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蒸気機関車の面影を追って【ドイツ鉄道旅行2023】

 Emdenはオランダとの国境近く、エムス川の河口付近に位置する人口5万人あまりの町である。Emden港は北海に連なる貿易港であり、現在は自動車の輸出入でヨーロッパ有数の規模を誇っている。以前は鉱石の輸入も盛んで、ここから、重工業が発達したRuhr地方やSaar地方へ鉄道で輸送されたのであった。
 朝のEmdenは10℃に届かない寒さであった。小ぶりながら、拠点駅らしい雰囲気の構内から駅前広場に出ると、大きな水道塔と、静態保存されている043形 (44形蒸気機関車の重油燃焼式)の姿が目に入る。

 

 Nordrhein-Westfalen州北部の町 Rheineから、Emdenを経由して、北海に臨む Norddeich Moleを結ぶ鉄道路線 Emslandstreckeは、西ドイツで最後まで蒸気機関車の定期運用が残った路線てある。急行旅客機012形 (01.10形の重油燃焼式)は1975年まで、貨物列車用の043形 (44形の重油燃焼式)や042形 (41形の重油燃焼式)は1977年まで現役で活躍した。043形や042形は単機では2000t、重連では4000tに及ぶ鉱石貨物列車を牽引し、特に4000t列車は鉄道ファンから"Langer Heinrich"との愛称で呼ばれ、その力強さから伝説的な存在であった。
 043形は屋外展示ではあるが、動輪は塗り直されていた。周囲にはミニ鉄道も敷かれている。地元の愛好家が大切に手入れしつつ、この地の鉄道の歴史を伝えていることが理解できる。

 

 身体が冷えたので、駅に戻る。売店でコーヒーを買い、ホームでしばらく待つ。静かな駅構内も、列車の発車が近づき、少しずつ人が増える。Westfalenbahn運行の9時52分発Münster Hbfに乗る。車両はStadler製の電車Flirt 3である。車内は家族連れで賑わっており、大きな声で泣く子供の姿も。

 Emden Hbfを発車し、運河を渡ると、まもなく車窓には田園と牧草地と森林が広がる。

 このような平坦な地形だからこそ、蒸気機関車も最後まで活躍できたのであろう。Emden港の現在を象徴するかのように、車載車を連ねた貨物列車も何度か目にする。

 蒸気機関車が配属された最後の機関区があったRheineを過ぎ、Münster Hbfには定刻の11時56分に到着する。

 Münsterはヴェストファーレン条約が結ばれた地として世界史にも登場する。旧市街の随所に歴史が感じられ魅力溢れる街であるが、今日はリニューアル工事が終わった中央駅の駅舎を見て、ニシンのサンドイッチで軽めの昼食を摂り、あとはプラットホームで次の列車を待つことにする。1970年代から活躍する重貨物用電機151形の元気な姿を目にする。

 12時32分発IC 2201に乗る。車両は147.5形が5両の2階建て客車を牽引するIC 2である。

 車内設備が近郊列車と大差がないため、IC 2は評判は良いとは言えないが、短距離乗る分には悪くない。工事の影響でルートの迂回があり、約5分遅れで、14時前にDüsseldorf Hbfに到着する。

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