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【F1レビュー2022】 未来のF1の姿が見えてきた!大きな発表のまとめと、レースの感想

F1は夏休みを終えて後半戦へ。
チャンピオン争いも楽しみですが、夏休み期間を境に大きな発表がいくつもありました。
今回はその内容をまとめてみたいと思います。
また、夏休み前後のハンガリーGP、ベルギーGPも振り返ってみます。

未来のF1の姿が見えてきた!

2026年からのPUレギュレーションが決定

8/16、FIAより2026年から使用する新パワーユニットのレギュレーションが承認されたと発表がありました。

以前より議論されてきた新しいパワーユニット。
この決定により、新たなメーカーがF1に参戦する可能性が現実味を帯びてきました。
新しいパワーユニットの注目点は4つあります。

スペクタクルの維持
エンジンのスペックはほぼ変わらず、1.6リッターV6ターボエンジンを採用。
過度な性能差はつけないことになりました。

具体的には、エンジンの大部分の部品を標準設計とし、燃焼室を含めたヘッド部のみ自由に開発できるようなルールにするとのこと。

ヘッド部のみ開発できるようにしたのは、後述するカーボンニュートラル燃料の採用によるところが大きい。
そして、その他のパーツを標準設計にすることによって、メルセデス一強時代のようなエンジンの出力のみで大きな差が生まれないようにすることも大きな狙い。
結果的にコストも抑えられるでしょうし、車体の設計も大きく変えずに済むでしょう。

環境上の持続可能性
かねてより噂にあった、MGU-Hの廃止が正式決定。

MGU-Hとは、ターボのタービンと連動して動くモーター。
電気の力でタービンを回してターボラグを軽減させたり、排気ガスによってタービンが勢いよく回る力を利用して発電したりします。
ターボエンジンの欠点を補い、電力増加のメリットを得られるソリューションでしたが、コストも高く、扱いも難しいものでした。

その代わり、エンジンの回転運動を直接助けるMGUーKのパワーが倍に上がり、エンジンと合わせて1000馬力のパワーユニットになるとのこと。

また、2026年からはガソリンに代わって100%カーボンニュートラル燃料を使用することも正式決定しました。

エンジン内で燃焼させるとニ酸化炭素を発生させるガソリンから、燃焼させても二酸化炭素を発生させない燃料、または生成するときにニ酸化炭素を使用してプラマイゼロとする燃料が採用されます。

具体的にはどんな燃料を使うかは明示されませんでしたが、植物由来のバイオ燃料か、水素などを使って生成する化学燃料などを使用すると思われます。
前述のエンジンヘッド部のみ開発が自由になったのは、カーボンニュートラル燃料をうまく燃焼させる技術を各メーカーが開発しやすくするためです。

ガソリンではなく、代替燃料をどのように燃焼させてパワーに繋げるか?各メーカーの技術力が試されます。
そして、そこで得た技術が一般車にフィードバックされるのです。

モータースポーツ界でも研究が始まったり、実際に使用を開始したカテゴリーもあるカーボンニュートラル燃料。今後一般車へも導入する運びとなるはずなので、注目です。

財務上の持続可能性
チームに課せられた運用費、開発費の制限に加え、今までなかったパワーユニットの開発費にも制限がかけられます。

開発の幅は狭まることが予想されますが、お金がかからなくなるので将来的に参加する企業が増えることも期待できます。

新しいパワーユニットマニュファクチャラーにとって魅力的なものであること
このレギュレーションで新規参入者の参加を促す、と明言されました。
と言うことは、これから参戦を検討している企業を意識したレギュレーション変更、ということ。

じゃあやっぱりあの噂は…
と思っていたら、ベルギーGPで大きな発表がありました。


アウディが2026年からF1へ

ドイツのアウディが2026年からF1へ参戦すると正式に発表されました。
独自でマシンを開発するのではなく、パワーユニットを供給する形での参戦とのこと。

アルファロメオ(ザウバー)を買収した、と言う話もあったようですが、ひとまずはパワーユニットの供給のみの発表。ただ、あと4年もあるので今後はわかりません。

フォーミュラEやDTMから撤退したアウディ。
F1参戦は、彼らにとって大きな挑戦になります。

アウディのF1参戦は、過去を振り返っても初めてのことです。
80年代は名車「クワトロ」を擁してラリー界を席巻。
2000年代にはル・マン24時間で勝ちまくって一時代を築きました。
日本のファンにとって忘れられないのは、2004年にアウディのマシンで参戦した日本のチーム「チーム郷」の総合優勝でしょう。
日本チームとしては1991年のマツダ以来、そして、ドライバーのひとりだった荒聖治選手の優勝により、1995年の関谷正徳さん以来の日本人ドライバーの優勝となりました。

レッドブルとポルシェの噂

数年前、ドイツのメーカーが次々とEVへシフトしていくのを見てすこし寂しい気持ちにもなりましたが、ここへきて視点を変え、EV以外の選択肢も視野に入れているようにも思えます。

フォーミュラEからはアウディ、BMW、メルセデスが撤退。
BMWはハイパーカーでWECに参戦すると発表しています。

そしてポルシェ。
今年に入ってレッドブルとのジョイントが噂されています。
2025年までPUはホンダが制作することを発表済み。
レギュレーションが変わる2026年よりポルシェとタッグを組むというシナリオです。

ポルシェと言えば、F1よりも耐久レースのイメージの方があるかもしれません。
80年代に名車956、962Cを擁し、ル・マンを含むグループCの耐久レースを席巻。
それに目をつけたのが、当時マクラーレンの総帥ロン・デニス。
TAGから融資をとりつけ、ポルシェにエンジンの製作と供給を頼み込んだのです。
こうして「マクラーレン TAGポルシェ」が誕生。1984〜86年にドライバーズチャンピオンに輝きます。

しかし、栄光もあれば挫折もある。
ポルシェとF1、と聞いてTAGポルシェの他に「重い」「遅い」と言うワードが出てくる人はなかなかのマニアでしょう。

1990年にV12エンジンをフットワークチームに供給。
しかし重量がかなり重く、トップ争いどころかマトモに走らない有様。
結局チームはシーズン途中で市販のコスワースDFRエンジンにスイッチしてしまいました。
あのV6エンジンを2個繋げたようなエンジンはいったい何だったんでしょう?

ただ、2015年からル・マンを3回制覇した「919ハイブリッド」のパワーユニットは、現在のF1のコンセプトとほぼ同じハイブリッドシステムを採用していました。
きちんとMGU-Hもモノにしていたことになりますから、さすがの技術力です。

そのため、もし参戦が決まっても、ノウハウはゼロではありません。
そして、ホンダと二人三脚でパワーユニットの信頼性を高め、チャンピオンを獲れるまでに高めたレッドブルがパートナー。
実現したら、一体どんなタッグになるのか。

それでも、日本のファンにとっては悔しくもあります。
新レギュレーションが決定しても、ホンダの2025年以降のF1参戦については何の発表もありません。

レギュレーション的に元々あるソリューションが使えて、開発制限やコストキャップのおかげで開発資金も以前よりはかからないでしょうから、ホンダにとっても有利な話だとは思うのですが…。
単独参戦が難しいなら、せっかく設立したレッドブル・パワートレインズとの協力体制を維持する、なども考えられるのではないでしょうか。

あと4年あるので、今後どんな状況に変わっていくか。
2025年までは確実にホンダもF1に関わり続ける訳ですから、引き続き注目です。

来年へのドライバーの動きにも注目!

ベッテルが今季限りで引退

2010年代を代表するドライバー、セバスチャン・ベッテル。
ハンガリーGPウィークの木曜日、F1からの引退を発表しました。


レッドブル時代に4度チャンピオンに輝いた偉大なドライバー。
人柄からか、SNSではドライバーをはじめ多くの関係者から引退を惜しむ声が上がりました。

印象に残っているのは、2008年のイタリアGP。
レッドブル育成ドライバーの一員として現在のアルファタウリの前身、トロ・ロッソに所属していた時のお話。
この年のモンツァはプラクティスの時から雨が降り続き、各チームとも手を焼いていました。
しかし、雨の中ひとり走り込むベッテル。誰よりも雨のモンツァのデータを蓄積していきました。

関係者は皆、晴れることを予想していましたが、予選も雨。
データが豊富なベッテルがあっさりポール奪取。
そして決勝。なんと、この日も雨!
ポールからスタートしたベッテルがトップを譲らず、初優勝を決めたのです。

レッドブルのジュニアチームで、いつも中盤争いをしているチームがポールトゥウイン。
皆が驚きましたが、それ以上にベッテルの才能、勝利へのクレバーさに驚く出来事でした。

文句なしの実力を発揮したベッテル。翌年はレッドブルへ「昇格」。その後破竹の強さで4度のチャンピオンに輝きました。

2013年の鈴鹿も印象的。
この日はベッテルが優勝。
3位にザウバーの小林可夢偉が入り、初の表彰台に立った日でした。

元々F3時代にチームメイトだった二人。
表彰台上のインタビューで、「可夢偉が表彰台に上がったよ。F3時代が懐かしいね」とコメント。
可夢偉も日本語で「ベッちゃんが嬉しいこと言ってくれて…あ、ベッちゃん言うてもうた」。嬉しさのあまり関西弁丸出し!

ベッテルはF3当時からすごかった、と可夢偉。
セッションが終わっても、PSPを持ち出して他のチームメイトも呼び出し、F1のゲームに誘ってきたそうです。

※小林可夢偉選手のツイートより。
画像左がF3時代、右が鈴鹿での表彰台の姿。
元チームメイトに惜別のメッセージを送っています。


そんなベッちゃんの今後についても気になりますが、しばらくゆっくりするもよし、ドイツの中継解説をするもいいと思います。とにかく、プレッシャーから解放されるわけですから、家族とゆっくりしてほしいですね。

あるいはひょっとして、可夢偉に誘われてトヨタでル・マンに乗るかも?
あれから時が過ぎ、現在の可夢偉はTOYOTA Gazoo Racingのドライバー兼チーム代表。
ベッテルさえ良ければ、悪い話じゃないはずですよね。

ひとりの若者をめぐるシート争い

ベッテルが引退を発表した直後、その空いたシートにアロンソが座ることが突然発表されました。
これも驚きの移籍発表。

アロンソを失ったアルピーヌは、その後釜として2021年のF2チャンピオン、オスカー・ピアストリをデビューさせると発表。

オスカー・ピアストリは、2019年にフォーミュラ・ルノー・ユーロカップでチャンピオンを獲得。翌2020年にアルピーヌ・アカデミーに加入し、FIA-F3に参戦初年度でチャンピオン。翌2021年にはなんとF2でもチャンピオンに輝くという、才能豊かな金の卵。
成長次第では将来のワールドチャンピオン候補とも目される逸材です。

今年、アルピーヌのリザーブドライバーとして契約していたピアストリ。
昇格という形で来年のシートを得ました。しかし…

直後にピアストリがSNSで「アルピーヌとの契約はない。来年アルピーヌでは走らない」とコメント。
この騒動が物議を醸しました。


そしてその後、突然リカルドがマクラーレンから離脱すると発表。
彼の移籍先はまだ分かりません。

夏休み前後でこのドタバタ劇。
モータースポーツ各メディアの記事を読んでいくと、どうやらいくつかのチーム間で水面下の動きがあったようです。

可能性として考えられるのは以下の通り。
※いくつかの記事を読んだ上でその内容を追ったような感じですが、明らかになっていない事が多々あり、あくまで私の想像です…。

・アルピーヌは元々アロンソと単年契約を結び、リザーブであるピアストリをウィリアムズへレンタル移籍させるつもりだった。
・しかし、ピアストリ側がウィリアムズ行きを嫌がり、水面下でマクラーレンと交渉を進めた。
・単年契約を嫌がったのか、アルピーヌの内情を知っていたのか、はたまたこちらも元々水面下で交渉していたのかは定かではないが、アロンソがアストンマーティンへ移籍が決定。
・焦ったアルピーヌはピアストリを確保しようと、オプション契約があるからと本人と交渉もせずに来年のラインナップを発表。
・しかし、時すでに遅し。ピアストリが来年のアルピーヌとの契約はないと主張。その裏にはマクラーレンとの大筋合意があった。
・結局、リカルドのマクラーレン離脱が発表される。

この流れが本当なら、来年のマクラーレンはノリスとピアストリとなり、アルピーヌのシートがひとつ空くことになります。

これを見て思うのは、アルピーヌ側の脇の甘さでしょうか。
下位カテゴリーを短期間で勝ち上がってきた実績は、過去を参考に考えるとベッテルやハミルトンのような逸材になる可能性は十分あります。
そんな若者がいるならしっかりキープしておけば、やがてチームの利益に繋がることは明らかです。
したたかに、そして誠意をもって対応すればよかったのに…と思ってしまいますね。
「フェルナンドとの契約次第になってしまうが、チャンスがあれば君を乗せたいと思っているから準備しておいてくれ」と前々から話をしておく、とか。
まぁその辺はちゃんとやってるとは思いますけど。

ただ、逸材であるだけに、その才能を潰されたくない、と言うのがピアストリ側の考えであるとも言えます。

いいクルマ、いいチームに恵まれれば、ハミルトンのようにルーキーイヤーから大活躍できる可能性もある。そうすれば、自身の評価も大きく上がります。
でも、下位を走るチームであってもグランプリに出場できるわけですから、そこから得られる経験も大きいですし、それなりの結果を残せば評価も上がり、注目されるはずです。
チームの意向に従ったとしても、プラスになることはあったと思います。

今週かけてこの記事を書いてきましたが、9/2にピアストリがマクラーレンと契約したと正式発表されました。
デビュー前から揉めるなんて「空白の一日事件」を思い出しますが、才能豊かな若者がマクラーレンでどんなレースを見せてくれるのか楽しみですね。


さて、渦中のアルピーヌには結局誰が乗るのか?
元々狙っていると噂されていたガスリーの名前も挙がっていますが、最終的に誰になるのかはまだ分かりません。

ガスリーがアルピーヌに行くと、アルファタウリのシートが空く。そこには誰が…?
今年のストーブリーグは、ドライバーがかなりシャッフルされそうで楽しみですね。


さて、ここからはハンガリーGP、ベルギーGPを振り返ってみます。
ちょっと話が長くなってしまったので、簡単に振り返りましょう。

第13戦 ハンガリーGP

予選でトラブルに見舞われ10位に沈み、途中単独スピンまでしたのに、前のクルマを次々にオーバーテイク。終わってみればいつの間にやら勝っていたフェルスタッペン。
開幕から前半戦は苦しんだレッドブルですが、ここへ来て他を寄せつけぬ強さを見せています。
タイヤ交換の作戦もうまく機能しましたが、それ以前にミディアムでもソフトでも速い。
もはや、彼にライバルはいるのだろうか?という状況です。


対するフェラーリは速さが見えず、メルセデスと抜きつ抜かれつの展開。
ルクレールに至ってはレッドブルの強さに翻弄される形で中盤ハードタイヤをチョイス。
しかし終盤まで持ち堪えられず、フェルスタッペンはもちろん、メルセデス勢にも前を行かれて6位。
作戦は違えど、サインツも苦戦しているようでした。

逆に終盤気を吐いたのがメルセデス勢。
特にハミルトン。ファステストラップを何度も叩き出し、終わってみれば2位。終盤ソフトタイヤに変えてからは、他のマシンとは明らかにペースが違いました。
ラッセルも3位に終わり、2台揃って表彰台。
マシンがサーキットに合っていたのか、作戦がうまく機能したのか。
はたまた、単にフェラーリが遅かったからか?

第14戦 ベルギーGP

規定台数を超えてPUマテリアルを交換したペナルティで、7台ものマシンが後方に沈む形で始まったベルギーGP。

予選では誰も敵わない異次元の速さでトップだったフェルスタッペンも14番手スタート。
しかしスタートダッシュがよく、序盤のアクシデントをうまくすり抜けてみるみる順位をあげていきました。

対するルクレールも15番手スタートだったため、これはサインツとペレスの一騎打ちか?と思いきや、結局先頭に立ったのはフェルスタッペン。
テクニカルなハンガロリンクも、パワー勝負のスパも、どんなサーキットでも関係なく速い。

勝ったのはもちろんフェルスタッペン。
ここまで来ると、他のチームはなす術がありません。


ファイナルラップ直前でソフトタイヤに換えてファステストを狙ったルクレールも、ピットアウトのタイミングが悪かったのか、早々にアロンソに抜かれて結局無意味に。
これも、レッドブルの強さから翻弄されてしまった結果なのでしょうか。

上位争いとは別に、35周目のガスリー、ベッテル、オコンの3ワイドバトルは見応えありましたね。
かつてのハッキネンとシューマッハの3ワイドを彷彿とさせるようなバトルでした。


さて、チャンピオン争いはもうフェルスタッペンがいつチャンピオンを決めるか、と言った話になってきました。
そう考えると、昨年のチャンピオン争いはスペクタクルでしたね。二人が同点で最終戦を迎えるなんて、なかなか見れるものではありません。

しかし、今年の展開もよくある話。勢力図が大幅に書き変わることを期待していましたが、今のところはフェルスタッペンの横綱相撲が続きそうです。

アルファタウリと角田は、相変わらず苦しいレースが続いています。
ペースが上がらず、後ろの方を走る姿が目立つようになりました。
なんとか解決の糸口を見つけて、鈴鹿ではより前の方でポイントを争う姿が見たいですね。


トップ画像、および本文中のツイート引用はF1公式Twitterより使用させていただきました。
アウディのF1参戦は今後のF1を占う上でも大きなニュースでした。
どのチームとタッグを組むのか、これからの動きにも注目ですね。

アルファタウリの公式Twitterより。
オランダGPを控えたサーキットウォークでの一幕。
この二人、兄弟みたいに本当に仲良しですよね。思わずほっこり。
今週も頑張っていい結果を残して弾みをつけてほしいですね!

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