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カメラと放クラと、


シャニソンのカメラ、デカくない……?思い出補正込みでニンテンドー64の本体ぐらいある。

これなんの記事?

シャニソン最初のイベントコミュ(とこれまで enza 対応版で呼ばれていた形式のストーリー)『茜色ドローイング』では、放クラの面々がとある中学校の受験生向けのパンフレット制作の際の「記者」として生徒たちと向き合い、いろいろな人が「諦めていた自分」にフォーカスを合わせて新たな一歩を踏み出す姿が描かれていました。

そんなイベントコミュで印象的だったのが……

このデカすぎるカメラ。ホテルでオレンジジュースが入っていたらちょっと嬉しくなる 2L のピッチャーぐらいデカい。

デカいな~~~~~とは思いつつも、個人的にはシャニソンのド頭に放クラとカメラのコミュが来てくれてうれし~~~~~~という感想も抱いていました。

なんでそういう感情が出てきたかというと、enza 対応版の方(以下、シャニマス)での放クラのイベコミュでは常に『カメラ』がストーリーを駆動する装置として存在していたからです。

ということで、この記事ではシャニソンから入った方を主な対象に、これまでシャニマスを読んできた方にも一つの視点として、これまでのシャニマスの放クラコミュとカメラの関係性を深くまでのネタバレはしない程度になぞっていこうと思います。

※シャニマスの始め方とコミュを読むための攻略方法は田中さんの記事がすごくよくかけているので、そちらに預けます。

<五色 爆発!合宿 クライマックス!>始まり、そして思い出を残すためのカメラ

【遊びも本気で】有栖川 夏葉

シャニソンの放クラ最初のプロデュースシナリオの「原作」にもなっているシャニマスでも最初の放クライベコミュ。

ストーリーの大枠は一緒で、終盤の果穂のセリフはシャニソン側でも涙腺をダメにしそうにしてきましたが、同じシーンでもシャニマス側ではまた異なったフレームで納められています。

合宿の記録係として躍動する果穂ですが、そのミッションの通り、活動してまだ時間もあまりたっていない放クラにとっての楽しい合宿の思い出を残すための手段としてカメラが登場します。

でね、カメラ。これぐらいちゃんと小さいんです、シャニマスでは。

【百色ふぉとぐらふ】杜野 凛世

わかる人にはわかると思うんですが、学童とかでよく使うカメラこれがち。

<轟!-とどろき- 紅蘭偉魔空珠†番外地>これは単なる「ドラマ」ではない……!?

【紅蘭偉魔空珠に挑め!】園田 智代子

シャニソンのカード(カードゲームの方)にちらほら出てくる、なんかヤンキーっぽい衣装の元ネタになっているのがこのなんか湘南風の漢字だらけのコミュ。

内容としては、本編はほぼ(誇張抜きで 99%)放クラが出演する WEB ドラマがそのまま流れます。

ただ、一部の界隈からは「これはドラマというカメラを通した実質放クラ結成コミュなのでは……?」というシャニマス読者特有の懐疑心の言葉が上がり、完全に否定することができないこともまた恐ろしいところ。

※このイベントコミュの報酬カードである【紅蘭偉魔空珠に挑め!】園田 智代子のコミュもぜひ読んでみましょう。思っているより大事な情報が埋まっています。

<階段の先の君へ>放クラを映すために、放クラが映るために

【坂道だらけのこの街で】西城 樹里

(カード名良すぎだね)

寮組の樹里・凛世を筆頭に事務所周りの地元の商店街に人気な放クラが商店街の豆まきイベントに出ることになるイベコミュ。

商店街のいろいろな人たちが出演して、放クラが愛されている描写が描かれると同時に、放クラからどのように返せるかを考える姿がちょっと切なく描かれています。

写真館のおっちゃんがめちゃくちゃ人気なことでも一部界隈では人気なコミュですが、ここでは『五色爆発』と同様に思い出を残すためのカメラだけではなく、とある人のための樹里が見つけた新たな目標としてのカメラが描かれていることが印象的なコミュでもあります。

<many screens>誰かを助ける人を応援する人として

【続!(完全)燃焼】小宮 果穂

『茜色ドローイング』でも描かれていたように、放クラは「応援する人」や「誰かを助けるヒーロー」として描かれることも多々あります。

その象徴的なイベントコミュがこの『many screens』なのですが、上記カードにあるようにオンラインミーティングが世間的にもかなり浸透した 2020 年 8 月末のコミュです。

「オンラインでの繋がる手段はあるものの、そこでかけられる応援の声をより強く伝えるためにカメラを on にしたまま声を送ろう」という放クラが作るつながりと応援の場がこのコミュの大切なシーンから感じられます。

公開時期的にも誰かの命を助ける人に向けて大きな声をだして応援する、というメッセージも込められているのかなと思いつつ、ろうそくの火の揺らめきとオンラインミーティングツールのマイクボリュームの赤い揺らぎを暗に重ねるなど、いわゆる「シャニマスらしさ」もこのころからはかなり顕著になっている印象です。

あと、【続!(完全)燃焼】小宮 果穂の『ぼくらのマクラ』はガチの名作。

<ミッション・コンプリート!>カメラがどうとか関係なくて

【code:SH☆☆TING star!】園田智代子

体験型イベントとアプリゲームのコラボ企画の宣伝隊長として選ばれた放クラが、コラボ企画プロモーション用のゲームに挑むコミュです。

迫真の放クラに対して妙に冷静な子役の温度感の違いがまた面白さの一つではあるのですが、だからこそその温度差が生じるような一種の「カメラの暴力性」に対して放クラたちがどのように向き合っていくかが良く描かれていたように思います。

先ほども言及した「誰かを助けるヒーロー」としての放クラがよく描かれている作品です。

<アフター・スクール・タイム>二つのカメラ

【明日の思い出で笑って】有栖川 夏葉

(カード名良すぎ!!!!!!!!!!!!!!!!!!)

「産休に入る前に生徒たちにサプライズをしたい」「産休に入る先生にサプライズをしたい」という手紙を同時に受けた番組がちゃんと投稿内容を見て(これが一番偉すぎる)、互いにサプライズを企画する姿を放クラたちが全力で応援するコミュです。

放クラのファン過ぎてちょっとオタクなところを隠せない先生視点と、そんな先生の影響をうけてすっかり放クラファンになっている生徒視点それぞれのカメラが回りながら、時折二つのカメラが交錯しそうになるスリル感も味わえて、終盤は放クラコミュらしく優しくずんと心に思い出を残していく傑作です。

夏葉 Landing Point とかまで読んでいるとまた、ね。こう泣けてきちゃって……。

<夢色ストライド、どこまでも>心の中に今も残っているあの背中について

【日々の灯り】西城 樹里

あまりにも構成要素に丸が多すぎる園田智代子の姿が印象的なカードが報酬のこのコミュですが、他のコミュと比べてしまうと大きなカタルシスとかはないものの、じんわりとした読後感が味わえて好きな人も多い印象です。

活動も長くなってきた放クラたちに対して、憧れを抱いてくれる人たちと出会いながら、自分もだれかに憧れていた時期があったなとか、その人物との思い出を優しく振り返っていきます。

直接的にカメラそのものが働きかけるところは正直少ないですが、憧れを抱いて誰かを追いかけていた自分から、誰かに憧れられる自分という被写体とカメラマンの対応関係を並べながら思い出と向き合い、放クラとしての次の一歩への決意表明のようなテーマが描かれています。

また、このコミュを踏まえて樹里 STEP も読むと良いとされている。

<綺羅星ルックバック>俺、園田智代子のことが好きでさ……

【chocolate next door】

芸人との旅番組ロケをする放クラの姿がストーリーの大筋として描かれますが、それと合わせてこのコミュで大切に描かれるのが小宮果穂と園田智代子の関係。

園田智代子が果穂に「ちょこ先輩」と呼ばれるようになったきっかけなど、初期の関係性を照らし出しながら、ここでもまた一種の「カメラの暴力性」と向き合う、『many screens』と『ミッション・コンプリート!』の二作品の正当後継作品のようなポジションとしても輝きを残すコミュです。

……俺さ、果穂の悩みに一緒に向き合う園田智代子のことが好きでさ。学校の先生よりは学童とかの児童支援員として活動してほしいな……。でもあの劣悪待遇業界にはいってほしくないな……などの個人的な感情が渦巻いしまうぐらい、園田智代子の優しさと強さが心にぐっと残るコミュです。

園田智代子さん、アイドルになってくれて、アイドルを続けてくれてありがとうございます。

おわりに

樹里のよくわからない顔とポーズとともに果穂が言っているように、写真って、におい以外は全部残せるんですよね。

『ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス』6 話「きのうが、永遠になった」より

写真ってにおい以外を残せるし、歌は時間を繋いでくれる。

でもこの空間のにおいも感じたいかもしれない。

遠近法で頭の高さがやっと揃う身長差愛おしいね。

小宮果穂が本気になれば園田智代子はなすがまま受け入れるしかない、そういう体格差なのだと改めて感じさせられる一枚。小宮果穂はそれを理解した上で葛藤をするし、園田智代子ももちろん理解した上で最終的にすべてを受け入れるのだ。


いやでもやっぱりカメラデカくない?


<明るい部屋>放クラが繋ぐ部屋と「世界」

【日を食んで、夜を啜って】杜野 凛世

それはそれとして紹介するのを忘れてはいけないのは『明るい部屋』。

オート再生で 2 時間を超える 2020 年のクリスマスコミュであるこのコミュタイトルは、フランスの批評家・思想家として活動していたロラン・バルトの同名の著書 "La Chambre claire" があることがシャニマス仕草として有名です。

この本でのカメラに関する哲学や議論については、実はアンティーカとともに紡がれる翌年のクリスマスコミュ『感光注意報』に預ける部分は多いのですが、シャニマスの当時実装されていたアイドル全員が出てくる『明るい部屋』のカードに放クラが選ばれ、このコミュが伝えたい主張を放クラの言葉でまとめていく姿は、放クラとカメラの関係を踏まえてシャニマスとしての『明るい部屋』を描くんだ、というシナリオライターの心意気を感じます。

先ほども言及した通り 2 時間を超えるコミュなので、ちょっと腰を据えて読む必要があるのですが、七草家に関する情報を知りたい人にもオススメです。


それでは~。

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