初めて大喧嘩した

この前

「もうすぐ付き合って半年やし、ちょっと真面目な話しようぜ〜」

寝る前に二人でテレビを見ていたら、彼女さんが突然言い出した。
聞けば、これまでの半年の反省をして、お互いに悪いところがあったら直そう、みたいな話をしたいらしい。

「じゃあ、先に、私の悪いとこ言って。」
「彼女ちゃんは悪いとこ、まっっったくない。」
「はい、気を使ってる〜嘘〜!」

本当に無いので仕方ない。
いたずらされても可愛いし、寝かしてくれないのも可愛い。
ゲームを時々邪魔されるけど嬉しいし、皿洗いした後に洗う食器を増やされてもしょうがないなぁ、って思ってしまう。
彼女さんがいることで起きる現象が、例え自分の時間を奪うものであっても幸せなことだと感じる。

次に彼女さんから僕の悪いところ。
・家事をしてる時に甘えてくる(ごめんなさい)
・家事の手伝いをしてくれるのは嬉しいけど雑(すいません)
・夢で浮気をする(彼女さんの推しとデートした夢を、前に見てしまった)
・自分の趣味の時間を犠牲にして彼女さんのために使う(だって好きなので)

などなどのド正論を言われた。
まぁ、こういうことは毎日言われてるし、彼女さんも後半は半ばふざけ気味に悪いところを絞り出してたけど、
日々色々迷惑をかけて本当に申し訳ないと謝り倒した。

他にもお互いに褒めたりとか今後のこととか色々確認し合って、
これからもよろしくお願いします、ということで半年会議は終わった。

寝る直前に彼女さんが急に泣き出すまでは。

彼女さんはずっと「急に泣いてごめん」「なんでもない」と言っていた。
彼女さんは急に泣き出したりとかするタイプじゃなく、
むしろいつもは、僕が急にメンヘラ発動して泣き出して、彼女さんに笑われながら慰めてもらう側だ。

もしかして、
本当に悪いところがあったけど、それを僕に伝えるか伝えないかの葛藤で泣き出したのかな、と思った。
だから、

「悪いとこあるなら何言っても大丈夫やから言って。本当に嫌なら直すし、それでもダメって言うなら別れるし、気使わんで。無理せんでいいよ。」

と必死に伝えた。
辛いことがあるなら全部吐き出して欲しかった。彼女さんはうんうんと頷いて、ひとしきり泣きじゃくって、
ついに口を開いた。

「不満がないのが心配なんやけど。」

出会って一年半、付き合って半年。
彼女さんは、いっぱい迷惑をかけてる、という感覚があるらしくて、日頃から悪いところいくら言われてもおかしくないって思っていたらしい。
僕がそれを全部溜め込んでるんじゃないかと、逆に心配になったということだった。

「◯◯ちゃんは、私に嫌われんようにって、悪いところ言わんやろ?」
「◯◯ちゃんは気を使いすぎ!」
「そんなんで嫌いにならんから悪いところ全部言ってほしい。」

そう言われたけど、本当に無かった。
この半年、むしろ毎日感謝しかなかった。
だから、そう言われた僕にとって彼女さんの悪いところは一つしか思いつかなかった。

「本当にない、ってのを何で信用してくれんの?そこが不満かも。」

彼女さんをもう一度泣かせてしまった。
今思えば、もう少しちゃんとした言い方があったと思うのだけれど、不満が欲しいという彼女さんに対して、何とか捻り出した不満だった。
泣いた彼女さんを慰めたけど、「もういいわ!」って突っぱねられて、彼女さんは背を向けて寝てしまった。
これまで言い合いも倦怠期も無かった僕達にとって
初めての仲違い、大喧嘩だったかもしれない。

背中越しに相方さんのすすり泣く声を聞きながら。
彼女さんの悪いところを必死に捻り出そうとして全く寝れなかった。
もしかして自分は彼女さんのことをちゃんと見てあげてないんじゃないか、って申し訳なく思って、泣きそうだった。
本当にごめんなさい、本当にごめんなさい、それしか考えられなかった。


翌朝。
起きたら相方さんも起きてて、開口一番謝られた。
大人になって他人と喧嘩することなんて普通無い。人と喧嘩すること自体が久しぶり。
喧嘩直後のぎこちない会話に懐かしさすら感じた。
とりあえず二人とも謝り倒した。
「彼女ちゃんの気持ちをもっと汲み取ってあげられれば良かった」「いやいや無理に悪いところ言わせようとしたのが悪かった」
そんな感じで、二人とも仲直りしようと必死だった。

寝れない夜に何とかまとめた気持ちを彼女さんに伝えないといけなかった。

僕にとって彼女さんは、ほぼ初めての彼女みたいなもの。
彼女さんとの全部のイベントが本当に新鮮で、楽しくて仕方がない。
自分の性格を理解して接してくれる彼女さんが優しくて本当に好きだし、
意地悪だろうが何だろうがいっぱい絡んでくれる彼女さんが本当に可愛い。
好き過ぎて、彼女さんの全部をちゃんと見てあげることが出来てないのかもしれない。
全部を見たら、もしかしたら嫌いなところがあるかもしれないけど、今は好きなところしか見れない。
本当にごめんなさい。今は我慢してください。

と、そういうことを伝えた。
僕のスイッチが入って、感情が溢れてしまった時に彼女さんにする「お気持ち表明」はいつもこんな感じ。
とにかく好きって伝えたい。
で、こういう「お気持ち表明」をしたら決まって相方さんはこう返してくれる。

「なにそれ、意味分からんのやけど(笑)」

そう言って、必死に喋ってる僕のことを笑い飛ばしてくれる。
必死になって喋ってたのが恥ずかしくなって、顔が熱くなるけど、言いたいことを全部言った結果なので仕方がない。

「とにかくごめんなさい。」
「私もごめんなさい。・・・はい!これで!終わり!」

うじうじと謝り合う二人だったけれど、
彼女さんの号令で綺麗さっぱり。
いつもの僕達に戻った。



その夜、改めて朝の僕の「お気持ち表明」について返答された。

「茶化して流しちゃったけど
そんなに好きになってくれてありがとね。
けど、私なんか本当クソみたいな女やから、
早く目を覚ました方がいいよ、
完全にだまされとるけん(笑)」

こんなことを言ってくる彼女のせいだと思う。
まだ当分目が覚めそうにない。

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