遺品整理の生前予約の問題点と解決策としての死後事務委任契約について
遺品整理現場での知っ得シリーズ
遺品整理の生前予約ってできるの?
本日は、遺品整理の生前予約の内容とその問題点。生前予約の際の問題点を解決するのに非常の役に立つ死後事務委任契約についてのお話しです。
終活が話題になる昨今、生前整理や遺品整理の生前見積りなども注目を集めるところではありますが、どのように準備しておけばいいのかを、まずは簡単に解説していきます。
遺品整理の生前予約ってどうなの?
終活ブームが起こって久しい昨今、「死」というワードが忌避されるイメージばかりでなく、どのように自分の最後を迎えるのが良いのかを考える「自分の終い方」を前向きに考える方が増えてきています。
遺品整理の場面でも「生前見積り」や「生前予約」また、遺品整理で家族が困らないようにする為の「生前整理」などが注目を集めています。
生前整理はご本人が元気な内に自分の意思で整理していくことですので、これは問題ないですよね。家族にとっても大助かりで是非やりましょう!と私も勧めるところです。
では、遺品整理の生前見積りや生前予約とはどのような物なのでしょうか?
自分が死んだ後にどのように進んでいくのか、見積りだけとって安心されている方が結構沢山いらっしゃいますので、注意点も含めて書いておこうと思います。
生前見積りをしただけで安心してはダメ!
遺品整理各社において、生前見積りという形で、「もし私が死んだら遺品整理に掛かる費用はいくらだろう」という内容の見積りは作成してくれます。
また、その見積りに従って生前予約として、予め契約を結ぶことを進めてくる業者もいるかもしれません。
ただ、注意をして欲しいのは一般的な遺品整理業者が行う「生前見積り」や「生前予約」だけでは実際にご本人が亡くなった後に作業が実際に行われるのかどうかは不確定だということです。
遺品整理の生前見積りや生前予約をされた方ならお分かりになるかもしれませんが、一般的な遺品整理業者が行う生前見積りや生前予約では、今現状のお部屋の整理をするにはいくら掛かるのか?
という内容での見積もりを作成して、恐らく多くの業者さんが、「では、この見積りをご家族の方にも確認してもらって、万が一の時には当社に連絡をして頂けるようにお願いしておいて頂けますか」という流れかと思います。
つまり、自分に万が一の事があった場合に家族には「どこの遺品整理業者にいくらで見積りを取ったのか」また、「事前に料金の支払いをしているのかしていないのか」をしっかりと伝えておかないといけません。
さらに、遺品整理の生前予約や生前見積りといったものは通常、ご本人さんが元気なうちに遺品整理業者に依頼して作成しているはずです。
ですので、実際のその生前見積りや生前予約が効果を発揮する、端的に言うなら依頼者が亡くなるまでには見積りや予約をしてから何年も後になるケースは珍しくはありません。
ただ、そうした状況を見越して悪徳な遺品整理業者は「ご家族に迷惑を掛けないようにお支払いも先に済ませておくこともできますよ」という案内をしてくるところもあります。
もちろん、事前に支払いを済ませておくことが悪いわけではありませんが、遺品整理業界は非常に新規業者が乱立している業界でもありますので、今日依頼した遺品整理業者が明日には無くなっていたとしても不思議ではありません。
そんな中で数十万もの大金を事前に支払うのは非常に危険な行為ともいえます。
ですので、生前見積りや生前予約を取るのは大事ですが、支払いは実際に作業が完了してから支払うことができる遺品整理業者の方が安心ですね。
生前見積りの内容を家族が知らないケースも沢山ある
遺品整理の生前見積りや生前予約をして安心してしまい、自分の家族にその内容を伝えていないという方も結構います。
一昔前にはやった自分の葬儀を挙げる為の「互助会制度」。互助会組織に金銭を積み立てて自分の葬儀の時には割安で葬儀を行えたりする制度ですが、この互助会に加入している事を家族が知らないことが結構あります。
むしろ故人が互助会に加入していたことを知らない家族の方が多いんじゃないの?と実際に遺品整理作業をしていると感じたりします。
遺品整理の現場ではいろいろな葬儀業者さんからの紹介でお客様のもとへ伺うことがありますが、遺品整理で貴重品の捜索をしていると互助会のバインダーやファイルが出てくることがよくあります。
特に高齢者の方のお部屋の整理などをしていると互助会に加入しているケースも多いのですが、その掛け金を支払っている葬儀業者と紹介をもらった葬儀業者さんが異なっていることが非常に多いのです。
つまり、長年掛け金を支払ってきていたのに、いざ自分がその役務(サービス)の提供を受けようと思っても、家族が別の葬儀業者に葬儀を依頼してしまって、いままで掛けてきた掛け金がなんの意味もなさなかったというケースが非常に多いのです。
しかし、家族としても葬儀の手配やなんやかんやで慌しい中、わざわざ故人が互助会に加入していたかどうかを調べる余裕などもありません。
それこそ元気な内に「私は互助会に入っているので、私の葬儀はそれを利用してね」と家族に伝えておかないとお金はもちろん、家族に迷惑をかけないようにと思ったその心遣いすらも無駄になってしまいます。
もしかしたら「なんだよ互助会になんか入っていたのか、金を無駄にしたじゃないか!」と怒られてしまうかもしれません。
これと同じような事が生前見積りや生前予約で起きることがあります。遺品整理の費用については作業完了後に支払う業者を選べば済みますが、通常、遺品整理の生前見積りの場面では、遺品整理を行う際の希望を確認します。
例えば、「仏壇や家系図などはどうしたいか」「仏壇の魂抜きはどの宗派で行うのか」「写真などは誰に渡すのか、それとも処分するのか」「形見として貰ってもらいたいものはあるのか」「費用はいくら位で行いたいのか」などなど、依頼者の方の希望の聴き取りを行います。
生前見積りや生前予約の利点はここに集約されているとも言え、本来は家族が遺品整理業者を選び、予算を捻出し、故人の思い出をどのように整理するのかといったことで頭を悩ませて決めていくところ、遺品整理される側の故人が事前に決めておいてくれる。
遺族にとってこんな楽な事ははないですよね。人によっては写真一枚ですら処分するかどうかで悩まれるご家族もいますので、慌しい中でそういった事に頭を悩ませなくて済むというのは非常に家族にとっては助かるものです。
でも、せっかく自分自身で準備をして家族の為にいろいろと手を打っておいたのに、いざ、蓋を開けてみるとそれらの大事な事が家族に伝わっていなかったということが結構あります。
生前見積りや生前予約をしていても、当の家族がそれを知らない、またはそんな事をしていたなとは判っていても実際に依頼していた遺品整理業者がどこなのかが判らないので、結局自分達で一から手配しなおさなければいけないとなってしまっては、せっかくの準備が無駄になってしまいすよね。
ですので、生前見積りや、生前予約をしたのならば必ずそれを家族に伝えておく必要があります。
また、一度伝えたからと言って安心してはいけません、先ほども言いましたが、生前見積りや生前予約をしてから、実際に事が起きるまでは数年掛かることが一般的です。
そうであるなら、遺品整理の生前見積りや生前予約をした時に家族に族伝えていたとしても、数年後には家族の記憶も薄れ、結局どこに依頼したのかわからなくなってしまったということになりかねませんので、必ず後から思い出せるような準備をしておく必要があります。
遺品整理の生前見積りや生前予約をしたなら必ず家族に伝わる準備を!
遺品整理の生前見積りや生前予約をした場合にその内容を家族に伝える方法としてはいくつかありますが、最近は「エンディングノート」という便利な物が書店にいけば必ず売っています。
エンディングノートには自分史や葬儀の希望、家系図、連絡をしてもらいたい友人、知人など色々な事を書くことができますが、この中に遺品整理の生前見積や生前予約の事を書いておき、見積書や契約書を一緒に挟んでおくのもいいでしょう。
もちろん、そのエンディングノートがどこにあるのかが判らないとなってしまうと本末転倒ですので、必ず家族にエンディングノートの存在や保管場所については伝えておいてくださいね。
「もし、私に何かあったらこれに全て書いてあるからみてね」といった感じで伝えておくということですね。
エンディングノートに遺品整理に関する要望や見積り先企業などを記載しておけば、いつでも見直すことができて、例え、遺品整理の生前見積りや生前予約をしたのが数年前であったとしても、エンディングノートを確認すれば、本人の希望がしっかりと確認できるので安心です。
遺言書の積極的活用!
近年は終活ブームもあいまって「遺言書」を準備される方が増えてきています。それでも以前に比べて増えたというだけで、欧米諸国に比べれ相続の制度に違いもあり、まだまだ低いと言わざる負えません。
しかし、これは裏を返せば遺言書がなくてもなんとかなってきていた日本国民の気質の柔らかさを表してもいるのでしょう。
ただ、近年は家族制度の崩壊と権利意識の定着から相続争いも頻繁に起きていますので、やはり今後は遺言書などの法律的書面で自分の死後の事を決めておくことが、自分はもとよりご家族が相続で争うような事態を防ぐ意味でも必要となる時代かと思われます。
遺言書、特に公証人に作成を依頼する「公正証書遺言」なら遺言書は公証役場にも保管されていますので、たとえ本人が控えを紛失していたとしても「公正証書遺言がある」ということさえ判っていれば、家族は容易に遺言書を確認することができます。
また、公正証書遺言の他にも自筆証書遺言を法務局で預かってくれる公的サービスも始まりました。
低額の費用で安全に遺言書を保管することができるようになりましたので、こちらを利用することで自筆証書遺言の保管の心配はほぼ無くなることでしょう。
遺言書には財産関係の事はもちろん、法律的な効果はないですが、「附言事項」として自分の葬儀や遺品整理などの希望を書くことができます。
遺言書に書くことで、財産関係はもとよりその他の希望を附言事項として家族に伝えることが可能ですので、積極的に活用していきたいですね。
注目されつつある「死後事務委任契約」について
自分の死後の手続きをより確実に準備しておきたいというのであれば、近年のおひとり様や単身者の増加を増えて注目されつつある「死後事務委任契約」の作成をお勧めします。
死後事務委任契約は、自分の死後の手続き、例えば「遺体の引取り」「葬儀、喪主の代行」「遺品整理」「未払いの医療費の清算」「家屋の処分、引渡し」といった、これまでは家族が行ってきた死後の手続き(死後事務)を、生前に信頼できる方に依頼しておくという委任契約です。
長生きのリスクではありませんが、長生きすればする程、自分の身近な家族が先に亡くなってしまい、自分が死んだらいったい誰が葬儀を挙げたり、遺品整理などの死後の手続きをしてくれるのだろうか?不安を抱えていらっしゃる高齢者の方が沢山いらっしゃいます。
また、家族にはなるべく負担をかけたくないとの思いから葬儀や難しい手続きについては事前に自分で死後事務委任契約にて第三者に依頼しておき、家族の負担を減らそうとされる方も増えてきています。
そうした方々に非常に便利なのが「死後事務委任契約」であり、これを事前に準備しておくことで、遺品整理に限らず、自分の葬儀や公共料金の支払いなど心配事の全てを事前に信頼できる方へ依頼しておくことができます。
また、遺言書の附言事項とは異なり、依頼を受けた側にも法律的な義務が発生しますので、希望内容を叶えるという意味では非常に実現性の高い制度でもあります。
遺言書はもともと財産関係の処分をどうするのかという面で作成される書面でありますから、財産以外の処分についてはあくまで本人の希望を伝えるだけとなり、またいくら附言事項に書けるからといって、遺言事項以外の内容を大量に書くのには向いてはいません。
もし、自分の死後の手続き(死後事務)に関して遺言書では書ききれないような細かな内容があり、また確実にその内容を実現したい場合は死後事務委任契約を事前の結んでおくことをお勧めします。
死後事務委任契約については当サイトの「死後事務委任契約について」または死後事務委任契約を専門に扱っています「一般社団法人死後事務支援協会」のサイトをご確認ください。
遺品整理・死後事務に関するご相談は第八行政書士事務所へどうぞ!
第八行政書士事務所は遺品整理・死後事務専門行政書士として、遺品整理の見積りから実際の作業まで国家資格を有する行政書士が行っています。
近年増加している賃貸物件での事故物件の遺品整理から、終活の場面で必要となる遺言書や死後事務委任契約書など、死後の手続きに特化した行政書士事務所ですので、死後の手続きで不安な事があればなんでもご相談くださいね。
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