして1年が経過した頃、我が家ではもう1匹猫を迎えようかという話が持ち上がっていた。

律さんは幸いなことに我が家に馴染んでくれた。
毎日絶えず可愛い。
そして彼女は野良だった時分家族と暮らしていたから、もしかしたらほかの猫がいた方が良いのだろうか・・・
という話をしていたのだ。

知り合いがいつも行っている保護猫カフェもあるし、保護団体も近所にある。
どういうところから迎え入れるかねー。
できれば秋くらいに探し始めようかねーなんて夫の人と言いあっていた6月のある日、
近所の町中華を食べた帰り道、子猫に出会った。

あら、子猫。
とちょっと近づこうとしたら子猫はぴゃっと逃げた。
人間を見た野良猫として正しい反応である。

ただ、逃げた先が悪い。
子猫は止められたバイクのタイヤと泥除けの間に潜んだ。

「いや、あーたそこは危ないのよ。逃げるところとして不正解なのよ」
と、声をかけながら捕まえた。

うん?捕まえられちゃったよ?逃げないの?みたいな。

見ると子猫は猫風邪をひいて顔面は鼻水まみれでぐずぐず。
さっき逃げた割には人間に捕まっても全く警戒していない。
しかも見回しても子猫の家族と思しき猫たちは見当たらない。

夫の人と顔を見合わせた。
ふたりの頭には同じことが浮かんでいた。
「多分、この子このまま放置したら近いうちに死ぬんだろうな」

私は声に出して言った。
「この子、どうだろう、2匹目に」
なんかもう選択肢はそれしかない感じだった。
もうそんなの一択じゃん。

言い訳をするならば一応考えてはいた。
多頭飼いするにあたって優先すべきは今いる猫、律さんであるということ。
うつるタイプの病気を持っていては飼えない。
あまりにも律さんとの相性が悪い場合も難しくなる場合がある。

だからまずは病院に連れて行って検査をして猫風邪を治療して
しばらく隔離したのち律さんと顔を合わせてみてその上でいけそうならば・・・
という条件はある。

けれど、律さんとの相性についていうならば大丈夫なんじゃないかと思っていた。
なんとなく。

律さんは警戒心が強い。
そもそもほかの猫と仲良しこよしになる可能性は低い。
けれど、この子猫はなんだかもうとてもどんくさい。
一瞬でそのどんくささがこちらに漏れてしまうほどに。
空気を読まずぐいぐいいきそうなこの白黒ハチワレは多分彼女の許容範囲に入っている気がした。

律さんは野良時代他の猫と行動を共にしていた時期があるからこそ
他の猫に対する許容範囲はさほど狭くないように感じていたのだ。

そんなわけで小さな軽いからだを抱きかかえて(と言うほどのサイズもない)連れて帰った。

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すぐに病院に連れていくと、診察室で私の顔を見た獣医さんは
「あれ?猫ちゃん!飼ってましたよね?!」
と笑いながら言った。
「えぇ、つい出会ってしまって・・・」
と返すとあらあらと笑われた。
そして少し声のトーンを落として
「どうされます?飼えますか?」
と聞かれた。

その時初めて動物病院に連れてきても飼えない人もいるということに思い至った。
「あ、えぇ、先住猫にうつってしまうような治らない病気を持っていなければ迎え入れるつもりですし、
 もしウチで迎え入れられなかったとしても貰い先は探します」
と答えてから検査が始まった。

小さな体は700g。
多分生後2ヶ月くらいで男の子。

そこまで聞いて驚く。
え?!男の子だったの?!
子猫過ぎて分からなかったのだ。
小さすぎると分かりにくいなんてことがあることすら知らなった。

小さな太ももから抜いた血で行った血液検査の結果は良好で、晴れてうちの子になることに決まった。

猫風邪が治るまでは律さんには会わせられないけれど
どちらにせよ顔を合わせるまでは1週間くらいは隔離生活した方がいいと聞くしちょうどいい。

お薬の話をしながら獣医さんは言う。
「時々こうやって誰かに見つけてもらって幸せに暮らせる子がいる。
 この子はラッキーボーイ!!」
と。
「本猫にもそう思ってもらえるように頑張ります」
律さんの時と同じ言葉を返した。

ルパンと名付けられた白黒ハチワレは大人になった今もちょっとどんくさい。
本質的にはバイクのタイヤと泥除けの間に逃げていったあの人変わってないだろう。
見た目も脚は短く、階段を上る後ろ姿はウサギを思わせる。

そういえば猫風邪が治った後も寄生虫がお腹にいることが分かって虫下ししたりもしたし
去勢する前はスプレー行動が多くてクッションや布団を何個もダメにした。
冷静に考えたらお金のかかっている猫である(笑)

先住猫律さんにはよく「あそぼー!」ととびかかって怒られてもいるけれど
寒い日は一緒に寄り添って眠れる程度には仲は良い。

そして我が家きっての甘えん坊将軍でもある。
まず、寝起きは足にまとわりついて撫でろの催促をする
「寂しかったよー!!」
とでも言うように大きな声で鳴くけれど、さっきまで一緒に寝てたからね?と毎朝思う。

オンラインミーティングをしていると
「僕以外の誰と喋ってるのー!?」
と言わんばかりに乱入しようとする。
夫の人の会社ではちょっとした有名猫になりつつあるらしい。

体重は5kgを超えて抱きかかえるとずっしりと重い。
よくまぁほぼカリカリ時々ウェットフードだけれこんなに大きくなれるものだ、と感心する。
「ねぇ、5キロちゃん」
と話しかけるとブスくれた顔でこちらを見る。
気にしているのだろうか・・・飼い主と一緒にダイエットする?(笑)

ところでこのルパンさんは多分猫の中でも顔面が可愛いタイプなのではないかと思う。
身内の欲目を差し引いたとしても。
それで夫の人にある日言ってみた。
「この子、顔可愛いよね。知らなかったわー」
と。
夫の人は
「知らなかったの?俺はまた顔が可愛いから拾ったのかと思ってたわ」
と言った。
夫の人は出会った瞬間からその顔の可愛さに気付いていたらしい。

あの日、たまたま出会わなかったらきっとこの子はウチにはいない。
風邪もひいていて寄生虫もいたことを考えると高確率で今はもうこの世にはいなかっただろうと思う。
なんかもうボロボロでうっかり捕まえられてしまって選択肢がなかった。
それだけで顔が可愛いかどうかなんて見てなかった。
そもそも猫ってずべからく可愛いし。

ふくふくに育ってその可愛さをいかんなく発揮していていいなぁと思う。
幸せだなぁと思う。
あ、幸せなのはその可愛さを特等席で堪能している私のことです。

さて、律さんにも思っていることだけれどルパンさんにも猫又になるくらい長生きしてほしいと思っている。
けれどルパンさんのしっぽは短い。
小茄子くらいしかない。
彼が猫又になってもしばらくは気付けないかもしれないなとフリフリと振られるしっぽを見ながら思う。

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#うちの保護いぬ保護ねこ

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