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バーチャル・インタビュー ――『voices -LIVE FUN!!-』のあとがきにかえて

(取材・文:蜷川)

それでは、まず最初に自己紹介をお願いします。

蜷川になかわと申します。アイドルについては広く興味がありまして、単純な時間とお金の割き方ではアイマスよりどちらかというと主にリアルアイドルのほうに偏った生活をしています。アイマス歴としては 765 プロ~モバマスあたりまではなんとなくニコニコで見ていて、アニマスはアニメとして見ていたという距離感でした。もともと MONACA のオタクでもあったので、その後デレステやデレアニのタイミングでこちらから能動的に接するようになりました。シャニマスは事前登録をして 1st LIVE あたりまではなんとなくやっていて、その後 1 年間あまり触れない期間を経て、ノクチル加入の時期で再度のめりこんでいきました。Vtuber の配信もよく見ていたので、当時はシャニマス配信を渡り歩いていましたね。コメントなどのアクティブな参加はしていませんが、今も固定で見続けている方から新規で始めた方などまんべんなく観察をしています。他には定期的に音楽やたまにコミュについての note を書いています。

☆voices-LIVE FUN!!-を始めるきっかけ

メンバーの募集からおよそ 4 か月を経て完結しました本企画「voices -LIVE FUN!!-」を始めようと思ったきっかけを教えてください。

蜷川:初動の動機としては 6th 大阪で LIVE FUN!! の開催が発表された際に公開された特設サイト内で、ライブの説明文……案内文?を見たことです。

LIVE FUN!! -beyond the blue sky- HP より

蜷川:当時 6 周年を迎えるぞというタイミングで、年度内にはシャニソンリリースとシャニアニ 1 期の先行劇場公開もあり、物の運び方の上手さこそ議論の余地は残りますが新しい試みの多い 5 周年イヤーでした。他コンテンツを見ていても 5 年を乗り越えるといったんの円熟期といいますか、初期構想の手札を使い切る時期になるケースをよく見るのですが、その中で明確に新しいことを始めよう、様々な可能性に挑戦しようという意思は、振り返るとロゴの変更からもメッセージとして感じ取れるように思います。このような新しい試みは、既存ファンへの還元という側面も少なくはないと思いますが、やはり新規ファンの獲得というところが大きくあるというのが定石です。そんな中で今週末開催される『LIVE FUN!!』は先ほどのテキストやキービジュアルからも、シャニアニなどから入ってきた新規の方を重きにおいたコンセプトのように見えます。と、このように公式が新規ユーザーの獲得・囲い込みをしているのなら、烏滸がましいですが一ファンとしてそこを僅かながらにも推し進めるサポートができる方法は何かと考えていました。その上で、新規枠の拡大という話では、本企画稼働後特に大きな流れのあった学マスのリリースも無視はできないように思います。もちろんサンプルの偏りには十分注意する必要がありますが、学マスが初めて触れたアイマスシリーズだという方も少なくないようで、そういった層を如何に他ブランドであるシャニマスに引き込むのか、というのも一つの重要な視点だと一個人として考えています。シャニマスから学マスに移ってしまうことがどうしても強く印象に残ってしまいますが、シャニマスを好きでい続ける側としてはそういう人たちにどう好きでいてもらうかに頭を回したいですよね。そういう意味では最近の園田君の目覚ましい活躍は、もちろんその形こそ賛否というか真摯さへの疑念を生みやすい形とは思いますが、実績としてしっかりと良い方向に評価したいなと考えています。……と、こういう考えから何か新しく入ってきた方へシャニマス楽曲の楽しみ方の体験談を形にできれば、という思いで本企画を始動させました。

今回の企画のインタビューやミュージックレビューという形式は、『リスアニ!「アイドルマスター シャイニーカラーズ」音楽大全』から引用をしていますね。

蜷川:はい、明確にそこをリファレンスとしたパロディ企画です。音楽のオタクとしてこういうものを全部自分で書こうと一瞬思ったのですが、できるだけ視点を広く、いろいろな人がシャニマスの音楽とその周辺の楽しみ方について語ってもらった方がいいなというのが形式というか体制を組み立てていくうえでの根本の考えになります。これを「できる」と思った理由と「やりたい」と思った理由ももちろんあります。「できる」と思った理由としては、他ブランドのみならず他コンテンツと比してシャニマスを好きな人がすごく言語化をしようとしたがる傾向にあることがあります。私自身もその傾向がありこうやって企画後の御託を並べているのですが、note のみならず fusetter など、いろいろな形で感想を文字に残すという文化があるため、音楽についてもそういうことができるメンバーが集められるだろうなと思ったのが「できる」理由ですね。……ただ、この企画のメンバー体制が固まったタイミングで公式から #シャニマス感想コンテスト なる企画が開始されるという、言語化文化の強いコミュニティ特有の謎アクシデントもありましたが(笑)。そして、後者の「やりたい」と思った理由についても明確にありまして、これは本企画の放クラ回にも参加いただいたベンプさんが『我儘なまま』に向けて動かした #シャニマス我儘なnote連作 に強く影響を受けています。私も当時公開されていなかった七草にちかソロ曲を考える記事の投稿で参加させていただきました。

蜷川:今年もライブに向けたこういうファンメイドの note 企画があったらいいな、と考えていまして、そのちょうど題材・企画として音楽大全の発売もあったのでこれでいこうというのが「やりたい」と思った流れですね。ただ、ベンプさんの企画でも SHINY CORD というサーバー内で各アイドルそれぞれの担当者を決めて、それ以外にも自由投稿大歓迎という形式をとっていましたが、インタビューがあるという本企画の形式の都合上新規を取り込むという目的でありながら主催枠としてはかなりメンバーを募りつつも大きくは広げなすぎない方針を取りました。もちろんミュージックレビューの自由投稿も歓迎をしていて、ありがたいことに投稿いただいた方もいらっしゃいが、正直企画始動時点で昨年度のベンプさん企画よりかはハードルの高いものになるだろうなという想定はありまし、実際難しかったと思います。改めて今回自由投稿で寄稿いただいた方々にこの場をお借りして感謝いたします。

☆この企画の運営やその際に意識していたことなど、ちょっとした裏話

そのような想定を持ちつつの企画とのことですが、実際の進行のプロセスはどのようなものだったでしょうか?

蜷川:まずは先ほども紹介いたしました SHINY CORD という Discrod サーバーと Twitter(現X)でインタビューとミュージックレビューに参加いただける方を募りました。

蜷川:このサーバーではテキスト・ボイスチャットのみならずコミュ語りや音楽語り、スライドを用いた発表、ライブに向けたコール本やフラスタ企画など様々な企画がそれぞれが持ち寄る形で動いていまして、その中で過去に交流いただいた方が今回の声掛けで集まってくださったなと感じています。実際、昨年のベンプさん企画の参加者も結構多いですね。そのような範囲でメンバーを募集させていただいた際に、どのユニットを担当したいかのアンケートも同時にとりまして、可能な限り希望に沿う形でユニットごとの担当者を決めました。メンバー確定の際には立候補いただいた方の SNS や note などをちょっと気持ち悪いぐらい観察しまして、どういうタイプの方なのか、どういう方面に興味が強いかなどを徹底調査したうえで、似た人を集めた方が盛り上がるユニット・多角的に議論した方が面白いユニットなどのイメージを持ちながら配属を決定させていただきました。この人事(?)の段階でユニットごとの方向性は半分ぐらい決まっていたところはありますね。また、今回のメンバーの中で、「音楽二次創作座談会」枠についてはこちらから楽器やジャンルの異なるメンバーにお声がけさせいただきました。完全にこの回は私が聴きたいことを聴く時間でしたね。お声がけした全員にご快諾いただけたのは本当にありがたかったです。

今回はこんな編成でした。

蜷川:こうしてメンバーが決まった後は、インタビューに向けて事前アンケートの記入をそれぞれの担当者へお願いしまして、シャニマスを始めたきっかけや担当という自己紹介から各ユニットの印象、そして楽曲のことまで幅広く聴かせていただきました。ここで意識していたのは曲のことだけでなく、コミュなども含めたシャニマスというコンテンツ全体での話を聞くようにしました。意図としては音楽知識のばらつきはどうしても生じてしまうので、そこを逆手にとって曲以外の側面の楽しみ方から曲に攻めていくというアプローチができればというところですね。そんなイメージをしながら、インタビューでは事前アンケートの回答を軸に、時々脱線をしながら思いのままに語っていただきました。先ほど改めて収録データを振り返ってみたのですが、全 13 回で収録時間トータルで24時間超えでしたね。平均2時間弱だったのですが、前半のとある回で4時間半を超えるものがありました。

蜷川:記事の形にする文字起こしには一回平均で4~5時間ぐらいかかったかなと思います。当初は Notta という文字起こしサービスを利用しようとしたのですが、思ったより識別できない固有名詞が多かったのもあって、……4時間半にわたった大長編の Team. Stella 編からはほとんど直で聴いて手で文字起こしをしていました。作業環境は普段 note を書くときに使っているノートPCで note の編集画面を移しつつ横で録音したものを再生をしていて、脇に iPad でゲーム実況動画やひたすら移動をする鉄道系の動画などを Youtube で流していました。この企画以前にも少し文字起こしをする機会がありまして、その際に文字起こしだけに集中するのが私は個人的に難しかったこともあって、作業の横で過去に見たことのある実況動画や景色が変わる鉄道系の動画はしつこく残らない程度に注意が逸れるのでかなり重宝していました。改札から出ないで日本最東端の駅から最西端の駅まで行くやつは合計で 5 回ぐらい流していたかと思います。そんなこんなで完成した草稿を各回担当の方へ共有し、誤字脱字から細かい表現のところまで朱入れをしていただきました。……本当に誤字脱字多くですみませんでした。めちゃくちゃお手数おかけしたかと思います。いつも指摘いただいていたので、この記事に誤字脱字がないかのチェックが入らないのが怖くて怖くて……。で、その確認や編集をお願いする傍ら、各担当から提出いただいたミュージックレビューの体裁を整えて、最終稿を投稿担当へ共有して毎週日曜に投稿、という流れです。確かに文字起こしにはある程度時間をかけていますが、事前アンケートからインタビュー、ミュージックレビューの執筆に草稿チェックなど担当の方みなさんのご協力あっての完走になりますので、普段ペコペコしてる性格ですがここでも改めて感謝をお伝えできればと思います。

インタビューの事前アンケートや文字起こしの構成上で気を付けていたことはありますか?

蜷川:先ほどシャニマスは文字で感想を伝える文化が強いとは言ったものの、新規層においては必ずしもその限りでないと思いますので、文字数のハードルとしてインタビュー部分が 12,000 字を越えない程度で収まるよう内容の取捨選択をさせていただきました。内容に関しても想定というか形式としては、塾の合格体験記だとか、大学のパンフレットにある在学生インタビューのような、経験者がこれから経験していく人に向けた案内のようなものになるよう事前アンケートや話の舵取りをしたつもりです。教育業界の端っこにいることもある身として普段の note もこういった意識をもって音楽系の記事を書いているのですが、本企画もそういう思想の元で参加いただいたみなさんそれぞれのシャニマスの楽しみ方・面白いと思っているところを語っていただきました。この思想のもとで進めているため、「このユニットはどういうユニットですか?」という入り口から必ず入るようにし、そこからどんどんと深堀りをしていくという構成を取っています。そういうグラデーションを意識しながらだんだんと話を深めていって、それぞれのメンバーの良い意味での「煮詰まり」のところまで達するという構成は共通しています。二次創作回でも、まずは活動の紹介から、どういう風に普段見る活動につながるのかというお話、そして調性選択の話というまあまあコアなところというように内容の深さの段階はかなり意識していますね。

ミュージックレビューのチェックではどのようなことを意識していたでしょうか?

蜷川:ミュージックレビューは実はほとんど私の方で編集をせず、括弧の使い方の統一などのフォーマット的なところだけを少しいじらせていただく程度で、ほぼ各担当の生の言葉が最終稿となっています。もちろん私だったらこう書くな、という思いは良い文章に対してでも抱えていましたが、それをしてしまっていては私個人が書くのと同じになってしまうのでそのままを尊重しています。他の文章を考えるのは、Team. Sol 編でそれぞれが執筆したレビューの草稿に対して議論いただいた内容を私自身も毎回やっていました、という感じですかね。今回のメンバーにはアルスト編とノクチル編で参加いただいたツァッキさんが主宰された『SHINOGRAPHIA』というエッセイや小説、詩、評論の文学同人誌に参加しているメンバーも主宰本人含め複数いまして、他にも note 記事を書かれている方も多いですが、一方で文章をあまり書いたこともない方も少なくない割合でいましたので、今回のレビューという短文の企画で文字で感想を残すという方法のきっかけになってくれたらな、という思いもなくはないです。実際、自由投稿の方で参加いただいた方については、この企画をきっかけに文字で感想を書こうと思ったとおっしゃっていただいていましたので、その狙いが実際に形になったことは私自身すごくうれしく思います。

企画でうまくいったこと、逆にうまくいかなかったことを振り返るとどうでしょうか?

蜷川:うまくいったのは……、まず完走できたのが私自身よくやったなと思います。元来相当な飽き性なので、13 週連続で文字起こしの時間をコンスタントにとって投稿までこぎつけられたのがなかなかな奇跡だと思っています。スタート段階はほとんどその場のノリで動いていたので、実際動かし始めてから(結構やばい企画動かし始めちゃったな……)と思っていました。ただ、先ほどの誤字脱字チェックもそうですが、各担当の方の多大なる助力の元で完走できました。本当にありがとうございます。うまくいかなかったことについては、先ほども初期想定で投稿のハードルが高いイメージを持っていたとは言いいましたが、自由投稿の波及が難しかったな、というのがあります。これは形式の難しさの問題もあるのですが、シンプルに私自身の企画の宣伝力が足りていないというのが大きいかと思います。もっとなりふり構わず宣伝をしてもよかったのかなと思いますし、余力があればミュージックレビューだけの編集メンバーを別途募ることもできたのかな、と今振り返れば思うところはいろいろありますね。ただ、投稿記事の宣伝については各メンバーの RT などのご協力もあって、音楽に偏りがあるように見える記事にしては平均的に多めのいいね数をいただいていたかと思います。あまり数字についてこだわるのはファンメイド企画としてどうかと思うのですが、今回目的として新規層へリーチというところがしっかりとしているため、いいね数、特に note アカウントのないいいね数などはある程度その指標として眺めてみていました。

☆今後やってみたいことについて

それでは最後に、LIVE FUN!! 後に書いてみたい記事や、やってみたいことについてお聞かせいただければと思います。

蜷川:まず、本企画の記事を読んでいただいた方、そして自由投稿枠も含め執筆に参加いただいた方に改めて感謝いたします。インターネットの端っこで音楽のことをしゃべりながらクネクネしているオタクの声掛けでこういう一つの形を作れたことは私自身の経験としても非常に大きなものとなりました。今後ですが、まずシャニマスのコミュなどを読むのを追いつきたいと思います。文字起こしで週のフリーな時間のまあまあな時間を取られていましたので、お恥ずかしながら実はまだ手を付けられていないコミュも結構あったり……という状況です。8月に休みの期間があるので、そこを使いながら取り戻したいですね。あとは記事についても気づいたらシャニソン CD についての記事が CD 3 枚分溜まっていますし、ECHOES もすでに 2 枚出ていますので、記事の分量や形式なども考えながらこのレビュー記事はこれからも継続していきたいです。そして、記事についても確かに宣伝ではあるのですが、今後の活動の宣伝として、「voices」という名前をそのままに主にアニメ・ゲーム・アイドルを対象とした音楽交流コミュニティを Discord で始めてみようと考えています。

クリエイターだけでなくリスナーも音楽がちょっとでも好きな方が対象で、最近聞いている曲や参加するライブの宣伝、これはお客さん側でも出演側でもですね、だったりだとかをして、好きな音楽を伝え合って、知らないコンテンツへのきっかけができるコミュニティになればと考えています。普段の交流の記録や宣伝は定期的に note などでも発信をしていき、参加者と対象ジャンルの拡大をしていく施策を行う予定です。追って当該コミュニティのサーバー情報や始動記事の投稿もする予定なので、ぜひそちらもご確認いただけたらと思います。……と、大宣伝をしてしまったのですが、これは今回の企画をしていくなかで、こういう交流の場所を作ることに何か意義があるのではないかと思ったところが動機となっています。シャニマスの音楽だけでもそれぞれの人のとらえ方が違って、それぞれの音楽のバックグラウンドの違いや二次創作活動も様々あるなかで、音楽に関する情報が集約される空間は音楽に少しでも興味がある人には有用なのかなと考えました。スタートはこじんまりとしたコミュニティになるかと思いますが、できるだけ頑張って大きなコミュニティに育てていければと思っています。その結果、そのコミュニティ経由でシャニマスに一歩でも深く入っていただける方が増えてくれたら、という願いがありますね。

最後の最後にシャニマスへの思いを一言お願いします。

蜷川:シャニマスに限らずですが、あらゆるコンテンツにはこれまでいた人、これから入ってくる人の流動が一種の運命としてあるかと思います。その中で、一瞬でも触れてくれた人に少しでも楽しいと思ってもらえるようなコンテンツになってほしいですし、そうなるように一ファンとしてそれを伝えることができたら好きでいられる人間として冥利に尽きると思います。来年の TIF には放クラを出してください!!!!!

CDかシャニマスのフェザージュエルに濃縮還元されるサポート