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2か月のオンライン研修を経て、新人が初めて出社した

6月3日(水)は、にとって、そして私の配下の新人研修担当部門(ナレッジマネジメントチーム)にとって、特別な日だった。オンライン入社式から2か月以上、ずっとzoomを通じた研修を受けてきた48名の新人が、入社後初めてオフィスに出社し、対面研修を行った日だったからだ。

シグマクシスの新人研修は半年間。今年は、最初の2ヶ月半の全体研修、その後3ヶ月半の組織別研修とOJTを経て、10月1日からコンサルタントとして本格稼働となる。現場配属になるまでの2か月半、彼らは私の配下で新人研修を受ける。コンサルタントの基本動作や基礎スキル、そして自ら成長し続ける力を身に着けるのが彼らの仕事。彼らがそこに集中できる環境を作り、一人ひとりの個性、人間性を理解し、そのポテンシャルが最大化される現場に適切に送り出すのが、私とチームの仕事。だから、オンラインではあっても、例年と同じように、もしくはそれ以上のエネルギーをもって、日々共に切磋琢磨し、つながり、そして見つめ続けてきた。

「思っていたより背が高い!」

ぶっちゃけ当社の研修のカリキュラムはきつい。2ヶ月やそこらで、大学生をプロフェッショナルのスタートラインまで垂直立ち上がりさせるわけだから、いわゆる一般の社会人研修とは比較にはならないレベルのタフさが要求される。ジュニアからシニアまでトップクラスのコンサルタントが次々にレビューに登場し、プロのレベル感で対峙し続ける。その研修を、時に笑い、時に泣き、zoom上であっても本音をぶつけ合いながら共に過ごしてきた彼らは、とにかくものすごい熱量でつながり、仲良くなっていく。「いい加減会いたいです。」とみんな訴えていた。なんとか会わせてあげたい、と私達も思っていた。そこで迎えた初出社日だ。

朝、予定の時間に教室に入った。おはよう!というと、「おはようございます!」とはじける笑顔が返ってきた。本当は全員集めてあげたかったが、本社の大教室に全員を入れると三密になってしまう。研修チームの苦肉の策で、半数はオンラインで自宅で演習、半数が出社というシフトを組んで2日に分けたが、両日共、教室には、確かにみんなの姿と息遣いがあった。

「思っていたより背が高い」「意外とでかい!」「まじイケメンだ」「画面上では小さく見えたが、教室では存在感がすごい」「そんなに痩せてるの?細すぎ!」などと様々なコメントが飛び交っている。画面上に並んでいた48個の小さな四角の中から、2ヶ月を経て本物が遂に飛び出してきたのだ。感無量としか言いようがなかった。

オンライン・ネイティブの萌芽

さて、例年通りの開催要領で、「コンサルタントの基本動作」講義と演習リアル編が始まると、興味深いシーンが繰り広げられ始めた。

さんざん繰り返してきたグループワークも、同じテーブルに座ってひとつのホワイトボードを使って作業するのは実はこれが初めてだ。zoom上でslack、box Notesやパワーポイントを駆使しての議論は慣れているが、手に取れるマジックとボードには慣れていない。頭と口はまわるが、気持ちと体が追い付かない、という様子にみんな慌てたり驚いたりしている。

何しろ文字を書きなれていないからか、ホワイトボードの文字が軒並み下手くそなのには、講師陣みんな噴き出した。研修開始当時、タイピングススピードを極限まであげるのに、夜な夜なみんながオンライン上で集まって、自発的に寿司打ち大会をやっていたのは知っているが、その反動はペンの扱いスキルに来たらしい。

オンラインで議論するときの癖で「ちょっと今自分、話していい?」と断りを入れてから発言したり、「ちょっと俺黙るね、考えるから。」と自分の状況をさしはさむのも面白い。発言の最後に「●●はどう思う?」と、まだ発言していない人に水を向ける配慮を織り込んでいるのも、オンライン上でチームとして議論を進めるために編み出した、彼らならではの工夫だろう。しかしそれをリアルでやるとスピードが落ちて無駄にもたつく。初のリアルで起きた異常事態に気づいた彼らは、どうやって距離感や思考をアジャストしていくかについて考え、話し合い、こなしていこうとホワイトボードを前に奮闘している。

これはものすごい可能性かもしれない、と思った。

リアルを前提で生活している人と、そもそもオンラインを前提として生活している人では、頭も心も体も使う部分が違うのだ。しかもそのオンライン生活を白紙の状態からタフなプレッシャー下で2か月間やり続けて、そのあとリアルを経験するというのは、そうそうない。デジタル・ネイティブならぬ「オンライン・ネイティブ」がここに48人出来上がりつつあるのだと私は理解した。まだまだコンサルタントとしてはスタートラインに立つか立たないかの状態ではあるが、そんな彼らがこれからいったいどういう風に成長して、プロジェクトで貢献していくのか?その拡がる可能性に驚き、ワクワクした2日間でもあった。

思い返せば、「カリキュラムを完全オンラインでやり通す」と方針変更をしたのは、コロナ禍が始まった新人受け入れ直前の2月末だった。そこからの壮絶な準備作業については、また別途書きたいと思うが、当時まだ学生だった彼らにそのプラン変更を伝える緊急zoom会議で、私はこう言った。「リアルもオンラインも私達には関係ない。学びの品質とみなさんが達成するべきゴールは絶対に引き下げない。だからこそ、自分たちが今いる環境を、共に最大限使いたおして、唯一無二の新人になろう」。そんなことを私が言ったことすら、もはや彼らは覚えていないだろう。でも、彼らはその約束を、体現しつつある。

研修は残すところあと数日となった。両手の指に満たない日数のリアル研修が続く。彼らが現場に出発するまでの時間を、共に丁寧にすごしたいと思う。

みんな。最後の仕上げ、頑張れ。

(C&C / 内山その)

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