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【F12023】劇的進化を遂げたオンボードカメラ

2月になると、いよいよ2023年シーズンが本格的にスタートします。
各チームが新車を発表し、ウィンターテストが始まるのです。

昨年は大幅なレギュレーション変更があり、各チームの勢力図が変わるか注目していましたが、蓋を開けてみればレッドブルの圧勝。流石の安定感でしたし、フェルスタッペンにも「王者の風格」が出てきました。

対するフェラーリはマシン開発に成功しましたが、作戦面に難があって勝てるレースも落としてしまう残念な結果に終わり、絶対王者メルセデスもマシン開発に苦戦。トップチームにも明暗が分かれました。

そして迎えた2023年シーズン。
チーム代表が交代し、新体制となったフェラーリがレッドブルにどこまで食いつくか?
メルセデスの復活はあるのか?
そしてアルファタウリから3年目のシーズンを迎える角田裕毅。
チームメイトがニック・デフリースに代わり、二人でどのようなレースを見せてくれるのか?

今から開幕戦が楽しみですが、その前に今年もプレビュー記事を書いてみたいと思います。
ニューマシンお披露目とウィンターテストを待つ間に、楽しんでいただけると嬉しいです。


「ドライバーズ アイ」が全車搭載へ

1月26日。
今年のF1についてこんな発表がありました。

昨年あたりからちょくちょく中継映像に出てくる、ドライバー目線のオンボードカメラ映像。
一体どこにカメラが付いてるんだろう?と思ったら、ヘルメットの中に取り付けられていたんですね。

記事を読むと、ヘルメットメーカーのBELL社協力のもと、2022年は一部のドライバーのみに取り付けられていたようです。

映像の画質はやや荒いですが、それがかえって臨場感を生んでいます。
ヘルメットの揺れも克明に捉えられていますし、何より今まで見た事のない映像に驚きました。
導入テスト時に視界について議論されたHaloも、ドライバーにはこうやって見えてるんだな、と初めて知りました。確かにあまり視界を遮っていないようですね。
しかも、映像だけなく、音もリアル!間近に感じるエギゾーストノートの迫力はすごい!

実際のドライバーズアイの映像がこちら

新たなF1の世界を見せてくれたドライバーズアイですが、いよいよ他社製ヘルメットを使用しているドライバーにも搭載されることになりました。
当然「Arai」や「SHOEI」のヘルメットを使用するドライバーにも搭載されるわけです。
そこでノウハウを得る事ができれば、国内レースでもドライバーズアイの映像を見る事ができる日が来るかもしれません。

劇的進化を遂げたオンボードカメラ

さてオンボードカメラといえば、現在は各マシンのロールバーの上部にある空力デバイスの中に搭載されています。

最近では、ウィングの先や、マシン後部にも取り付けられ、迫力のある映像を提供してくれますし、ひとたびクラッシュなどのインシデントが起きれば、その検証にもオンボード映像が使われます。

カメラの性能は、ここ20年ほどで劇的に進化しました。
かつては動画を撮影するビデオカメラも、一番小さくても手のひらからはみ出すほどのサイズ。
「パスポートサイズの8mmビデオカメラ」なんて昔はありましたけど、コンパクトに見えても機器の厚みがすごかったものです。

それが今は、毎日持ち歩くスマホのカメラで4K動画が撮れるほどに。
もちろん、動画のストリーミング配信も手軽にできるようになりました。
信じられないほど速いスピードで高画質、小型化が進んだ結果です。

しかし当然、そこに至るまでは長い開発の歴史があります。
F1のオンボードカメラも、その進化の一翼を担っていたのではないでしょうか。

車載カメラの映像は70年代頃から残っています。
ビデオカメラをマシンに搭載し、録画したものだと思います。

また、モータースポーツを題材にした映画も数多く制作され、撮影機材がマシンに取り付けられることも。
F1ではないですが、映画「栄光のル・マン」では1970年のル・マン24時間レースに、撮影用の機材の積み込んだマシンが実際にエントリーし、撮影しながらレースに参加したという驚きの逸話もあります。

しかし、テレビ中継でオンボードカメラの映像を放送するには、無線で映像を飛ばす技術も必要。

実際に今のようなオンボード映像が提供されたのは、1985年のドイツGPだそうです。
映像がこちら

そして1987年には全戦でオンボード映像を提供すべく、チャレンジが始まりました。
それは、我々日本人にとって繋がりの深いチャレンジでした。

オンボードカメラを乗せた中嶋の黄色いロータス

1987年にロータス・ホンダでデビューした中嶋悟。
彼のマシンに全戦でカメラを取り付け、リアルタイムでオンボード映像を放送に流す、という試みがなされました。まさに大いなるチャレンジです。

しかし、当時のカメラはとても大きく、重たいもの。
重量にシビアで、且つ空力にも頼るF1マシンにおいて、それはハンデでしかありませんでした。

それでも、チームはマシンにオンボードカメラを載せる契約をFOCA(当時、F1の商業権を持っていた団体)と締結。カメラは中嶋のマシンに取り付けられる事になりました。

何故中嶋がそんな貧乏くじを引くことになってしまったのか?
チームがお金欲しさに契約したとか、30歳を過ぎた日本人ルーキーへの風当たりなどいろいろ言われていますが、ここはチームの契約なのですから仕方ありません。

でも逆に考えると、それ以降搭載されることが当たり前になるオンボードカメラの開発を助ける役割を担ったのですから、まったく意味がなかったわけではありませんし、むしろ誇らしい事だと思うのです。

中嶋のマシンに取り付けたオンボードカメラのおかげで、中継映像に何度も臨場感のある映像が流れました。
モンテカルロの狭いコースも、シルバーストンで成し遂げたホンダ1-2-3-4フィニッシュの歴史的な瞬間も、そして初開催となった鈴鹿サーキットの映像も。

中嶋のデビューイヤーは、日本のF1ブームの火付け役となっただけではなく、その後のF1に大きく貢献した年でもあったのです。

※こちらの記事に当時の写真があります。
ヘルメットのすぐ後ろに付いている、四角い銀色の箱がカメラです。

中嶋がドライブしたマシンのオンボード映像がこちら

今年はオンボードカメラの映像にも注目!

1989年になると、カメラや機器類も小型化し、ウィングのフィンのようなパーツの中に納まるようになったため、トップチームを含めた複数台に取り付けられるようになります。
それを受け、同年からカメラを搭載しないチームにも同じ重量分のウエイトを取り付けるよう、レギュレーションも整備されます。

1989年というと、やはり鈴鹿でのセナとプロストのバトル。
マクラーレン・ホンダのマシンに搭載されたオンボードカメラは、シケインで接触する2台のマシンの様子を克明にとらえていました。

1996年からオンボードカメラは全車に取り付けられる事になります。(注)
長くF1の商業権をコントロールしていたバーニー・エクレストンは、「いつかオンボードカメラを全車に取り付けたいんだ」と言っていたそうですが、それが現実のものとなりました。

全車にオンボードカメラが付けられる効果は大きなものです。
トップ争いはもちろん、後方でもバトルを演じるマシンの迫力のある映像を見る事ができるのです。オーバーテイクの攻防を、抜く側、抜かれる側の視点で見る事ができる。

カメラの搭載位置も、ドライバーの頭部右後方の位置からロールバーの上部に変更され、ドライバーがコクピットの中で何をやっているのかまで見る事ができるようになりました。
今や、マシン上部やウィングの先、マシン後方に取り付けられたカメラでも、HD画質の映像がリアルタイムで見る事ができます。

そして遂に、より迫力のある映像が楽しめる「ドライバーズアイ」まで、全ドライバー搭載可能になるのです。

バトルの駆け引きをより臨場感たっぷりに見る事ができるでしょう。
オーバーテイクを決めるドライバーの目線はどうなっているのか?
逆に前を走るドライバーが何度もバックミラーを気にする様子がうかがえたりするかもしれません。

今シーズンのF1は、オンボードカメラの映像にも注目ですね!

さて、2023シーズンもF1の記事を書いていこうと思っています。
毎戦振り返りは難しいですが、節目節目で頑張って投稿しますので、多くの方に読んでいただけると嬉しいです。

※タイトル画像は、文中に引用したAUTOSPORT WEB様の記事より使用させていただきました。
※文中の動画引用は、F1 Official YouTubeより。

(注)
こちらの文言についてご指摘を頂き、当時の画像や映像を確認したところ、一部のマシンにオンボードカメラが付いていないように見受けられます。
記事を書く際、多くのネット記事や記憶を参考にしました。
しかしご指摘を受けて再度確認したのですが、明確に「1996年からオンボードカメラの搭載が全車に義務付けられた」と断言している資料を見つけることができませんでした。
申し訳ございませんが、こちらの文言は正確ではない可能性があります事をご了承頂ければと存じます。
また、もし正確に断言している資料をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひともご紹介頂けますと非常にありがたいです。
尚、正確な情報が得られるまで、敢えて内容は変えずに公開は継続致します。
(2023年11月13日追記)

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