見出し画像

ビジネスパーソンのための交渉術③

こんにちは、ビジネスエッセイを発信している松永隆です。
本記事は、拙著『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 日本人の交渉のやり方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、編集したものです。

準備が結果を決定づける

日々私の職場で見ていると、取引先となんとなく交渉を始めてしまう人が少なからずいます。その結果交渉の途中で相手に追い詰められ、自分で解決策を見出せずに相談に来るケースがよくありました。明らかな準備不足です。

この章では交渉前の準備でつぶしておくべき要素を一つひとつ解説していきますが、如何に準備が大切か認識して頂ければと思います。準備の優劣で交渉で得られる結果は既に決まっていると言っても過言ではありません。十分な準備なしに良い結果は得られないのです。

交渉相手を選ぶ―実質的決定権を持っているのは誰か?

よくあることですが交渉相手が適切でないことで時間を無駄にしてしまうことがあります。具体的にどういう事象なのでしょうか?

相手先とある事業を協力してやろうと交渉が始まり、こちらからきちんと条件を提示しているのに待てど暮らせど返事が来ない場合がその予兆です。返事をプッシュすると「これからボスと相談するので待ってほしい」とのこと。「わかった。それでは今週末までに返事が欲しいのでよろしく」と言い残し、待っていてもまた返事なし。翌週またコンタクトするとボスが出張に行ってしまったのでまだ返事ができないとの反応。

この時点で疑わないといけないのは、この担当者がその事業を協力してやろうと言っているものの、そのことが実はその上司あるいは組織としてまだ認められていないのではないかということです。この時点でかなりの時間と手間を無駄にしてしまっています。組織対組織の交渉の場合、先方の組織の中で実質的決定権をもった人物と交渉するのがベストです。

ここで注意すべきは「実質的」の意味です。必ずしも職掌的に決裁権を持っている人物という意味ではなく、ある程度の権限を持たされて、その事業の中心にいて推進している人物であればいいわけです。

つまりその事業のエンジンになっている人物と言えばわかりやすいでしょうか? 交渉を始める前にそのエンジンたる人物がわかっているのがベストです。相手先と既にお付き合いがある場合は比較的容易にそれがわかるはずなので、確かめておくことが大事です。

一方、初めての取引先の場合、最初はわからない場合もあるでしょう。そういう時は、とりあえず先方の窓口となる担当者と交渉を始めながら、その担当者とのやり取りを通じて決定権を持っていそうな人物を探り出していく必要があります。おおよその目星がついたら先方窓口担当者に頼んで、打ち合わせついでにその人物に挨拶に行く、あるいはオンライン会議に引っ張り出すなどして、そのエンジンとなっている人物と直に接触することにトライすべきです。

直接話すことにより、その人物の人となり、組織内の立ち位置、その案件に対する真剣度、最終決裁者は誰なのか、あるいは窓口となっている担当者と実質的決定権を持つ人物との関係など大量の情報を得ることができるはずです。また実質的決定権のある人物と直に話すことにより先方組織内でもその案件に関する役割分担の体制が整理されることも時々あります。

ここで一点気をつけなくてはいけないのは、窓口となっている担当者の顔をつぶすことがないよう気を配り、尊重しつつ、決定権がありエンジンとなっているその人物とのパイプも構築することです。交渉が進むにつれて右記の仕掛けによって得られた情報が効いてくるものです。例えば交渉が暗礁に乗り上げた時の突破口となるアイデアはこれらの情報の中から出てくることがよくあります。

また、窓口担当者との交渉がどうもスムーズに進まない場合は、実質的決定権を持つ人物を引っ張り出して打開するという打ち手も可能になります。組織間の交渉においては交渉の進捗とともに先方組織内でどのような話がされてどのような変化が起きているのかを想像しながら進めていくことが大事です。

それにより、いろいろなヒントが得られるはずです。例えば交渉が暗礁に乗り上げそうになった時は、どのボタンをどのように押せば局面を打開できるかなどのヒントです。

このように実質的な交渉相手が相手組織の中の誰なのか把握すること、これは大変重要な要素であることを肝に銘ずるべきです。例え先方組織の都合上、実質的決定権を持つ人物と直接やり取りできない場合でも、常にその人物を意識して自分たちの意思がその人物にきちんと届いているかどうか、届いていたらその人物がどのような反応を示したのかを常に探っていく必要があります。

また節目節目に、その人物と直接やり取りする機会をうまく作り出していくことも必要です。


※続きに興味のある方は以下のリンクからご購入頂けると幸いです


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?