エンディングノートと死後事務委任契約具体的に何が違うの?
本日は終活の代表とも言える「エンディングノート」と「死後事務委任契約」の違いについての話しです。
先日こんな質問を頂きました。「エンディングノートと死後事務委任契約って何が違うの?」というものです。
エンディングノートについては最近良く耳にするようになってきていますよね。
自分の半生や死後の希望、財産の保管場所や交友関係などを書いておき、家族や相続人が困らないようにする為に利用される、必要な事柄が印刷されてノート形式になっているものです。
書店なんかでも必ずといっていいほど置いてある定番の商品となってきていますよね。
では、死後事務委任契約はどうでしょうか?まだまだ一般的と呼べるには程遠い認知度しかない言葉ですが、内容としてはエンディングノートと同様に死後の希望を実現するためのものとなります。
この二つは生前に自分が死んだ後の希望を書いてあるという意味で非常に似たものではありますが、その性質や効果は全く異なったものでもあります。
まず、一番の違いは「法律的な効果があるかどうか」ということです。エンディングノートは自分のこれまでの人生を振り返って楽しかった思い出や家族へのメッセージ、そして財産の保管場所や葬儀の希望などを記載するケースが多いですが、いずれも法律的な効果(本人の希望を家族へ強制する効果)はありません。
法律的な効果が何かといえば、その記載された内容に誰かが拘束されるかどうかと考えてもらえば分りやすいかもしれません。
例えば、遺言書。有効な遺言書は財産の分割方法において相続人を拘束していますよね。
有効に成立した遺言書は例え相続人の一部がその内容に不満を持っていたとしても、遺言の内容と異なった財産の分割はすることができません。つまり、相続人を拘束する法律的な効果があるということになります。
しかし、一般的なエンディングノートには法律的な効果はありません。なぜならエンディングノートに求められているのは家族へのメッセージ(手紙)機能だったり、財産の場所や交友関係を知らせる機能があればよく、そこに誰かを拘束するような法律的な効果は必要とされていないからです。
エンディングノートの役割としては自分の死後に家族に伝えたいことを過不足なく伝えられればそれで良く、面倒なことなく、お手軽に準備できるからこそ利用価値があるわけです。
でも、法律的な効果がないということは必ずしもエンディングノートに記載した内容が実現されるとは限らないということです。
例えば、本人は釣りが趣味で自分の遺骨は海に散骨して欲しいとエンディングノートに遺骨の扱いについての希望を記載していたとしても、家族が散骨に反対した場合は普通にお墓に埋葬されてしまうこともあるというわけです。
ですので、ある意味エンディングノートは家族を信頼して、エンディングノートに書いておけば家族がその希望を叶えてくれるだろうという家族を信頼した上で用意しているものといえます。(もちろん、エンディングノートを作成するに併せて自分の希望を事前に家族に伝えておくということも大事です。)
ですので、おひとり様や家族がいても頼れない、頼りたくないといった方には自分の死後の希望を叶えてもらうといった意味では利用価値は低いかもしれません。(財産の保管場所などで遺産整理をしてくれる方に迷惑をかけないようにといった意味はあります。)
では、エンディングノート、特に自分の死後の希望を叶える部分に法律的な効果を持たせるにはどうすればいいのか?
葬儀の方法やお墓の希望、遺品整理や未払いの賃料や入院費用の支払いなどを確実に行ってもらうにはエンディングノートでは心もとない。何かいい方法はないのか?
こういった要望に応えるのが「死後事務委任契約」というわけですね。死後事務委任契約は死後の事務手続きを信頼できる第三者に生前に依頼しておくという契約行為です。
委任契約ですから、その委任を受けた第三者(受任者)は依頼者の要望を叶える為に行動する義務が発生しますので、エンディングノートでは不確かだった実現可能性を高めることができます。
ただ、契約行為となりますので、いくつかエンディングノートにはない面倒な部分も出てきてしまいます。
まず、相手方が必要となります。エンディングノートは一人で準備できる単独行為でありますが、死後事務委任契約は委任契約となりますので、委任内容を実現してくれる相手方「受任者」が必要となります。
次に契約書が必要となります。エンディングノートは本屋さんにいけば手に入りますが、死後事務委任契約は契約書面となりますので本屋さんでは売っていません。一般的には士業と呼ばれる人達に依頼して作成してもらうことになるでしょう。
※ 判例上、死後事務委任契約は書面によらなくても成立するとされていま
すが、実務上は当事者の委任内容を明確にするために書面にしておくの
が一般的です。
さらに、費用の面でも異なります。エンディングノートは数百円~数千円で本屋さんで購入できますが、委任契約書を専門家に依頼した場合は数万円程度の費用が掛かります。(公正証書にする場合は公証人への報酬も発生します)
このように書くとエンディングノートの方が優れているかのように思えますが、先ほども書いた通りエンディングノートには法律的な効果がありません。
要は自分の置かれている状況と実現したい内容を考えた場合にエンディングノートで実現できる範囲ならエンディングノートを選べば良く、おひとり様や家族間の関係でエンディングノートでは希望の実現が難しいと考えるなら多少面倒でも死後事務委任契約を選択することで確実に死後の希望を実現できるようになるということです。
遺品整理や死後事務に関するご相談は名古屋の第八行政書士事務所までどうぞ~。
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