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ビジネスパーソンのための交渉術①

本記事は、拙著『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 日本人の交渉のやり方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、編集したものです。

日本人が何かと「曖昧な返事」をしてしまう「二つの原因」


交渉は何のためにするのか?

そもそも交渉は何のためにするのでしょうか?

・自社の利益を確保するため

・当事者の権利と義務を明確にするため

・当事者の利害調整のため

・トラブルが起きた時の解決の基準を決めておくため

等々いろいろ考えられます。

交渉を定義してみる

私の三十数年に及ぶ交渉の履歴を振り返ると、交渉の目的は以下のように定義できると思っています。

交渉とは、複数の当事者が協力して円滑に事を進めてお互いに何がしかの成果を得るために行うもの。具体的にはその目的を達成するため、お互いの役割分担とそれに伴う権利と義務をあらかじめ設定するために行うもの。

単純化すれば共同戦線を張るための枠組み作りと捉えればいいのではないでしょうか?

つまり、交渉妥結が終着点ではないのです。新しい協力関係がそこから始まるのです。

ところで、交渉というと何かを勝ち取るために交渉相手と戦うという印象を持つ人がいるかもしれません。

しかし、交渉をまるで勝負事のように捉え、関係構築の初期に、勝った負けたで相手に悪い印象を持たれたらどうなるでしょう?

その後協力して目指すべき成功の阻害要因になってしまうのではないでしょうか?

交渉により曖昧さを排除し、トラブルを防ぐ

日本の社会は海外諸国との比較で言えばかなり特殊な社会です。

ビジネスを行う場合でも「わざわざそんなことまで言わなくてもわかっているでしょ」的なアプローチをする場合がよくあります。

常識的にわかっていることは暗黙の了解であえて確認しないという社会です。

これは国内のビジネスにおける効率性という意味では非常に大きなメリットです。

一方、海外との交渉だとこれが大きなリスクになりかねないことは肝に銘じておくべきです。

日本ではよく「言った、言わない」でトラブルになるものの、その後の話し合いで業界慣習なども加味し、なんとなくどちらかあるいは両方が譲歩して丸く収まることが多いのです。

ところが、海外との交渉ではなかなかそうは行きません。
そもそも書いてないことは合意事項とはみなされないと言っても過言ではありません。

従い、「ああ、書いてなかったね、それではどういうふうに契約の補足事項に入れ込むか話し合いましょう」と零地点まで遡って交渉しなければなりません。

当然それによって目論んでいた経済的な損得も変わってきます。

私の場合、部下の若い人たちに海外との交渉をしてもらいますが、観察しているとどうしても曖昧な部分をはっきりとさせずに次の話題にいこうとするのをよく見かけます。

「何でそこを曖昧にするの?」とつい詰問調になってしまうのですが、日本人の傾向として、そうなるのには二つの原因があるように思います。

一つはそこまではっきり言うと相手が気分を害すのではないかという変な遠慮をしている場合と、二つ目は「そこまで言わなくても相手もわかっているでしょ」という甚だ都合のいい解釈をする場合です。

そういう時に私は、「今のところ先方はちゃんと理解していないぞ。相手の表情を見ていればわかるでしょ。戻ってはっきりさせなさい!」と横から言わざるを得ないのです。

これはビジネス上大きなリスクと言わざるを得ません。さらに一つ目の変な遠慮をするのはどちらかというと20代、30代の日本の若い人に多いように思えます。私にとっては要警戒ポイントなのです。

ところで、このような交渉の末、契約書ないし合意文書に書き残すのは、欧米は契約社会だからという解釈が一般的です。

しかし、私はそういうことではないと思っています。価値観を共有し、皆がある程度きめ細かいのが普通の社会は日本以外にはほとんど存在しません。他国はどこも日本人的価値観から見たら超いい加減でありながら、それでも社会が廻っているのです。

そんな中で、お互い人種、宗教など文化的背景も違い、考え方も違う者同士が取り決めをしようとしたら、書いて証拠を残すしかないのです。

アジア諸国、中東諸国とのビジネスもそうやって成立させていく他ないのです。

「欧米は契約社会だから」という紋切り型の解釈はそろそろやめた方がいいと思うのですが如何でしょうか?

もちろん日本国内のビジネスにおいても、最低限経済的な事項、その他のインパクトが大きい事項は、[取り決めとしてきちんと書き残す]という習慣が求められるのは言うまでもありません。


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