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PANOR@MA WING シリーズを振り返る

はじめに

こんにちは、蜷川です。

本日 11 月 16 日をもってシャニマス 5 年目の CD シリーズである PANOR@MA WING シリーズが 08 までリリースされました。

SHHis が加入して 7 色揃ってから 2 年目で、各ユニットのストーリーもかなり深度を増して進んでいる中、このシリーズのリリースとなりました。

このシリーズの各楽曲に関して、個人的な感想や思い当たる関連楽曲や音楽的な背景を記録しておくための記事となります。

私自身の音楽的なバックグラウンドにかなり偏りがあるため、内容の厚さの量に差が出てしまいますがご容赦ください。

また、シャニマス以外の楽曲についても結構しゃべります。

(追記2020.11.30)
シャニマス楽曲のサブスク解禁を祝して、本記事の最後に PANOR@MA WING シリーズと紹介した関連楽曲全部入れの Apple Music のプレイリストを載せておきますので、ぜひご活用ください。

Songlink について

関連楽曲などの引用の際に、youtube の埋め込みの下に同一タイトルの埋め込みがあります。
これは Songlink というサービスへのリンクとなっています。

曲名や共有リンクで検索するとその楽曲の各種サブスクや youtube のリンクなどを見つけてくれる便利サービスですので、ぜひご活用ください。

「虹の行方」で検索したときの結果

01: 虹の行方/Daybreak Age(シャイニーカラーズ)

虹の行方

作詞:古屋 真 作曲・編曲:三好啓太
Guitar:エレクトロソナー Bass:ミツル Strigns:真部 裕ストリングス Programing & All Other Instruments:三好啓太

放クラの専任作詞家はもちろん、シャイノグラフィの作詞でお馴染みの古屋真氏と、灯織ソロの編曲やあさひソロの作編曲、さらには L@YERED WING 02 では A 面 B 面両方での作編曲を担当した三好啓太氏というシャニマス楽曲における功労者タッグによる全体曲。
さらに三好啓太氏に関しては、 4th ライブの手紙演出の際のピアノ曲も担当しており、シャニマス 4 周年を語る上で欠かせない人物となりました。

発表・実装から間もない時期にイベントコミュ『Your/My love letter』で使用されたことが印象に強く残っている人も多いのではないでしょうか。

楽曲としては A, B メロが各ユニットが代わる代わる割り振られていく中、メロディーの統一感を保ちながらも各ユニットが持ち合わせる音楽観で展開するというテクニカルな構成になっています。
1A(イルミネ・アンティーカ) と 2A(ストレイ・ノクチル)、1B(放クラ・アルスト) と 2B(シーズ)のそれぞれでそもそもの成り立ちが違うので A メロ B メロという括りで語るのが正しいのかというのも若干躊躇してしまいます。

一方で、サビの方はとてもストレートに響いてくるものになっているのですが、特にラスサビのピアノをコンチェルトのフィナーレのように壮大な魅せているのが印象深く残りました。
先述の通り三好啓太氏のピアノは手紙演出で採用されてるのもそうですが、過去のペのれり名義での同人活動を見ていても単なる装飾ではなく情景の演出という部分に意識が向いていることが伺えます。

あと、これは必ず言及しておかなければいけないことですが、楽曲の最後 4:57 あたりでチェロ(ステレオ右側)が Spread the Wings のメロディーを引用している箇所があります。
これがなくても 7 色揃った全体曲としての完成度は十分にあるのですが、この引用フレーズが入ることでシャニマスの全体曲として確たるものになったように思います。
まだ実現していないですが、虹の行方から Spread the Wings に繋がるライブとかあったらどうにかなってしまうかもしれません。

Daybreak Age

作詞:真崎エリカ 作曲・編曲:桑原佑介
Guitar:久次怜音 Bass:古谷圭介 Programming & All Other Instruments:桑原佑介

でいぶれいく・あげ↑

シャニマスの全体曲のカップリングは、GRADATE WING シリーズの Dye the sky. 以降 pSR カードのイラストのように枠に縛られない自由型演技のように感じられる部分があります。
この Daybreak Age もその流れで戦闘アニメのテーマソングのようなスタイルが採用されています。

ミリオンだと特に Fairy の曲で堀江晶太氏を中心にアップテンポのバチバチ曲を結構やっている印象がありますが、シャニマスだとどうしてもそういった力強い楽曲はアンティーカとストレイの守備範囲となってしまうため(実際この曲の作詞はアンティーカ専属の真崎エリカ氏ですし)、それ以外のユニットで Dye the sky. とは違った直球でかっこいい曲を歌うのは 4 周年にしてなお新鮮でした。

もうちょっとバンドサウンドを前面に出してもいいのかなぁと思いはしましたが、そうするとアンティーカの曲になってしまいそうなので全体曲としてはこれぐらいの塩梅がちょうどなんですかね。

02: FELICE/イルミネイトコンサート(イルミネーションスターズ)

このシングルについてはまず各楽曲に入る前にシングル全体(虹の行方以外)について言及する必要があります。それは

こんなにプリパラに寄せていいの……?

ということです。

作詞はもちろん中村彼方氏からバトンを受け継いだ渡邊亜希子氏が続投しているのですが、楽曲制作陣がプリパラの OP 楽曲が収録されているシングルでよく見かける布陣と全く一緒なのです。

名目上の主たる対象年齢が違うものの、同じアイドルコンテンツで、さらに Lantis でなく avex というレーベルを超えたメンバーとなっているので、シャニマス世界のオタクたちはまさかのイルミネがレーベル移籍!?みたいな話になってしまっていないか不安になります。

5 年目にもなるとそういうこともしてくるのか……と情報解禁時付近はよく唸っていました。

FELICE

作詞:渡邊亜希子 作曲:丸山真由子 編曲:清水武仁
Programming & All Instruments:清水武仁

この曲の率直な第一印象は「リード面に寄せたカップリング曲」でした。上記のプリパラ OP の i☆Ris のシングルでは主に丸山・清水ペアがカップリング曲に回ることが多いのもあってそういう印象を抱いたのかもしれません。

ただ実際楽曲もバラードとはいかないものの激しいアイドルポップではなく、じんわりと染み渡ってくる曲なので、こういう曲をリード曲としてやっていける貫禄がイルミネちゃんたちにも出てきたのだなぁとしみじみしてしまう曲でした。
イルミネ自体特段大きなストーリー展開があるわけではなく、日常の中で出会う問いに向き合うユニットなので、そういう意味でユニットの性質とうまく適合していると言えそうです。

イルミネイトコンサート

作詞:渡邊亜希子 作曲・編曲:渡辺徹
Programming & All Intruments:渡辺徹

クラップの演奏家で世界が飽和状態になる曲。
こういうご時勢の中でアイドル楽曲へのファンの参加方法が限られる中、明確にクラップという手段で参加することで完成するのは非常に時代にあったアイドルソングだなと思います。

歌詞でガッツリ「イルミネ」と言ってくれるのもいいですよね。
もちろんカバーとかそういう話になるとすごく身動きが取りづらくなってしまうのですが、カップリグ曲はユニットの個性・らしさを煮詰めた楽曲もできる自由さがあるので、その意義をしっかりと果たせているように思います。

FELICE に対してこちらは「リード曲っぽいカップリング曲」という印象もありますが、アニソンではない avex が培ってきたアイドル観を強く受け継いでいだライブ受け重視のアイドルソングになっていました。

あと、すごく細かいところなのですが、サビ後半の「終わらない」の部分に2 オク下のコーラスが入っていて、それがとてもメリハリ良いアクセントになって何回聴いても胃もたれしない味になっていたように思います。

03: 浮動性イノセンス/愚者の独白(アンティーカ)

浮動性イノセンス

作詞:真崎エリカ 作曲:ArmySlick、Giz'Mo(from Jam9) 編曲:ArmySlick
Guitar:後藤貴徳 Bass:IKUO Programming & All Other Instruments:ArmySlick

このシングルを通して作曲を担っている ArmySlick 氏のハードなサウンドが光る楽曲。
前シリーズの『abyss of conflict』がアンティーカにしてはどちらかといえば変化球的なリード曲だったので、そうそうこれこれという安心感もありました。

聴いていてアンティーカ史上BPM が一番早いかもと思ったのでアンティーカ楽曲を一通り見てみたところ、純白トロイメライ(BPM=180)に次ぐ BPM=165 とかなり早い部類になっていました。

愚者の独白

作詞:真崎エリカ 作曲:ArmySlick、Lauren Kaori 編曲:佐藤厚仁(Dream Monster)
Bass:Kei Nakamura Violin:雨宮麻未子 Guitar, Programming & All Other Instruments:佐藤厚仁(Dream Monster)

これまでもストリングスにはかなりこだわってきていたアンティーカでしたが、この曲は特にストリングスが映える曲でした。

アンティーカを弦楽五重奏に例えるとしたらという妄想をする人も多いかと思いますが、一つの解釈として次のような編成が考えられると思います。

1st Vn. 恋鐘
2nd Vn. 結華
Va. 霧子
Vc. 藦美々
Cb. 咲耶

そう考えると落ちサビ頭の暖かく人間味と包容力のあるメロはごくチェロ的で、儚くも澄んで遠くまで響くその美しさがなんともアンティーカが掲げる祈りと調和しているように感じます。

歌詞に注目すると、今となってはこれは「かいぶつ」に対する「想い人」の懺悔と祈りなのかとすら思えてきます。雨竜と御子柴……。

04: 一閃は君が導く/キャットスクワッド(放課後クライマックスガールズ)

一閃は君が導く

作詞:古屋 真 作曲:武田城以、Hiroki Sagawa(Relic Lyric, inc.)  編曲:サイトウ リョースケ(Relic Lyric, inc.)
Bass:宮本旭 Trumpet:Luis Valle Tenor Saxophone:Andy Wulf Trombone:鍵和田道男
Guitar, Programming & All Other Instruments:サイトウ リョースケ(Relic Lyric, inc.)

個人的には新しく放クラで野球の曲を作るのはかなりハードルが高いよなぁと思っていました。
というのも、音楽的な性質だけを見たら学祭革命夜明け前が野球応援歌として相当親和性が高いからです。
今回の『一閃は君が導く』が入ってきたとしてもおそらく野球の応援現場でどの曲を応援歌として採用するかと問われると『学祭革命夜明け前』を選ぶことが多いのではないかと予想します。

ということで、野球の応援歌という軸からは外して、スポーツものスカバンドという形でリード曲が発表されました。
言及も多いですが、スポーツものとスカバンドの組み合わせの過去事例としてはイナイレが有名でしょう。
実際、この曲は歌詞や野球的な SE をのぞいたらサッカーでも通用すると思います。
(ロッテの応援歌っぽいと言われればそうだけど、ちょっとロッテはサッカーの応援文化を引いていて特殊だからね……。)

また、この楽曲のスカバンド要素を盛り立てるブラスチームは今では POWER HORNS というユニットでもある三人です。注意していると結構いろんなところで見かけます(Luis Valle 氏と鍵和田道男氏の組み合わせは特に)。

歌詞は先述の通りやきう的なカラーを出すために野球用語でアツくなっています。
「エラーした数だけかっ飛ばせ(2017 倉本)」とか思っていたら倉本が戦力外になっていた……。

キャットスクワッド

作詞:古屋 真 作曲:小久保祐希、YUU for YOU 編曲:YUU for YOU
Programming & All Instruments:YUU for YOU

放クラ楽曲製作陣のイツメンによる自由枠。

上記の『一閃は君を導く』もそうなのですが、これまでの放クラのリアルアイドル楽曲路線から外れて、かなりアニソンチックな楽曲になっています。

思い出した曲としては『ばいたる☆エクササイズ』を思い出しました。アニトレEX ももう 7 年前なんですか……。


05: VERY BERRY LOVE/Give me some more…(アルストロメリア)

VERY BERRY LOVE

作詞:鈴木静那 作曲・編曲:5u5h1
Piano::岸田勇気 Programing & All Other Instruments::5u5h1

柔らかい雰囲気のアイドルではあるものの、音楽的なバックグラウンドはかなりニコニコ全盛期のボカロポップスに立脚している部分が大きいアルスト。
今回もボカロ P 出身の 5u5shi が担当しました。

衣装の魔女テイストを盛り込んでかなりジャジーでおしゃれなファンシー曲になりましたが、それでもアルスト特有のキラキラエレクトロポップ感がシンセのアルペジエーター(サビでピコピコ上がったり下がったりしている音)で担保されているという、結構不思議なバランス感で成り立っている曲です。

A メロはメリーポピンズの劇中歌で『Chim Chim Cher-ee』の影響はありそうですよね。
アルスト自体そういうおとぎ話というかちょっと古めのミュージカル的な世界観が似合うユニットなので(実際「見果てぬ先のアヴァロン」では傘で飛んで(?)いましたしね)自然な連想かつぴったりだと思います。

Give me some more…

作詞:鈴木静那 作曲:石黑剛、常楽寺澪 編曲:ArmySlick
Piano::松本圭司 Programing & All Other Instruments::ArmySlick

これ少なくとも R-12 ぐらいは指定しておかないといけないんじゃないですか?
少なくとも小学生の教育には悪いでしょ。
とは思うものの、少女漫画的といえば少女漫画的な歌詞ですよね。
じゃあ小学生に聴かせてもいいか……。
いやでもやっぱ歌詞があまりにも直接的すぎない?

さて、この曲のようなエレクトロファンク自体最近のインターネット・ミュージックで結構見受けられるジャンルですが、MV が作られるなら昔の iPod みたいに原色背景に黒影絵のものになるんじゃないかと思えるほど、インターネット界での程よいレトロさを感じます。

石黑剛氏・常楽寺澪氏のタッグは後述の『Bouncy Girl』でも担当しているコンビなのですが、こういった曲からバキバキのロックサウンド、王道アイドルバラードなど多種多様なスタイルの楽曲を提供していて、間違いなく現在のアイドル界を支えている重要な存在です。


編曲を今回のアンティーカ盤の作曲を通しで担当した ArmySlick 氏に投げた経緯も気になるところですね。

06: Tracing Defender/Overdrive Emotion(ストレイライト)

Tracing Defender

作詞:下地悠 作曲・編曲:大西克巳
Programming & All Instruments:大西克巳

サビはちょっと一昔前のコール入りアニソンテイストを取り込みながら、ライブ映えする曲という印象があります。

1 コーラス目は A, B メロが 4 つ打ちなのに対してサビから 8 ビートになるのでその緩急による盛り上げ効果が高いように感じます。その後 8 ビートを保ったままの 2A から 4 つ打ちの 2B に入って、また 2 サビで 8 ビートに戻るという緩急の曲です。

歌唱については愛依の歌唱力もさることながら、冬優子の表現の幅がまたひとつ広がったのが見てとれて作中での成長とリンクしてとてもよかったです。

Overdrive Emotion

作詞:下地悠 作曲・編曲:日比野裕史
Programming & All Instruments:日比野裕史

2010 年代のアニソン〜〜とちょっと懐かしい血が騒いでしまう曲。
これまでのストレイ曲もそうですけど、変に技術的でなくちょっとダサいぐらいのド直球なのがストレイ曲らしくて良いと思いました。

ストレイのサウンドのバックグラウンドには戦姫絶唱シンフォギアがそこそこ意識されていると思うんですが、この曲は歌詞も相まってそのことをより強く感じました。(三人ユニットですしね……)
最近シンフォギアの楽曲も各種サブスクで解禁されたので、是非そちらも聴いてみてください。

07: Catch the Breeze/アスファルトを鳴らして(ノクチル)

Catch the Breeze

作詞:秋浦智裕 作曲・編曲:NA.ZU.NA
Guitar:小川翔 Programming & All Other Instruments:NA.ZU.NA

古くからは NONA REAVES、最近だと Shiggy. Jr や POP ART TOWN を彷彿とさせるキラキラポップです。

衣装のモチーフとして渋谷が関連付けられているように、この楽曲も渋谷系のようなグルーヴ感が強く、メインストリームからは少し外れたサブカル的なおしゃれ感が特徴的でした。

NA.ZU.NA 氏は SWEET STEP も担当されていて、本当に幅広い楽曲に対応ができる作家さんですが、今回も見事にこのリード曲のコンセプトに合わせた構成となっています。
また、ギターの小川翔氏に対しては個人的に kiki vivi lily の楽曲・ライブのサポートに参加している印象が強く、最近リリースされた原田知世のロマンスの kiki vivi lily によるカバーでも現代的にアレンジされる中当時のアンニュイ感を演出されていたように感じました。
楽曲コンセプトにぴったりの人選だったと思います。

(上記のアルバム、原田知世のカバーアルバムなんですけどとんでもない名盤でおすすめです)

アスファルトを鳴らして

作詞:秋浦智裕 作曲・編曲:鈴谷皆人
Guitar:上杉悟 Bass:柳舘周平 Programming & All Other Instruments:鈴谷皆人

まず歌詞について、時期が時期だったらこれは小糸ソロでも通用していたのかなと思えるほど天檻時点でのノクチルを描く詞になっていました。
アイドルが成長・変化していって専属の作詞家がいるからこその表現で、シャニマスの他でなかなかこういったことはできないのではないかと思います。
小糸だけでなく 4 人どの視点でも聴きごたえのある歌詞になっているので、PW シリーズで最もソロコレが待ち遠しい曲かもしれません。

楽曲についてはリード曲と打って変わって、これまでのノクチルらしい直球の青春バンドサウンドになっています。詞も相まって天檻が映像化された際の ED 曲はこれしかないだろうなという曲に仕上がっていますね。

また、実はこの曲の作詞以外のクリエイター陣は AZKi の『Existlog』と( Piano の岸田勇気氏が参加していないこと除いて)一致しています。

この Existlog からも感じるのですが、鈴谷氏はかなりの堀江晶太フリークだと見受けられます。
ノクチルの他楽曲、特に『僕らだけの未来の空』もイントロを始め様々な部分で堀江晶太リスペクトを感じ、さらに虹の行方の 2A のノクチルパートも(三好啓太氏自身ボカロ文化を経ていることもあってか)かなり堀江晶太×じんのエッセンスが入ってるように思います。
ノクチルのバンド観の背景にはおそらく堀江晶太氏の存在はかなり大きくあると思うのですが、ミリオンでも活躍してるビッグネームには染まらないというのが一つのシャニマスとしての方針なのかもしれません。

また、今回 Bass で参加している柳舘周平氏もさまざまなジャンルが得意でありながらもちろん青春バンドサウンドでも光る作品を多く生み出しているクリエイターなので、次のシリーズのノクチル楽曲の作編曲などで携わることも十分ありそうで楽しみです。

08: Fashionable/Bouncy Girl(シーズ)

Fashionable

作詞:Co-sho 作曲:Stand Alone、小久保祐希、YHEL 編曲:Stand Alone
Guitar:佐々木"コジロー"貴之 Programming & All Other Instruments:Stand Alone

アコースティックギターやアコーディオンの用いられ方からラテンの風を感じるシーズ曲ですが、メロディーの東欧的な感性からしてこの曲のルーツはルーマニア、特に Manele (マネレ)を下敷きにしたダンスミュージック文化にあるのかなと感じています。

ルーマニアの音楽にはあまり親しみがないと思われる方が多いと予想していますが、実は下のインターネットで有名な曲はルーマニアの代表的なヒットナンバーです(より正確には O-Zone は隣国のモルドバ出身)。

なんとなくですが、Fashionable に近いメロディーの感性を感じるのではないでしょうか。(とてつもなく雑に言ってしまうとロシア寄りな側面もある音楽文化です) 

SHHis の音楽として K-POP 的なハウスミュージックが根底にあると思っているのですが、ルーマニアのものは(もちろん全部が全部というわけではないですが)アコーディオンの使われ方が特徴的です。

上の動画はルーマニアのレコード会社 RP music によるちょっと前のルーマニアで流行った曲たちの mix です。

この Fashionable もアイドル楽曲に合わせるためか主張を下げつつも Aメロ後半や、サビでは大々的にアコーディオンの音で華やかに装飾されています。

作曲のクリエイターについては小久保氏は海外のクリエイターと共同でローカライズ・通訳担当のように入ることが多く、実際 Stand Alone 氏とは M マスの秋山隼人役の千葉翔也氏が以前所属していたユニット SparQlew でのソロ曲を共同で担当しています。

Stand Alone 氏の情報については(検索との相性のなかなかの悪さもあって)なかなか収集できておらず、湘南乃風の作編曲に入っていた STAND ALONE 氏の表記揺れで同一人物なんですかね……?

歌詞の方はモノラル・ダイアローグスの後半(終盤ではない)の強気なにちかを感じてええやんフィーフィーとなっていました。

Bouncy Girl

作詞:Co-sho 作曲:石黑剛、常楽寺澪 編曲:石黑剛
Programming & All Instruments:石黑剛

Fashionable で異国情緒を感じていた一方で、こちらはかなり日本のトラディショナルなエレクトロサウンドのアイドル曲となっています。

作編曲の布陣は Give me some more… のコンビと同じで、今のアイドル界の音楽シーンを牽引するコンビによるこの曲も SHHis のテイストに寄せつつも今現在のアイドル界におけるダンスミュージックの潮流がかなり解像度高く表現されていると思います。

サビ終わりのオーケストラヒット(「(期待し)ちゃうの Bouncy Girl」の後ろでなってる「デン!」の音)がユーロビートから続く和ダンスの趣もあって、海外からのフライトで成田空港に着陸した時のような安心感がありますね。

オケヒ自体はこれまでの SHHis の曲で印象的なところだと Fly and Fly のサビで 4 拍目と 1 拍目に入っていて、あまり馴染みのない音楽と距離を取られてしまう曲にならないための装置としてうまく機能しているように思います。

詞の方は Fashionable と一貫して、他とは違って時代の最先端を駆け抜けていく存在としての SHHis が描かれていました。
ファンからはそう見えるかもしれませんが、裏の諸々を知ってしまっているとなかなか素直にノリ切れないというのもシャニマスの楽しさの一つなのかもしれません。

おわりに

ということで PANOR@MA WING シリーズの全 16 曲を振り返ってみました。

全体的に言える感想としては、5 つ目のシリーズというのもあってかかなり挑戦的なクリエイター陣・ジャンル・表現に取り組んでいる楽曲が多かったように思います。

各ユニットのらしさが確立されてきた今だからこそ、これまでに見られなかった側面を表現するというのはまさに "PANOR@MA" 的だったのではないでしょうか。

次のシリーズについて考えると、最近の各ユニットのイベコミュのメッセージが SHHis やその周辺の人々への間接的な言及をしているようにも取れる様子を見ている限り、来年でいったんのストーリーの決着をつけるのであれば次シリーズは各ユニットの集大成的なシリーズになるのかなと予想します。
5th ライブのタイトルもなかなかかましてきていますしね……。

SHHis の次のリード曲は Arabic House あたりなのかな~などと予想しながら大人しく次シリーズとシャニマス本編の展開を座して待ちましょう。

CDかシャニマスのフェザージュエルに濃縮還元されるサポート