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すぐに役に立たないものは評価できない?

私がインタビュー記事を寄稿させていただいている『しごとば劇場』のインタビューの中で、「客家(はっか)の法則」について教えていただいたことがありました。

中国の漢民族に客家(はっか)と呼ばれる一族がある。その客家の教訓に「隣人に親切にしてもらったその分、別の隣人に親切にしなさい」というものがある。

例えば、隣の人からプレゼントを貰ったとする。そのお返しを、プレゼントをくれた人に返すのではなく、別の隣の人にプレゼントする。そうすることで、巡り巡って、また自分に返ってくるという考え方だ。

Give and Takeであれば、見返りが前提なので一定の成果が期待できますが、客家の法則は、返ってくるかが分からないものなので成果は期待できません。

「善い行いは巡って自分に返ってくる」ことを理解していても、それはビジネスの中でどれだけ通用するでしょうか?

今回は、すぐに役に立たないと思われていたものを、私の実体験からいくつかピックアップし共通点を探すところから始めたいと思います。

すぐには役に立たなさそうで評価されていないもの

①大学の文系学部
2015年、文部科学省が「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」という通達の中で「特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、・・・組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」と記載し物議を醸しました。

実際に、私も某大学の文学部は廃止になるという噂を聞きました。調べたところ現在は廃止になっていないようでしたが。

今年も通達が出ていたので調べたところ「特に、データサイエンス等の基礎的な素養を備え、・・・文理を越えた基盤的なリテラシーとなる数理・データサイエンス・AI教育を全ての学生に展開していくことが重要である」と、基盤はやはり数理とのことでした。

AI・DX・ロボティクス等、経済を動かしているのは理系のように見えます。
まだ語学や経済はすぐ仕事に活かせそうですが、例えば私が大学で学んだ日本史は、仕事に直結するものではないです。実際に「何の役にも立たない」と言われたこともあります。

ここで評価されているのは、すぐ仕事に役立つスキル=お金になるスキルなのではないかと考えました

②バックオフィス業務
今はバックオフィスも大事な機関だと思ってもらえることが多くなりましたが、それでもたまに「バックオフィスは言われたことを淡々とこなせばいい」と思われていると感じることがあります。

売上を作る営業部門と売るモノを作る生産部門は、成果が売上に直結しやすいです。さらに、その成果は定量的に測ることができるので、経営陣から見て管理がしやすいように見えます。

一方で、バックオフィス部門の成果は売上に直結するものではないものがほとんどです。営業利益に貢献するために業務・モノ・ヒトを”削る”ことを考えます。
成果は定量的より定性的なものが多く、成功よりも失敗しないことが求められているので、評価がしにくいと思われているかもしれません。私がどれだけ頑張っても営業より評価されることがなく、悔しい思いをしたことがありました。

やはりここも、すぐに売上に貢献できる(お金になる)部門が評価されているのではないかと考えました。

③感情的サポートをするGIVER
まずはGIVERについてご説明します。

GIVER:ギブ・アンド・テイクの関係を相手の利益になるようにもっていき、受け取る以上に与えようとする人のこと
TAKER:常に、与えるより多くを受け取ろうとし、自分の利益を優先する人のこと
Matcher:与えることと受け取ることのバランスを取ろうとする人のこと

ーGIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代|アダム・グラント著

GIVERにも2種類あり、評価されるGIVERと評価されないGIVERが存在するようです。

評価されるGIVERは、相手の利益はもちろん考えますが、自分の利益も忘れていないです。逆に評価されないGIVERは、自分の利益を二の次にしすぎてTAKERの食い物になっていると感じます。

私の周りで評価されないGIVERがいます。社員一人ひとりに向き合う人事で、体調やモチベーションの変化にもよく気が付くので、社員から慕われていて、プライベートな相談もよくされている人です。ですが、その行動を自分の利益のためだけに利用しようとする人にも目を付けられ、最悪の場合はGIVERのメンタルが落ちてしまいます。
GIVERの行動は社員を救っているのですが、定量的に測ることができないので、評価されていませんでした。

全ての会社が同様ではないかもしれませんが、定性的な成果より定量的な成果を出す人の方が評価されているように感じます。

「ビジネスで評価されるもの=定量的なもの」では思考停止ではないか?

私の実体験からピックアップした3点は、不必要ではないけどすぐに成果が出るものではありません。「評価をされない」は言い過ぎにしても、評価は後回しにされがちではないでしょうか?

技術の進化速度は速いので、世界に置いていかれないように最新技術を高めていくことは大事なことでしょう。
売上が無ければ会社が存続しないので、売上に直接的に繋がること、経営判断がロジカルにできる(と思われる)定量的なことを評価することも大事なことでしょう。

しかし、技術を生み出すのも会社を作るのもヒトです。ヒトは定量的なことだけで動いているのではなく、むしろ定性的なことが原動力になったりもします。

定性的なことを評価して今後を判断することは、数字を読むことよりもロジックが組みにくいと思います。そもそもロジックではなく感性に従うものかもしれません。
自分の感性に従って判断をする責任が重いから、定量的なことに逃げてしまっているのではないのかなと思うことがあります。

客家の法則は、善い行いをしたからといって必ず自分に返ってくるとは言えません。ですが、善い行いをすることで目の前の人は喜んでくれます。
根拠が定量的なことにしろ定性的なことにしろ、判断をするという行為は確実に自分を成長させてくれます。

ダメだったらどうしようと考えるのではなく、どんな行動もいいことに繋がると思える余白を持ちたいと思いました。

今回はここまで!次回をお楽しみに。

◆◇しごとば劇場◇◆
会社の数だけストーリーがある
経営者と社員の物語


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