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友へ

友人が亡くなった。
まだ若く、これから先の人生のたくさんの可能性を残したまま
彼女はまるで天女のように、地球の重力から解き放たれるように
この世界を去っていった。
痛みからも解放され、今は安らかなことだろう。

だけど、心構えも覚悟もなく残された私は・・・
伝えたいことはたくさんあったのに
もっと一緒にいろんなものを見て、笑って、いっぱい話したかった。

彼女が具合が悪いと言い始めた頃、私は勝手に、
きっとすぐに治ってまた元気に戻るだろうと
思っていたし、そう信じてもいた。
時々倒れるようになった時も、心配はしたけれど、
きっと疲れが溜まっていて、少しゆっくり休めば治ると思っていた。
自分にそう信じ込ませてきたようにも思う。

そうか。
そうやって私は自分を偽って生きてきたんだな。

目の前の現実から逃げるように、言い訳ばかりしてきた。
いつか行こう。
そのうち連絡しよう。
今はタイミング悪くて。
忙しいなんて常套句、本気で生きている人の前では何の意味もなさないこと
ほんとはわかっていた。
卑怯な人間であることを隠しながら、いい人のふりして生きてきたから
100%で生きている人の目をまっすぐに見るのが怖かった。

「みんなに会いたいと言ってたよ」
その言葉に、自分の愚かさに打ちのめされた。

そのうち、いつか、
なんて言葉は、明日をも知れぬ人には幻でしかない。

自分が不甲斐なく、嫌気がさす。

泣いて、泣いて、泣き腫らした顔を見て
この悲しみは純粋に彼女を亡くした悲しみなのか
それとも単なる自己憐憫なのか
それすらわからないことが、情けなく、悔しい。

棺桶に横たわる彼女は、透き通るような美しさだった。
最後まで気高く、まるで天女様のよう。
本当に天女だったかもしれない。

まっすぐで頑張り屋で、まじめ。
凛とした強さは、頑なにも思えるほど。
だけど、自分よりもまわりを気遣うような優しい人だった。
猫のように時折みせる子供っぽさは、彼女の魅力のひとつだった。

思い返せばあなたとの思い出がたくさんあるんだよ。
初めて東京にひとりで行ったときも、一緒にまわって案内してくれたね。
よく私の地元まで遊びに来てくれて、ランチしたりお茶したり。
何より、みんなとの縁を繋いでくれたのもあなただった。

長いつきあいだったんだよね。
すっかり忘れていたこともある。
思い返せば思い返すほど、仲良くしてくれてたことがわかる。

ごめんね。
会いに行けなかった。
ごめんね。
メールさえ送れなかった。
なんてひどい人間だろうって思う。

だけど
あなたはきっと怒らない。
「いいよ~」といつものクールな笑顔を返してくれるんだろうね。

これから先。
彼女のいない世界が続く。
その世界で私は私なりに生きていく。
卑怯で弱い部分はなかなか直らないだろうけれど
それでも、同じような後悔だけはしないように

いつ尽きるともしれない命は、誰もが同じ。
そのうち、いつか、
そんなものは幻でしかない。
だから、「今」をただ後悔なく生きようと思う。

次に彼女と会うときは、言い訳なんてしなくていいように。



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