地域住民と行政の共働で、1冊の本をつくりました -『やっぱ 足助 いいじゃん! 〜あかりのつながる 足助の町並みと暮らし〜』-【無料デジタルブック】
この度、自分が長期間に渡り携わってきたプロジェクトの集大成として、1冊の本が完成しました。
本のタイトルは『やっぱ 足助 いいじゃん! 〜あかりのつながる 足助の町並みと暮らし〜』です。
この本は「Catalog Pocket(カタログポケット)」というアプリを通じて、パソコンやスマートフォンがあれば、全国どこでも無料で閲覧することができます。
※「音声読み上げ機能」「多言語自動翻訳機能」などが備えられ、バリアフリーにも配慮した仕様となっています(この本は、日本語の読み上げ対応あり)。
この本は、愛知県豊田市にある「足助の町並み」をテーマとして、足助の地域住民(重伝建地区選定10周年事業実行委員会)と行政(豊田市)の共働で制作しました。
愛知県豊田市にある足助の町並みでの人々の暮らしを伝え、より多くの方々にこの町並みの魅力を知ってもらいたいという、地域住民の想いが込められています。
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▶︎本の制作に至った背景について
2021年(令和3年度)は、歴史ある足助の町並みが国の重要伝統的建造物群保存地区(通称「重伝建」)に選定されて、ちょうど10年目を迎える年でした。
そこで、足助の地域住民を中心に構成する「重伝建地区選定10周年事業実行委員会」(以下「実行委員会」)を発足。
重伝建選定からこれまでの10年間の振り返りを通じて、足助の町並みの未来や今後の新たな取り組み、また、重伝建制度をこれからのまちづくりにどう活かしていくかなどについて、1年間かけて話しあってきました。
実行委員会のメンバーは、これまで足助のまちづくりの中心として携わっていた方々だけでなく、現役子育て世代や女性も多く参加していることが特徴です。
▼実行委員会のこれまでの活動実績については、コチラ
この実行委員会の活動を軸に、豊田市足助の「重伝建地区選定10周年事業」全体をとりまとめた事業報告書として、この本を制作することになりました。
▶︎本のつくり方とねらいについて
一般的に、行政でこの手の報告書をつくる場合、どうしてもお硬い内容になってしまうことが多いです。特に「文化財」という、より専門性のある分野においては、そういった傾向により一層拍車がかかってしまう現状があります。
一方で、地域住民の暮らしと密接に関わる「重伝建」という制度の理解をより広めていくためには、行政自らが意識的にハードル(難易度)を下げていく必要があると考え、いわゆる行政の報告書っぽくない、雑誌のように読みやすいデザインやライティングの本に仕上げることを意識した本の制作を行いました。
また、この度の1年間の活動を通じてさまざまなテーマで話しあってきた実行委員会の会議において、最も耳にすることが多かったのが「こどもが少なくなってきている」という、地域住民の切実な声でした。
こうした率直な地域住民の不安に少しでも応えられるように、この本をよくある周年記念誌的なものではなく、読者に「足助の町並みに住んでみたい」「足助の町並みに住み続けていきたい」と思ってもらうきっかけをつくることで、足助の町並みの未来をより良い方向へと進めていけるような内容の本にしたいと考えました。
そこで、現在足助の町並みでの暮らしを楽しんでいる子育て世帯6家族の取材記事をふんだんに盛り込むことにしました。そのページ総数は、本全体の約4割を占めます。取材対象となるご家族の人選については、実行委員会にてワークショップを行い、地域住民としてもオススメしたいと思えるご家族を選びました。
この10年来、足助の町並みの歴史ある建物に注目が集まることはあっても、そこに暮らす人々、特に若い世代や女性たちの想いについては、ほとんど調べられてこなかったように思います。
さらに、移住先を探してこの本に辿り着いた読者が足助の町並みのことをあまり知らなかったと仮定すると、少なくとも「いま現在、足助の町並みで暮らしている人自体が、魅力的に思えること」が、今後移住者を増やしていくために必要な条件にもなってくるかと思います。
そうしたさまざまな意味において、今回の新たな情報発信の取り組みが、地域課題の解決に向けた一助となれば幸いです。
さらに、今回6家族の子育て世帯に取材を行うにあたり、3名の実行委員には取材先でのインタビューや取材後の原稿作成を行う「市民ライター」として、本の制作活動に深く関わってもらうことになりました。
3名ともライティングの経験はないとのことでしたが、地域住民自らが行った取材だからこそ、取材を受ける側の地域住民の飾らない言葉や自然体の笑顔を自然と引き出すことができたように思います。
こうした地域住民間の取材と同時並行して、本全体の構成やレイアウトについても、実行委員会メンバーで話し合いながら、徐々に方向性を決めていきました。本のイメージを大きく左右するタイトルと表紙については、特に慎重に議論してきたポイントです。
地域住民もつくり手の立場となって、取材や原稿作成などにこれほどまでに関わってつくられた行政の報告書は、全国的にも珍しいケースなのではないかと思います。
実際にこの町に暮らしている地域住民との「共働」制作だからこそ、形式的ではない、真の足助の町並みの魅力が感じられる一冊となっています。
▼豊田市の「共働によるまちづくり」の考え方については、コチラ
▶︎今後の展開について
地域住民の想いが詰まったこの本は、紙媒体と電子媒体の2種類の方法で、いずれも無料で読むことができます。
仮にこの本を、全国各地の移住を考えている方々に読んでもらいたいと考えた場合に、印刷費用がかかり、発行部数にも限りのある紙媒体では、どうしても手に取る人が限られてしまうことが想定されます。
そこで、基本的には電子媒体を主軸としながらも、特にPRポイントとなるような場所や人には、集中的に紙媒体を配布・配架する展開を考えています。
また、今回の工夫のひとつとして、紙媒体の裏表紙にQRコード(二次元コード)を設けて、紙媒体から電子媒体への動線づくりを意識しています。
このことにより、紙媒体をお持ちの方を起点として、本の内容に興味をもってくれた方に電子媒体の閲覧をおすすめしてもらいやすいように、あえて本の裏表紙という、比較的目につきやすい場所にQRコードをレイアウトしました。
▼紙媒体PRポイント①:足助地域住民、足助まちづくり関係団体
まず、実行委員会メンバーが住んでいる足助自治区7町(西町、新町、本町、田町、宮町、松栄町、親王町)の全世帯(現在 577世帯)に、紙媒体を全戸配布します。
あわせて、豊田市足助観光協会や足助商工会などの足助のまちづくりに関わっている各種団体や店舗にも配布して、足元を固めます。
これまで、足助の町並み内の窓口や店頭などでお客さまに情報提供する資料として、ガイドマップなどのチラシは数多くありましたが、今回の本のように、地域住民の暮らしを伝える資料はほとんどありませんでした。
いま現在、足助に縁のある方々には、ご親戚、ご友人、お客さま、または移住を考えている方々などに、足助の町並みの良さを広く発信していくツールとして、この本を活用していってほしいと思います。
▼紙媒体PRポイント②:図書館
また、全国各地の図書館に配架して、幅広い方々に向けて、この本を読んでもらうきっかけをつくります。
一方、全国の図書館数は、公共図書館で約3,300、大学図書館も含めると約6,500(いずれも2021年度 時点)と少々数が多いため、配架先は豊田市内や愛知県内の図書館、また豊田市文化財課との繋がりのある図書館(特に市民が閲覧しやすい開架図書コーナーに本が置かれる想定ができる施設)を中心に、選定を行いました。
今回の本のように、紙媒体から電子媒体への誘導を考えた場合、図書館のような貸出返却の仕組みがある施設への配架は、相性が良いと思われます。
近年では、カフェやまちづくり団体などが運営する民間の図書閲覧サービスなども増えてきているため、順次新たな配架先の検討も進めていきたいと思っています。
▼紙媒体PRポイント③:移住支援施設
さらに、今回の本のテーマにもなっている「移住者を増やしたい」という地域住民の想いに応えていくために、この本を全国の移住支援施設に配備して、地方移住を考えて窓口を訪れた方々へダイレクトに情報提供ができる体制を整えます。
まずは豊田市との繋がりのある移住支援施設を起点として、人とまちの情報が相互に流れるネットワークをより強めていければと思っています。
現状、都市から地方への移住という点でいえば、首都圏にある勤務先に通える範囲の近郊か、ものすごく田舎の山里への移住という方々が多いようです。
その一方で、UターンやJターンなどのように、地元への帰郷をきっかけに、ある程度ゆかりのある場所へ移住する方々も、常に一定程度見込まれると思われます。
こうした要素に興味がある方々や、抵抗感の少ない方には、ぜひ一度この本を読んでいただき、豊田市の足助の町並みについて知っていただけたら幸いです。
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▶︎(参考)この本に関する取材や情報発信など【随時更新】
▼2022年6月20日 / 豊田市 報道発表資料・公式SNS
▼2022年6月24日 / 移住・定住促進サイト「ファースト暮らすとよた」
▼2022年6月27日 / 豊田市長 表敬訪問(豊田市足助 重伝建地区選定10周年事業実行委員会)
▼2022年6月29日 / 中日新聞(豊田版)
▼2022年7月1日 / 矢作新報
▼2022年7月13日 / 地方移住応援webマガジン「Furusato フルサト」
▼2022年8月1日 / おいでん・さんそんセンター『おいでん・さんそんSHOW』
▼2022年8月3日 / ニッポン移住・交流ナビ JOIN
▼2022年8月4日 / 読売新聞(東海版こども新聞)
▼2023年1月10日 / 全国伝統的建造物群保存地区協議会(伝建協)
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