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Teeth-part 2-


歯がない。
抜歯ということに怯えた。
良い歳して一回り程も若いと見える先生に怖がってる事を悟られまいと、治療台では小さく震えた。
「Are you ready?」-準備はいい?-
と言われたが、そんな日はいくら待っても来るわけがないと、心の中で思うのとは裏腹に、
「I’m ready.」
と答えた。

局部麻酔をかけた場所が麻痺し始めてきたのを確認し、
ドクターが口の中でかちゃかちゃ始めた。
“歯を抜く時って、ギリギリと音がするんだよ。”
人から聞いた話が頭の中でぐるぐる回った。
何をやっているか全くわからない。
抜く?抜けた?とか考えている間に、
パチンと割れた様な音がした。
割れた?
と一人実況中継している間に、ドクターとアシスタントがバタバタ騒々しく動き始めた。
吸引するやつとか水が出るやつを巧みに使っている。二刀流だ。
で、何事?
と思った数分後に、歯を見せられた。

あまりにも呆気なく抜けてしまい、数十年もこの歯茎にぶら下がっていた事を信じられなく思った。
ぼーっと歯を眺めたが、ドクターが次の説明を始めたので、後ろ髪を引かれる思いで歯を後にした。
治療が終わり、アシスタントの人に、小さな小袋と説明書の様なものを渡されたので、きっと歯だと思い安心して家に戻ってきた。

説明書きには、止血方法、痛み止め、食事の際の注意点が書かれていた。
歯の入った小袋を開けると、
そこには止血用ガーゼだけが入っていた。
歯は?あれ?
悪くなった歯は、お別れを言う暇ものなく捨てられてしまった様だ。

歯の抜けた状態で食事をするのは本当に大変で、キリンの様に擦り潰しながら
毎日食事をしている。
歯が入るのは、おおよそ来年の今頃らしい。
2023年は口腔内環境に気をつけて生活したい。














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