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映画感想:アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(ネタバレ有り)

 1が公開された頃は映画というものにハマり始めていた頃で、結構頻繁に見ていた記憶がある。かなり映像や設定に拘って作られているらしいというのも、何かの番組で特集しているのを見て知った。
 もう何年も見返していないが、色んなシーンを鮮明に思い出せるのは、やはりその圧倒的映像のビジュアルと、ジェームズ・キャメロンの監督としての確かな力量によるものなのだろう。
 物語も、当時は面白いなあと感じていたが、SNS上では主人公に共感できないという感想を持つ人が結構いて、まあ確かにそのきらいはあったかなあ、とは思ったり。しかし、二つの世界の間で揺らぎに揺らぎ、最終的に当初は蔑んでいた側の世界の者として生きることを決めるというのは、結構好きな文脈でもあるので、そこまで嫌悪感はない。

 しかし、今作が公開されると知っても、あまり熱狂はしていなかった。好きな映画は好きな映画だったが、続編を観たいとは思わなかったからだ。だが、予告編を見ると、そのあまりの映像のレベルに驚愕して、これは観た方がいいのではないかと思い立った。物語というより、映像目的で〝続編〟を観たくなったのだ。

 それで、遅ればせながら見たのだが、ジェームズ・キャメロンは完全に父親目線になっていたが、芯はまったくブレていないのだなあ、というのが第一の感想です。
 僕は一作目の頃に、ジェームズ・キャメロンは宮崎駿と同じ属性になったのではないかと思っていた。その属性というのは、〝母なる自然やそこに根付く霊的な存在こそ偉大であり、それを犠牲にして利を得ようとする悪は滅ぶべき〟や、〝文明兵器によって行使される武力と暴力を否定しておきながら、その装置を限りなく美的に描いている〟というもので、なんとなく共通しているなあと感じていたのだ。
 今作はまさにそんな話であり、前作の拡大版だった。パンドラという架空惑星の、大いなる自然やそこに息づく生物サイクル。ナヴィ族という架空文明の文化の、細かな衣装から言語に至るまで、徹底的に作り上げているが、それと同じくらい、人類側、スカイピープルのメカも圧倒的に作り込まれていたからだ。
 しかし、キャメロンは宮崎駿と違って、父親というものを描きたかったのだろう。ある種、内省的な作劇であり、まさしく長い年月を費やしただけあって、完全な私小説にしたかったのかもしれない。
 主人公のジェイクは一家の父として幾度も試練を受けるし、敵側であり、もう一人の主人公でもあるクオリッチ大佐も、父親という属性を持っている。宮崎駿が一切そういう目線に興味がない(父の立場から教えを説こうとしない?)のに対して、キャメロンは父親という概念に向き合って映画を作ったのだ。二つの世界の間で揺らぎに揺らぐというのは、宮崎駿の映画でも頻出するテーマだったが……。つまり、宮崎駿は一切のブレがないともいえるが、ブレが無いといえば、キャメロンも目線が変わっただけで、芯は変わっていないと感じた。
 クライマックスで、赤いライティングに照らされる中、戦う女と化したネイティリが無双するところとか、クオリッチ大佐が人質の喉元にナイフを当てて交渉を始めるところとか、迫り来る水から逃げるところとか……うわあ、ジェームズ・キャメロンが往年のジェームズ・キャメロンみたいなことをやっている……!と、感動したのだ。ファンサービス的にやっている風ではなかったので、あれはきっと天然なのだろう。

 肝心の物語はというと、所々もたついているように感じる部分もあったのだが、(二回も子供が人質に取られたり、二回も海の一族の子供と諍いを起こしたり)とにかく映像が圧倒的過ぎ、場面がリッチ過ぎて、飽きをまったく感じなかった。これ本当にどっかの惑星でロケしてきたんじゃないかと思えるほどリアルな架空水棲生物や水生植物が全編に渡って凄まじいクオリティの映像で出てくるので、圧巻だった。途中何度も、「これ、CGなんだよな?本当に、CGなんだよな?」というのが頭をよぎったし、完全な実写とも、フロムゲーのプロモ映像みたいなハイレベルのCGとも、最近のビッグバジェット映画のCGとも違う、まったく別次元の映像を見せられて、脳がバグりそうになった。アクアマンを見た時に、キャメロンが嫉妬とも取れる発言をしていたので、海の架空文明の描写がどうなるのだろうと勝手にヒヤヒヤしていたが、余裕で越えてきて息を呑みました。
 それに加えて、伝説のフィッシャーマンみたいなアクションも良かったです。映像はもちろん、マッドマックスFR(いや、ウォーターワールド?)みたいなアクションがワクワクしたし、何よりはぐれ者のクジラが恩義を感じて共闘するところなんか、カタルシスを感じました。まさにジョージ・ミラー的。ああいう場面があるだけで、映画は面白いのだ。

 なので結果として、映像だけでなく、物語も面白かったです。色々と引っ掛かりがある部分は、サーガ化していくというので、これから回収されていくのだろう。ますます私小説的になるというのなら、キャメロンには最後まで突っ走ってほしい。これからどんなナヴィ文明と素敵なメカが、圧倒的な作り込みの映像によって登場するのか、楽しみで仕方がないので。

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