映画感想:シャザム!~神々の怒り~(ネタバレ有り)
ブラックアダムの時にも似たようなことを書いた気がするが、ユニバース全体や運営会社周りがゴタゴタしていようと、主演俳優がトンチキな発言をかましていようと、なんだかんだ観に行くのは単体で見ればDCの映画は面白いものが多いからである。
前作のシャザムも正にそれで、公開時期がエンドゲームともろ被りしたり、吹替がゲボみたいなことになったりしていたが、ひとつの映画としてはとても面白かった。悪かったのは強いて言えばテンポのモタモタ感くらいで、ヒーローものとして、ジュブナイルものとしては素晴らしい映画だったと思っている。
なので、その続編とあれば映画館で観たかった。加えて、監督のデヴィット・F・サンドバーグが好きなので、その仕事ぶりを見たかったというのもある。
で、どうだったかというと、とてもいい仕上がりになっていた。職人として腕を上げたなあ、デヴィット・F・サンドバーグ!
まず、前作よりも格段にテンポが良い。フィラデルフィアを舞台に、パッパッと場面が切り替わっていく作劇なのだが、まったく目まぐるしさを感じないし、展開も理に適っているので、人物の視点が変わっても混乱せずに楽しめるのだ。二人が一役を演じているシャザムの仲間たちも、まったく相違なく一人格として見られるし、軽妙な会話劇を主とした演技のアンサンブルも心地よくて楽しい。特に、前作と比べて子役たちがティーンエイジャーとして立派に成長しているのがほっこりした。
ただ、ひとつの物語としては、前作の方が綺麗にまとまっているとは思う。比べてみると、今作は少々散らかっている感も否めない。まあ、これは前作でビリー・バットソンとしての成長譚とシャザムとしてのヒーロー譚をやりきってしまったせいもあるのだろうが、それはそれとして、とてもウェルメイドな仕上がりになっている。続編としての教師を保つ為に、前作で家族を手に入れたビリーのその後をきちんと描いていたからだ。
家族、仲間を手に入れ、孤独ではなくなったものの、段々と大人になっていく自分と仲間たち。もうすぐ里親の元から巣立たなければならない現実。ティーンらしく恋愛に興味を持って自分から離れていく親友。大学進学により、家を出ようとする長女的存在。
また独りになってしまうのではないかという葛藤を抱えながら、ヘレン・ミレン率いるヴィランに立ち向かっていく姿は、思わず応援せずにはいられなかった。孤独と戦う人間という属性はとても好みなので、尚のこと。
ただ、だからといって、まったく重苦しさなど感じなかった。とにかく観客を楽しませようというデヴィット・F・サンドバーグの心意気がひしひしと伝わってきたし、その通りにずっと楽しい場面が続く映画になっていて、エンタメ満載のファミリー映画然としていたのが良かった。その上、序盤の博物館のパニックシーンや終盤のグロいモンスター大乱闘など、それとなくホラー職人としての手癖も盛り込んでいるのがニクい。前作の会議室シーン同様、血が出せねえならこうして怖がらせてやる!という気概が感じられた。
そして、そこまでやっておきながら、ヴィランを倒すラストはまったく照れることなく王道ヒーローの展開をやっていて(なんとアキラオマージュ!)、ああ、この人はエンタメを真剣にやってくれる人だなあと嬉しくなった。MCU(というかタイカ・ワイティティ)みたいにおふざけがくどくもないのが良いし、VFXもまったくチャチくなく、グリーンバックの向こう側が透けて見えるようなせせこましい映像でないのも良かった。ちゃんとフィラデルフィアの街を舞台にしたフィラデルフィア映画として見れる。この辺はブラックアダムでちゃんとひとつの国とそこに生きる人々の確かな息遣いを描いたジャウム・コレット・セラに通ずるものがあり(二人ともホラー畑出身)、映像面でも現場でもきちんとやることはやりつつ、自分の色もそれとなく盛り込む職人監督として、まさに映画の中の子役同様にメキメキと成長しているデヴィット・F・サンドバーグが垣間見れた気がする。
総じて、とても楽しい映画だったと思います。裏ではロック様が口出ししたり、運営会社から横槍を入れられたりと、結構ゴタゴタが起きていたようだが、それを感じさせない作りになっていたのは、やはりあのジェームズ・ワンに見出された人間だったからだろうか?
ともかく、今後もデヴィット・F・サンドバーグの活躍が楽しみです。インタビューなんかを読むと、ちょっとヒーロー映画に疲れてきているようだし、DCがガタガタなせいでシャザムの今後がどうなるかも不明瞭だが、3を監督してくれるのならば応援したい。ハリウッドの荒波をものともしない職人監督として頑張ってくれ!
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