遺品整理で見つかった無効な遺言書が死因贈与へ大変身!?
遺品整理現場での知っ得シリーズ
今回は遺品整理現場で見つかる無効となってしまう遺言書の知られていないお話し。
先日遺品整理が無事が終わり、遠方から来られていたご依頼者を名古屋駅まで送っていた時の話しです。
今回の遺品整理を通して、「こりゃ自分たちもしっかり考えなあかですは」とご依頼者の方と遺品整理あるあるな感じで、私が過去に経験した遺品整理現場の話しなどで盛り上がっていた際に出た話題。
遺品整理で遺言書が見つかったらら?見つかった遺言書が自筆証書遺言で方式に違背するような遺言だったらどうなるの?という話しをしていました。
遺言書は「要式行為」とされ、法律で定められた方式に則り作成しないと「無効」となるものです。
ですので、遺言書を作成する際には専門家が方式違背となる心配がない公正証書遺言を勧めているわけです。
ただ、公正証書遺言は費用や証人の確保など自筆証書遺言に比べてハードルが高いと思われることも多く、そこまで大きな財産がある訳でもないとご自身で考えているようなケースですと、本屋さんで「遺言書の作り方」と題された本を読みながら自筆証書遺言を作成されるという方も多いのではないでしょうか。
そうした自筆証書遺言の作成で怖いのが先ほどから述べている方式違背になっていないかどうかです。
自筆証書遺言の基本的な要件としては、全文自筆、署名、捺印、日付の記入で、遺言書の記載内容の訂正の仕方も厳格に定められています。
※ 民法の改正により財産目録に関しては自書の要件は緩和されました。
ですので、これらの要件を満たしていない遺言書は「無効」となるのですが、では、遺品整理などでこれらの要件を満たしていない無効な遺言書が見つかったとしたら、すぐに処分してしまってもいいのか?という問題があります。
言い換えるなら、方式に違背している無効な遺言はなんの法的効力も持たないただの紙切れとなってしまうのか?ということです。
法的効力を考えなければ、少なくても故人の意思を知る手がかりにはなりますよね。
場合によっては、遺言書ではなく家族などへ宛てた遺書としての効果は十分あるわけで、これだけでも、遺品整理中に見つかった遺言書というのは疎かにしていいものではないとわかります。
では、法的な効力は全くないのか?というと、実はそうでもないというのが今回の本題。
確かに方式に違背している遺言書は遺言書としては無効となります。しかし、遺言書の内容をみると死因贈与契約の成立が認められるケースがあります。
例えば、故人が生前に相続人のひとりに「この土地はお前にやるからな」と伝えており、その相続人も「わかったよ、先祖からの土地は俺が守っていくから安心して!」などのように承諾していたような場合に、故人がそれと同様の内容の遺言書を作成していたというケース。
こうした場合、遺言書が方式に違背し無効だとしても死因贈与契約が有効に成立している可能性があります。
なぜなら、死因贈与は贈与者(故人)の死亡を停止条件とする贈与契約であり、遺言書のように要式行為ではないため、贈与者(故人)と受贈者(財産をもらう人)との間で贈与の合意さえあれば有効に成立するものだからです。
ただ、注意が必要なのは、明示・黙示は問いませんが受贈者の承諾が必要という部分で、少なくても遺言書の内容について受け取る人が故人の生前に当該遺言書の内容を知っている必要があり、遺品整理の際に初めて遺言書の内容を知ったというような状況では死因贈与契約の成立は認められないと考えられています。
いずれにしても、遺言書と思われる書面などが見つかった場合は遺言書としては無効だからと軽々に判断して処分してしまわないように注意しましょう。
もしかしたら、遺言書としては無効でも別の効果のある書面になっている可能性がありますので、判断に迷ったらお近くの専門家に相談してみてくださいね。
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