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Be honest

ねえお⽗様。私あの王⼦様と結婚したい わ。
だって⾒てください、あの凛々しいお 顔と正義感
溢れる佇まいを。
ああ、あの⽅が私に微笑みかけてくれたならどんなに嬉しいか。
いいえ、気にしませんわ。私たちの国 より弱いことなど。
きっと、⼩さくても毎⽇が楽しいでしょう から。
ねえお⽗様、約束してちょうだい。私 の初恋を、叶えてくださることを。

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とある⼩さな王国に、残酷で⾦遣いの荒い王妃がいました。
王妃は男性ばかりの賭け事やファッションに膨⼤な量のお⾦をつぎ込み、それはそれは贅を尽くした⽣活を送っていました。
また彼⼥に逆らった者は皆ことごとく処刑されるため、誰も⻭向かう者はありませんでした。

⾝勝⼿な振る舞いをする王妃に、国王は頭を悩ませていましたが、彼⼥の出⾝は隣国 の強⼤な王国です。もし故郷に帰られでもすれば、それこそこの国にとっては存続の危機であったため、王ですら何も⾔えませ んでした。

そうして、⼆⼈の仲はとても冷たいまま でした。

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ある⽇、王が外交を終えて国へ帰ろうとしていた時です。
⼀⼈の村⼈が、突然⾺⾞の前に⾶び出してきました。
王が⾺⾞を降りて事情を尋ねると、村⼈は涙ながらにこう訴えました。
「どうか、どうか⺠をお救いください。王様がいない間、 国をまとめるはずの王妃様は、どこかへ ⾏ってしまわれました」
「城が空いていることをいいことに、 町では犯罪が横⾏しております。 善良な⺠が、苦しんでいるのです」
王はすぐに王妃を探させ、呼び戻しまし た。
王妃のすることに邪魔をするのは、結婚して初めてのことでした。

何故か頬を紅潮させて現れた王妃を、王はすぐに叱りました。
「ずっと⾔いたかったことだが、 君は我儘が過ぎる。どうして、そんな振る舞いをするのだ。私のことも、⺠のことも、どうでもよいのか」
「違うのです王様。これは……」
王妃は顔を⾚らめたまま何も⾔いません。
それを⾒た王は⼤きくため息をつくと、「こんな時は黙るのか。そうか、君は⾃分さえよければいいんだな。」
と失望したように呟きました。

その⽇の夜、悩みに悩み、王は王妃を殺すことに決めました。これ以上、⾃分の妻 のせいで⺠を苦しめたくなかったのです。
王は何⼈かの部下を集めると、王妃の暗殺を宣⾔しました。
「『王』は死んだ。私は、私の妻を責任持って処刑する。 王妃を殺すような王は⺠の上に⽴つ者 として相応しくないから、これより私はただの逆賊になろう」
王妃は部下によって捕らえられ、国のはずれの森まで連れていかれました。
そして『王妃』が死に、『死刑囚』になり ました。

真新しい斬⾸の台に⽴たされた死刑囚 は、⽌めどなく涙を流し始めました。 逆賊は、もう⼀度問いました。
「何故、横暴に振舞っていたのだ?」
死刑囚は震える唇を開くと、
「貴⽅の、気を引きたかったのです」と呟 いた。
「ずっと、貴⽅が好きでした。でも貴⽅が 私に興味がおありでないことも、知っていました。でも、叱ってくれる時くらいは、 私のことを⾒てくれるのではないかと思ったのです」

その瞬間、『死刑囚』だった彼⼥は、 恋する⼀⼈の『少⼥』へと戻りました。

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