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voices -LIVE FUN!!- Team. Sol 特集

FUN INTERVIEW

(取材・文:蜷川)

それでは最初に簡単に自己紹介をお願いします。

岡山ディヴィジョン(以下、岡ディ):岡山ディヴィジョンと申します。Teaml. Sol に属するアイドルでは雛菜が担当アイドルですが、先日のファミ通のアンケートで好きなアイドルを 5 人選ぶ欄があった際にめぐると樹里を選んでいたので好きなアイドルが多いチームでもあります。今日は気合が入っていると言いますか、良いお話ができればと思っています。

ああああです。担当はめぐるとイルミネーションスターズです。Team. Sol はめぐる曲があることもあってよく聴いていたので、こちらの方にも参加させていただきました。よろしくお願いします。

フィリアフィリアと申します。ストレイライト回の方にも参加させていただきまして、黛冬優子の担当とは名乗っていないのですけれど、Team. Sol の中ではやっぱり冬優子のことをよく見ているかなと思っています。よろしくお願いします。


☆ソロ曲の魅力とTeam. Sol に所属するアイドルの印象

それぞれお三方はユニット回でもご参加いただいておりますが、それに対してソロ曲のどのような魅力がありますか?

ああ:もともと 765 プロからアイマスに入ったのでアイドル 1 人ごとに曲があること自体にはすごく馴染みがあり、主にユニット単位でリリースされていくシャニマスにはソロ曲への思いみたいなものがより強く感じるなと思っています。特にライブの時にはいつもユニットで隣に誰かがいる状況なのに対してソロでは一人ですが、それでも他のメンバーが隣にいてくれるような、後押ししてくれるような関係性を感じられるところがシャニマスのソロ曲の好きなところです。
フィリア:私も若干共通するところがありますが、普段歌唱パートを割り振って歌っているユニット曲とは違って、1 人で 1 曲をまとめて歌うこと自体がシャニマスの曲の中でのソロ曲の魅力の 1 つかと考えています。例えば初期の放クラだと樹里が落ちサビのいいところを歌唱していたり、『愚者の独白』での摩美々のソロパートなど、ユニット曲の中でのソロパートの魅力はもちろんあるんですけど、そういうパートも含めて全部を一人のアイドルで歌いきるところが特徴として外せないポイントです。もちろんソロコレで 1 人で歌っているところは聴けるのですが、ユニットの中での歌唱の役割みたいなものもあると思っていて、それに対してソロ曲は全パートがそのアイドルのために作られているところが大きな違いだと思いますね。
岡ディ:私もやはりユニット曲でしか見られない魅力ももちろんある上で、そこで気づけなかった、引き出せていなかったそれぞれのアイドルの側面に注目できて、すごく贅沢な時間を過ごせるところが魅力かと思います。アイドル一人の普段の性格とユニットのカラーが違うからこそ、ソロ曲になるとアイドルとしての見え方が変わる瞬間があるところも含めて、聴いている時間は様々なアイドルの側面へ思いを馳せられる時間になります。

そのようなソロ曲ですが、Team. Sol ではどのようなアイドルが集まっていると思いますか?

フィリア:黄色や緑のイメージカラーが多い色での分け方はもちろんある上にやはり Sol、太陽を掲げたチームであることもあるものの、太陽のイメージとしては燃え上がる情熱的なものというよりは、優しい陽光や木漏れ日のような明るさと温かさ、爽やかさを感じるアイドルが集まっているように思います。
岡ディ:そうですよね、私も似たイメージでして、強い輝きを持っている一方で寄り添ってくれるような優しさはこのメンバーには共通しているところかなという気はします。まさにめぐるは象徴的な例で、人を照らしてあげられるだけの輝きを持っている一方で、眩しすぎて心がしんどくなるようなときにも夜の片隅においてほしいと語っていますしね。情熱的な側面のあるアイドルは確かに多いですが、ただただ熱いだけじゃなくてそれと必ず一緒に寄り添ってあげられる暖かさは付随しているように思います。
ああ:確かに Team. Sol のソロ曲では応援歌のような印象を与える曲は他のチームと比べて多いですよね。
フィリア:Team. Sol のチーム曲である『SOLAR WAY』も単純な熱量というよりかは、そういった側にいるというメッセージ性が強い曲になっていますね。
岡ディ:あと『SOLAR WAY』って他のチームの CD とは違って一番最後に収録されているんですよね。それもすごく象徴的だと思っていて、みんなの照らすだけじゃない寄り添う姿勢をそれぞれのアイドルらしく描いていった流れを汲んで、最後に「逃がさないよ」「絶対離さないよ」という力強いメッセージでまとめるところからも、まったく情熱的なところがないわけではないけれど、それでも根本に共通して寄り添ってあげる優しさを改めて感じられるという構成になっていて、これも Team. Sol の魅力というかならではな要素だと思います。
ああ:だからこそなんですけど、3rd ツアーの Overture の映像は Team. Sol をイメージした黄色・緑を中心としたものだったのですが、バックに燃え上がるような天体としての太陽が出てきたときには「寄り添ってくれるアイドル達」というイメージが先に固まっていたので一瞬何の演出なんだと戸惑ってしまいましたね(笑)。別にそれが悪いことというわけではなくて、Sol って太陽のことかって改めてそういえばそうだったと思わされたシーンでした。
フィリア:シャニマスに関係なく何の前提もなしに太陽のイメージってどんなのかと聞かれたら確かにあの太陽になりますよね。
ああ:シャニマスをやっていると、めぐるからは特に「誰かに寄り添える輝き」というのはもう無条件で外せない要素に感じちゃいます。
岡ディ:やっぱりめぐるのイメージは強くなりますよね。
フィリア:咲耶でも夕日の話はありますし、マイコレのカードでも夕日と星空が同時に見えているような景色が描かれていて、咲耶にはそういった景色が見えていてほしいと願ってしまうところに、単純に昼に照らすだけではない太陽のいろいろな描かれ方もアイドルごとに違っているのかなと感じます。
岡ディ:咲耶にとって黄昏のシーンって初期から大切に描かれている印象があって、それこそ S.T.E.P でも夕方って友達と離れて家に帰り、孤独な夜が始まってしまうというところがしっかりと描かれていました。【紺碧のボーダーライン】という一番最初の PSSR からずっと描かれていることですが、そういった斜陽が寂しさの訪れだということを知る咲耶だからこそ Team. Sol でありながら「千夜一夜」という夜の物語を歌って、星の輝きを見せに連れて行ってくれるっていうのがなんて優しい歌なんだろうって、すみません、言いながらやっぱりこれすごく感動しちゃうんですよね。かっこいい曲なのに優しい曲なんだって気づけた瞬間には思わず泣いてしまいました。

【紺碧のボーダーライン】白瀬 咲耶

フィリア:【幸福のリズム】もまさに夕方のコミュですよね。
岡ディ:はい……、まさに……。……あとは夏葉とかも、表に出やすいキャラクター性としてトップアイドルを目指しているところやストイックさがあると思うんですが、その一方でそうじゃない側面をコミュを通して知っていくと、「強いだけじゃ弱い」というキーワードとともに『Damascus Cocktail』を聴くと Team. Sol の美学がすごく詰まっていると思います。
ああ:夏葉のマイコレめちゃくちゃよかったよな~~~~。
岡ディ夏葉のマイコレはめっちゃ良い!!!!
フィリア:え~~~、持ってない~~~~~~。
岡ディ:マイコレのコミュの中でも私の中では TOP3 に入るかなと思うぐらいのコミュですよ、あれ。
フィリア:うわ、そうなんですね……。
ああ:先ほどの話ももちろんありながら、夏葉としての強さも、「一秒前の自分に勝っていたい」というフレーズと向き合うところでもしっかり描かれていて、歌詞に説得力を持たせるコミュになっていました。
岡ディ:鮮烈な輝きを持った存在であるときに、その鮮烈な輝きっていうのがどういうものなのかという問いを立てて、ものすごく身近で一種卑近なものと手を取り合っているからこそ、その輝きを鮮烈に感じるんだという彼女らしい「特別さ」の在り方が描かれていまして、これについては Team. Sol の面々それぞれにそういった魅力を持っているように思いますね。
フィリア:その観点をもらうと私は樹里が Team. Sol にとってのキーのような存在だと思っていまして、人の痛みを知っている人だからこそ描ける寄り添う時の近さというものは確実にあるんじゃないかと考えています。
岡ディ:マイコレ樹里もすごくよかったし、Team. Sol のメンバーのマイコレはすごく良いコミュ揃いなのでオススメです。

☆Team. Sol の中で好きな曲

それでは次に、ミュージックレビューの方でも語っていただいておりますが、改めてTeam. Sol で一番好きな曲をそれぞれ伺えたらと思います。

岡ディ:私は樹里の『過純性ブリーチ』が特に好きです。曲がすごく爽やかで樹里っぽいなと思う一方で、歌詞の 1 つ 1 つが繊細なところもまた別の側面で樹里っぽいなと思います。放クラってユニット自体が疾走感があって、ハチャメチャ感があって、わちゃわちゃ感もあって楽しいけれど青春に対する繊細なまなざしも持っているところが魅力的で、樹里自身が持つそういった魅力もソロ曲から感じられるところがいいな、と。私が樹里のコミュの中で一番好きなのが【花染む街で、君と】というカードなのですが、あのコミュではドラマチックな物語は起こらないけれど、ただ桜が咲いて散っていく情景を見て樹里がぽつりと自分の人生を重ねるところが好きなんです。

【花染む街で、君と】西城 樹里

岡ディ:『過純性ブリーチ』の歌詞でも、たまたま見かけた何かとかたまたま強く吹いた風になんとなく励まされたような気持になってしまうという歌詞が描く樹里の感性にすごくきゅんと来てしまいます。彼女自身が再スタートを切った存在なので自分自身への歌でもあると同時に、それを通じて私自身も励まされているような気持になって、曲としてめちゃくちゃ好きですね。
フィリア:「過純性」っていう造語のバランス感というか描こうとしているものへのジャストフィット感すさまじいですよね。「過」とつけたけれど行きすぎた悪いイメージみたいなこともなくて、「純」を突き詰めた先にある肯定的なイメージのものがあるんだな、と。
ああ:あとはやっぱり『我儘なまま』での『過純性ブリーチ』もすごかったですよね。「応援歌」としてもうこれ以上ないステージだったと思います。
フィリア:『我儘』での披露だと、コールが入るだけですごくイメージ変わりましたよね。正直あまり聴きこんでいる曲ではなかったのですが、あの会場でコールをした際に巻き込まれた一体感みたいなものから感じる爽快感が音源で聴いている時とは比べ物にならなかったです。音源とステージで一番イメージが変わった曲でしたね。
岡ディ:樹里 S.T.E.P 公開から少し経ったタイミングだったこともあって、樹里がここまで人を応援できる存在になったんだなという感動もありましたね。
ああ:『我儘なまま』の流れで言いますと、私の一番好きな曲は『Damascus Cocktail』でして、……だって「『我儘なまま』」なんだもん、この曲。
岡ディ・フィリア:(笑)
ああ:いやぁ……、3rd 東京で無観客でのソロ曲披露になってしまったことに対するある意味でのリベンジ公演という文脈はもちろんあるのですが、事前にパンフレットを読んでいたら大トリが夏葉だということ自体はわかっていまして、その期待感もずっとあったうえで DAY2 にあのパフォーマンスを観られたというのがなんというかうれしかったです。
フィリア:DAY1 の『ありったけの輝きで』も似たような期待はありましたが、殊 DAY2 については普段センターポジションを取るようなアイドルでない夏葉が千秋楽の最後のステージを飾るというのがアイマス全体を見ても今までなかったことなので印象的ですよね。でも、有栖川夏葉というアイドルを考えると、そういったステージを任せる価値があるというか一種の必然性みたいなものもあるのは改めて振り返って思うところですね。
岡ディ:普段の有栖川夏葉像としての『Damascus Cocktail』の良さだけではなく、『我儘なまま』DAY2 のストーリの総括にもなるところがすごかったですね。……いや、すごかったですよ、本当に。
ああ:現地では透の『statice』や円香の『夢見鳥』が曲として単純に聴きごたえがあったなって思います。
フィリア:シャニマスのソロ曲って全体的に静かというか落ち着いた曲調が多いなって印象はありますよね。他ブランドでのソロ曲はもちろん好きなんですけど、こういったしっとりと聴かせる曲って少ないと思うんですよ。例えば『SOS』とかでもかわいい曲には仕上がっていますがコールをガンガン入れるような曲ではなくて、そういった曲が多いのはできるだけアイドルたちのパーソナリティに迫っていきたいという気概の結果論みたいなものを感じます。283 プロという「家」にいる彼女たちの歌というのがこういう歌なんだな、と。
岡ディ:『statice』は特に歌を聴かせる曲というイメージが強いですよね。
フィリア:私が一番好きな Team. Sol の曲は『statice』でして、アイマスのソロ曲でこんなに自己紹介しないんだ、というところにまず驚きました。もちろん浅倉透らしさのようなものは前面に出ているんですけど、ただ「浅倉透というアイドルです」というメッセージ性というよりかは、浅倉透が浅倉透として歌う曲として魅せているというか、浅倉透が彼女らしく歌を歌えば彼女の歌になるという曲になっているのがすごいと感じています。そういう意味でも本当に力みがないんですよね。その脱力をした彼女らしさがあるなかで、ラスサビ前の「信じてみよう 自分で選んで 決めたこの路を」という歌詞から確かな決意を感じて、……すごく不思議な曲です。
ああ:そうですよね。聴いたときに「浅倉だ」ってなるんですけど、じゃあどういうところでそれを感じているのかというのがなかなかうまく言語化できないというか。
岡ディ:そういった「掴めなさ」も含めて浅倉透という存在そのものみたいな曲ですよね。
ああ:……そういえば、3人それぞれの好きな曲って担当の曲じゃないんだね。

裏の話になってしまうのですが、ミュージックレビューの担当割り振りも担当の曲を書こうとしない武士道精神みたいな譲り合いがあったので、これって担当だから逆に書けないみたいな力学が働いたというわけではないのですか?

ああ:『我儘なまま』の前からずっと『Damascus Cocktail』好きですね。
岡ディ:私も担当の曲も好きですけど、一番ってなると『過純性ブリーチ』ですね。
フィリア:私も『S.O.S』はシャニマスのソロ曲の中ではそんなに上位ってわけではないです、実は。Team. Sol に限らないソロ曲全体では『Going My Way』と『雪・月・風・花』の 2 曲がずっとトップ争いしてますね。

☆ミュージックレビューの相互レビュー

それでは次に、そんな譲り合いもあった 3 曲について、Team. Sol 企画として担当外の曲に対するレビューを持ち寄っていただき、書く際に大切にしたポイントや担当目線でこれは入れたい、みたいなことをお話しできればと思います。

『あおぞらサイダー』

囁くような歌声は、隣にいる「きみ」と、自分にだけ聴こえるように。高校一年生の見る世界はまだ狭く、日常の刺激はサイダーの小さな泡のごとく生まれては消える。泡の上った先にある澄み渡るあおぞらに、市川雛菜の「楽しくてしあわせ」がある。市川雛菜が、「自分はこれでいいんだ」と、標を立てるような一曲。

初稿 by フィリア

フィリア:この曲って発表されたときからよく ASMR っぽいと言われてまして、実際炭酸の音や氷の音などが入っているところがまずさっと聴いた時に感じる特徴かなと思います。歌声も抑えめな感じで、この曲を聴いて思い描いた光景というのが、雛菜ともう一人だけ一緒にいる自分だけの空間だったんですよね。その青い世界だけが広がっていてそこに 2 人だけみたいな。その狭い世界と、それから先に広がる広い世界の対比みたいなものが表われている曲なのかな思いながら書きました。
岡ディ:個人的にもうこの時点ですごく素敵なレビューに仕上がっているなと思っていまして、雛菜に見てる世界というのは間違いなくキーワードというかこの曲の背骨みたいなところではあると思います。また、サイダーの泡が消える無常観みたいなものも雛菜のコミュを読む上での大切なフレーズだと思っているので、そこも的確に書かれたレビューになっているかなと思いますね。私も今回改めてマイコレのコミュを読み直したりしたんですが、コミュを振り返ると、悪い言い方をすると『あおぞらサイダー』に関する言及を完全に投げたコミュだったんですよね。「しあわせの哲学者」のような強い女性のイメージがパブリックイメージとして先行している中、彼女が言葉にしないナイーブな感性もその中に抱えていて、そのパブリックイメージ側に寄せられた曲と彼女の中に持つナイーブな感性との距離感の取り方みたいなところに焦点が当てられていたのがマイコレのコミュの面白いところでした。
フィリア:こういう曲を歌うということはこうあってほしいということ?みたいな問いには、こうなんというかぐっと苦しくもきちんと考えなければいけない難しさみたいなものはありましたね。
岡ディ:ミュージックレビューの 150 文字なかでそれをフルで触れられる枠がないので、マイコレと絡めようとするとちょっと難しいなって、自分で書く想定をした際に思いました。
フィリア:最後の一文はなんとなくですけどそういったエッセンスを形にしようとしたところはありますね。それでも結局雛菜が雛菜の感情で歌う、その能動性に意味があると思っています。
岡ディ:楽曲との個人の感性の距離感では全体の中でも雛菜はトップクラスで難しいですね。
フィリア:歌詞としても情景の節が多いので、もう 1 フレーズぐらい情景にフォーカスした部分を削って雛菜自身に言及したところがあってもいい気がしています。
岡ディ:いや、今の状態でもかなり素敵な文章になっているので、そこに手を加えるのも正直難しいなと思っています。もし自分が書くとしたら、雛菜の世界観が楽しくてしあわせなパブリックイメージと内に秘めるナイーブな感性の中間にあるというニュアンスを一言追加できればなとは考えていました。
フィリア:そこの要素としては 2 文目に「高校一年生」というフレーズを入れたのにはそういった狙いも少しありましたね。雛菜ってすごく超然とした人間というイメージはありますが、とはいっても高校一年生じゃんという、そういった感じで先ほどの世界観の位置づけみたいなものが出せればいいなって思っていました。
岡ディただの年頃の女の子でしかないっていうこの一言はかなり効いていると思います。
ああ「人間じゃん」って言いたくなるやつだ。
フィリア:お?『絆光記』か?
ああ:いやでも、アイドルとしてのパブリックイメージと実態の乖離みたいなところでは共通しているんじゃないですか?
岡ディ:確かにそうですね。
ああ:雛菜なんて何の悩みもないみたいな印象を持つ人もいるんじゃないかなって。
フィリア:W.I.N.G のイメージが強いところはありますよね。……なるほど、難しいですね。あとやっぱり炭酸、二酸化炭素って苦いじゃないですか。苦いし、息が詰まるような。二酸化炭素を口に入れるって普通は苦しみを伴うんですよね。そう考えると、実はサイダー泡って苦しみも詰まっている、みたいなことも文字数的に入れられなかったんですけど書きながら考えていました。
岡ディ:確かに W.I.N.G の最後の方も頑張ることに対してまさにそのような言及が彼女自身からありましたもんね。……なるほど、確かに彼女の世界観への言及の着地点として炭酸に対するそういった捉え方はとてもいいかもしれませんね。

『SOS』

じれったさ爆盛り、片思いの歌。一度聴いてしまえば老若男女問わず「もしかして”ふゆ”って俺のコト……?」としか考えられなくなってしまうだろう。誰からも愛される、世界一かわいいアイドル”ふゆ”。そんな”彼女”の可愛さを前面に押し出したこの曲は、黛冬優子が人生をかけて作り上げた存在の証明でもある。

初稿 by ああ

ああ:いや~……、これ難しかったっす……。
フィリア:……まあ、かわいいもんな。
岡ディ:ストレイのユニット曲のハードでスタイリッシュなコンセプトに対して、こんなに可愛いのつるべ打ちみたいなところではユニットとのイメージは大きく変わるところですよね。
ああ:実際ファン目線で見ると冬優子とこの曲のイメージはあっていて、どちらかというと冬優子個人とストレイ楽曲との間が距離があるんですよね。だからファンとしてはうれしいじゃないですけど、ある意味ぴったりな曲としてとらえられるとは思っています。
岡ディ:そういう意味では一番不思議な距離感のあるアイドルですよね。
フィリア:……私は『SOS』があるから冬優子のイメージがユニット大きく変わるとは思っていなくてですね。少しメタ読みみたいなところがあるのかもしれないんですけど、『SOS』からも冬優子の負けたくないみたいな気持ちが感じられるんですよね。今自分が持てるリソースや頭で考えうることを全部この曲に詰め込んで、全力でこの曲をかわいいと認識してもらうようなギラツキというか勝負精神みたいなものをめちゃくちゃ感じています。ストレイのリーダーとして、表面的な聴こえ方からは直接感じられなくても、ソロ曲の中で一番かわいいと言わせてやる、みたいなメンタリティを感じています。それもあってこの曲を受けてユニット曲と比べてイメージが変わったとは全く思わなかったんですよね。
岡ディ:そういう意味ではユニットでの冬優子のイメージの延長ではあるのかもしれないですね。それこそ『Another Rampage』の最後のセリフのところもそうですけど、可愛さの中にあるギラツキやカッコよさみたいなものが『SOS』の中でも見えるのは、確かに言われてみるとそう感じます。使っている電子サウンドからもストレイど真ん中ではないけれど、まったく外れているわけでもない延長線上のものというのはあるように思いますね。
フィリア:ストレイライトのかっこよさの中に可愛さを残す冬優子の技術は確実にストレイライトの幅を広げていると思うので、それがソロ曲にも同じように表れていると思います。……この曲聴いてかっこいいって思うんですよ。
ああ:それはもう担当だよ。
フィリア:いやいやいやいや、まだ冬優子担当を名乗るには到っていないので……。
ああ:もう見方がそうなんだよな。冬優子に対する見方が完全に「プロデューサー」だから。
岡ディ:(笑)
フィリア:いや、まだファン目線で見てるけど。……確かにああさんとは視点が少し違いますよね。
岡ディ:でもレビューの方で、「黛冬優子が人生をかけて作り上げた存在の証明」っていうのはかなりフィリアさんの目線に近いところなんじゃないですか?キーワードとしてすごく重要な気がします。
フィリア:それはまさにそうですね。
ああ:そんな曲がしっかりキャッチ―で、世界一かわいい存在の冬優子の曲がこっちの世界でもちゃんとバズっているのが嬉しいですよね。
フィリア:冬優子って言語化のアイドルだと思っていまして、自分の思っていることの言語化をあきらめない、……それこそ『絆光記』の話に脱線しちゃいそうになるんですけど(笑)
ああ:みんな『絆光記』好きだねぇ。
フィリア:それの中で、この曲の中に彼女の思いを言葉として載せられるのかという観点からしても面白い曲だなと思いますね。
岡ディ
:歌詞自体は抽象化した女の子の歌という印象が強いので、よりエッセンスとして入れるとしたら「ストレイライトの黛冬優子」の力強さをもう少し濃くできるといいのかもしれませんね。
フィリア:あとこれは与太話で全然レビューに入れなくていいんですけど、マイコレ、S.T.E.P、【三文ノワール】、【ノンセンス・プロンプ】の流れもね、すさまじくて。
岡ディ:ああ~~~~。
ああ:バケモンしかいない。そう思うと発端ってたしかにマイコレだったわ。
岡ディ:冬優子のアイデンティティの話がああやって展開されていくとはマイコレ時点では思いもしなかったですよね。
フィリア:そういったところも含めてかもしれないですけど、プロデューサーだからこそ知っていることは予感程度で抑えたいですよね。そこに深入りしちゃうと音楽に対するレビューとしては書きすぎみたいな印象が出ちゃうかもしれません。通りすがったときにちょっと香って振り返らせる程度、みたいなぐらいがちょうどいいのかも。

『HAREBARE!!』

ぎょっとするほどに真っ直ぐな「ハレバレ‼ガンバレ‼」という歌詞に、八宮めぐるの愛を見る応援ソング。「笑顔じゃない日」ごと抱きしめようとする彼女らしい"私たち"への声援は、翻って「キミがキミであるコト」が「私を助けてる」と歌われるように、私たちからめぐるへの応援と、そして色々な形の愛に溢れている。

初稿 by 岡山ディヴィジョン

岡ディ:先ほども少し言及しましたが、心が疲れているときに聴くには少し元気すぎるかなっていうぐらいのまっすぐな歌詞だということに触れなければいけないなという思いと、ただめぐるはそれだけじゃないというところもしっかりと押さえたときにどうなるかなと考えながら書きました。この曲をめぐるは自分自身への応援歌として捉えたというのもあり、それは彼女自身の考え方を踏まえると当然のように思うので、そういった彼女の感性も入れました。入れられなかったポイントとしては、めぐるの中でのイルミネの存在というのは間違いなく大きくあると思うので、そういうニュアンスはもし尺があれば、といったところでした。
ああ:イルミネの歌詞と、あとは『We can go now!』との関連もあるよね。
フィリア:『Star n dew by me』の要素はこの曲に絶対つながってくるんですよね。

イベントコミュ『Star n dew by me』報酬サポート SSR 【ああひかりよ】八宮 めぐる

ああ:そうそう。
岡ディ:それぞれのユニットメンバーの名前を匂わせるところは入れたかったんですけどね。めぐるっていうアイドルがそうなのかなと思うんですけど、いろんな側面を持っていて、元気じゃないめぐるの方も真実なわけじゃないですか。どっちも真実なことがこの曲にパンパンに詰まっているので、どっちかだけに言及するのは違うのかなと思うものの、どっちもに言及すると文字数が足りなくて四苦八苦しました。
フィリア:私は「色々な形の愛に溢れている」っていうフレーズが好きですね。めぐるを見ていると「あい」っていうのをすごく感じます。
岡ディ:歌詞を見ていると「春夏秋冬がキミの姿を変えても」っていうのがめちゃくちゃイルミネの文脈だなと思っていて、それをめぐる自身が受容していることに切なさを感じるんですけど、それも泣く泣く割愛という感じでして。
ああ:季節の移り変わりで言うと、めぐるのコミュって季節への言及って結構多くて、本当に色々あるんですけど最近ではやっぱり【春待ちララバイ】ですかね。

【春待ちララバイ】八宮 めぐる

岡ディ:あのコミュも季節の移り変わり、時間の経過をめぐるは心の内に秘めているというのがすごく優しく描かれていましたよね。「季節がめぐる」っていうところもね。
ああ:春を待つというのは【ハロー・ワールド】もそうだし、めぐるの親愛度ボイスにもそういうのがあるんですよね。

【ハロー・ワールド】八宮 めぐる

岡ディ:めちゃくちゃ担当だな(笑)。
ああ春って出会いと別れの季節で、別れの方も経験しているからそれに敏感なコミュは多いかも。
フィリア:それも含めて私はコミュからこの曲が本当の意味でしっくりきたところは先ほどの『star n dew by me』もそうですけどそこがかなり大きいので、そういうめぐるがどういう存在なのかというがこの曲に織り込まれていることを入れ込めるといいですよね。
ああ:お互いへの応援歌というイメージがありますからね。クラップも多くて双方向の応援歌ってところがすごくうまくまとめられてるなって思ったんですよね。それこそイルミネの関係性も入れたいですけど、めぐるのソロ曲として優先するのは今の形に入れられている要素かなとは私も思います。……いやぁ、変えるの難しいなぁ。
フィリア:難しいですよね(笑)。私は特に一番最初の「ぎょっとするほどに真っ直ぐな」ってところがすごく好きで、また『絆光記』に少し思いを馳せるとこの要素は必要だなと思いますね。
ああ:そうだよなぁ~~。「クレオール」と『絆光記』がある今時点ではこの要素は絶対にないといけないやつ。
岡ディ:そのコミュの話を直接しないまでも、『HAREBARE!!』を普通に聴いた時に応援歌過ぎてしんどいなと思う人もいるでしょうし。
フィリア:まさに私は最初そうでしたね。
岡ディ:そこの一言を最初に入れないとめぐるの話に入っていけないなとは思っています。
ああ:「クレオール」も「キミがキミであるコト」の話だもんなぁ……。

こちらの議論を踏まえてこの後のミュージックレビューに最終稿を上げていただきますが、いかがでしたか?

岡ディ:この企画めちゃくちゃ面白かったですね。同じことを考えていてもこういう表現をしてくれるんだ、みたいな喜びもありますし。
フィリア:比喩の使い方も人によって感じ方が違うところもあるので、他人にはどう見えているのかがわかるのは面白いですよね。
ああ:自分の担当へのレビュー書こうと思ったら150字じゃ収まらないとか考えていた結果こういう有意義な議論になったのは全然想像していなかったけど良かったです。

最終的には議論の末そのままというのでも構いませんので、以下 3 曲については議論の結果どうなったかを楽しんでいただけたらと思います。

ミュージックレビュー

COLORFUL FE@THERS -Sol-

千夜アリア
作詞:真崎エリカ 作曲・編曲:藤井健太郎 (HANO)、谷ナオキ (HANO)
歌:白瀬咲耶(CV.八巻アンナ)

「連れて行くよ」。白瀬咲耶がここから誘うは宵の世界。夕日と群青が混じり合うマジックアワーに、白瀬咲耶は力強く歌う。独り歌うアリアも、彼女がこれまで握ってきたたくさんの手を伝って、人々の心に響くだろう。誰よりもファンを大切にする彼女が、たとえ太陽翳るときであっても、温かい方へ皆を「連れて行く」一曲。

text by フィリア

Damascus Cocktail
作詞:古屋 真 作曲・編曲:陶山 隼
歌:有栖川夏葉(CV.涼本あきほ)

「1秒前の自分に勝っていたいの」夏葉が目指す強さと美しさが表現された一曲。ユニットで披露されるものとはまた違った、大人な魅力がゴージャスな曲調で描かれている。トップを狙い続けるその輝きは自身による努力の積み重ね……だけではなく彼女が見つけた仲間、そして彼女に魅せられた者たちの思いが乗せられている。

text by ああ

Darling you!
作詞:鈴木静那 作曲・編曲:南 直博
歌:桑山千雪(CV.芝崎典子)

「君と過ごす時間」をギフトボックスに詰め込む、準備することの特別さを歌った華やかな一曲。ユニットのイメージからは離れながらも、桑山千雪が持つ「少女の感性」が、おもちゃ箱のような楽曲の中に爆発している。ライブで披露されることで「リボンがほどかれ」、特別な時間が輝き始めるだろうという予感に胸が踊る。

text by 岡山ディヴィジョン

あおぞらサイダー
作詞:秋浦智裕 作曲:小久保祐希、YUU for YOU 編曲:YUU for YOU
歌:市川雛菜(CV.岡咲美保)

囁くような歌声は、隣にいる「きみ」と、自分にだけ聴こえるように。高校一年生の見る世界はまだ狭く、日常の刺激はサイダーの小さな泡のごとく生まれては消える。泡が上るあおぞらに、市川雛菜の「楽しくてしあわせ」がある。炭酸のほのかな苦みを飲み込んだ彼女が、「自分はこれでいいんだ」と、標を立てるような一曲。

text by フィリア

SOS
作詞:下地悠 作曲・編曲:睦月周平
歌:黛 冬優子(CV.幸村恵理)

可愛いアイドル”ふゆ”を思う存分感じることができる一曲。しかし冬優子が世界と戦うために積み重ね、磨いてきた誰からも愛されること。それはアイドルとなるために冬優子が[魅せる/騙される]と決めた嘘。そんな”彼女”の可愛さを前面に押し出したこの曲は、黛冬優子が人生をかけて作り上げた存在の証明でもある。

text by ああ

過純性ブリーチ
作詞:古屋 真 作曲・編曲:大西克巳
歌:西城樹里(CV.永井真里子)

何気ない風景に自分の心情が重なり、吹いた風に背中を押される。挫折を知る西城樹里が歌うからこそ、真っ白なスタートラインに立つ歌詞の全てが眩しい。暁光が街を染め上げるような疾走感あるサウンドも樹里そのものだ。けれど「空耳」だとしても、私たちの為のエールのように聞こえ、心情が重なってしまうから不思議だ。

text by 岡山ディヴィジョン

HAREBARE!!
作詞:渡邊亜希子 作曲・編曲:大西克巳
歌:八宮めぐる(CV.峯田茉優)

ぎょっとするほどに真っ直ぐな「ハレバレ‼ガンバレ‼」という歌詞に、八宮めぐるの愛を見る応援ソング。「笑顔じゃない日」ごと抱きしめようとする彼女らしい"私たち"への声援は、翻って「キミがキミであるコト」が「私を助けてる」と歌われるように、私たちからめぐるへの応援と、そして色々な形の愛に溢れている。

text by 岡山ディヴィジョン

statice
作詞:秋浦智裕 作曲:家原正樹、Jam9 編曲:家原正樹
歌:浅倉 透(CV.和久井 優)

どうしようもないほどに浅倉透を感じてしまう曲。何かを求めてここではないどこかを目指す青春ソング……ではあるがアイドルという世界をどこへでも/どこまでも泳ぎまわれてしまう浅倉が歌っている。飛びたいと願った彼女が「きみが隣にいる」と言うのならば共にのぼっていかなくてはならないよな、この空とその先へ。

text by ああ

SOLAR WAY
作詞:古屋 真 作曲・編曲:板垣祐介
歌:Team.Sol

「太陽」の名の通り、眩いほどの輝きが詰め込まれている。「どんなときも逃がさない」なんて強すぎる詞であっても、寄り添い照らす優しさを知っているTeam.Solが歌ってくれるからこそ我々の心に素直に入ってくるのだろう。そんな彼女たちの暖かな光に触れることで自然に笑顔がこぼれてきてしまう曲となっている。

text by ああ

COLORFUL FE@THERS -SHHis-

フェアリー・ガール
作詞:深川琴美 作曲:佐藤 樹 編曲:川崎智哉
歌:七草にちか (CV.紫月杏朱彩)

みんなの妹のソロ曲は、存分にその愛されるキャラクターを見せつけてくれる。七草にちかは、このソロ曲を歌うまで、どれだけの苦しみを味わっただろう。否、彼女はアイドルである。汗と涙などおくびにも出さず、全力の可愛いをぶつけるその姿に誰もが目を奪われるだろう。取扱説明書を読んだら、あなたも彼女の虜である。

text by フィリア

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