マガジンのカバー画像

いんきのにじみ「画帳」

33
インキの滲み。 拙い絵です。
運営しているクリエイター

2020年11月の記事一覧

Day31,「Crawling along」Inktober2020

Day31,「Crawling along」Inktober2020

 日々はゆっくりと過ぎる。這い回る蛇の様にいつのまにか、一日、一日と終わっていく。気付けば、ひと月など早いものだ。一日ずつ、雪山に蹴り込むアイゼンの様に楔を打ち込まなければ、ぬめりきった時間は逃げてしまう。Inktoberは私にとって、2020年の十月を繋ぎ止める、釘や楔の一本ずつの様だった。



 特別になりたい、何か誇れるものを、認められるものを、誰かをあっと驚かせられるものを。何か、何か

もっとみる
Day30,「Ominous languor」Inktober2020

Day30,「Ominous languor」Inktober2020

 猛烈な怠さと眠気、異常な関節の痛み。インクトーバー終了を目前に控えて襲われたのは、不吉極まりない何かの前兆だった。オフィスデスクに向かっているのだが、体が動かない。ただただ異様な程に体が重い。肩と腰と膝と足首と首と手首と肘と肩甲骨が痛い。これまで手垢が付いた表現として笑っていたが、節々が痛くなるってこういうことか。

 とにかく早退することにして、ずるずる駅まで歩いていると、運の悪いことに(本当

もっとみる
Day29,「Pair of shoes」Inktober2020

Day29,「Pair of shoes」Inktober2020

 2014年、僕はほぼ一年程、Hiro Yanagimachi Workshopという靴工房に通っていた。工房は原宿と千駄ヶ谷の間にあり、毎日同じ電車を乗り継いで行ったり来たりを繰り返した。あの頃の僕には靴以外に無くて、一つずつ増える黒くて鈍い工具や、木型や、革だけが、頭の中にぎっしり詰まっていた。靴は僕の、全てだった。

 インクトーバーはじき終わる。あと二日で、毎日絵を描く理由が無くなる。文章

もっとみる