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炎の魔神みぎてくんのほん

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卓上遊技再演演義シリーズでも活躍するみぎてくん、陽気で元気、食いしん坊でドジな炎の魔神族、みぎて大魔神ことフレイムべラリオスが人間界に留学!相棒コージや講座の仲間と繰り広げるほの…
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炎の魔神みぎてくんのほんシリーズ 既刊紹介

陽気で元気な魔神族の留学生「みぎてくん」ことフレイムべラリオスと、相棒のコージ、そして個性豊かな仲間たちが織り成す学園ドタバタファンタジー小説のシリーズです。ここnoteで過去作品を順次公開してゆきます。なお、さきもりのおさ(ジーぽん)以外の作者の作品については公開未定です。 挿絵はさきもりのおさ(武器鍛冶帽子)、竜門寺ユカラさん、烏丸毛虫さんからいただいております。 短編 魔神と油揚げとお嬢様(1999年8月) 卓上遊技再演演義シリーズの短編として書かれました。みぎてく

炎の魔神みぎてくん おみまいパーティー⑧「みぎてくん。覚悟してくださいよ」

8 「みぎてくん。覚悟してくださいよ」  魔界七面鳥のローストは予想以上のすばらしい料理だった。みぎてが大喜びするのはもちろんだったが、コージやディレルだってこの味なら大好きである。その証拠に大きな七面鳥の丸焼きは、骨だけを残してきれいに消滅してしまった。こんなに見事に骨格だけ残ると、なんだか博物館の標本のような気がしてしまうほどである。  さて全員が大満足になったところで、いよいよディナーはデザートタイムに突入である。 「さあデザートの準備ができたわ。ジョバンニ、持って

炎の魔神みぎてくん おみまいパーティー⑦「辛っ!これたしかに魔界の味…」

7 「辛っ!これたしかに魔界の味…」 「ほんとにすいませんねぇ。こんなに遅くまでうちの人の道楽につき合わせて…」  ポリーニのお母さんはあきれたような顔でだんな…つまりドクター・ファレンスをにらみながら、コージたちに謝る。テレビに出ている時と違って、家なのでメイクはしていないのだが、声はやはりあの料理・グルメ番組のマダム・ファレンスそのものである。なんだか土曜夜八時にテレビを見ているような気分になるほどである。 「あなた。とりあえずさっさと片付けてくださいな。」 「さ、

炎の魔神みぎてくん おみまいパーティー⑥「俺さま腹減った。もうだめ」

6 「俺さま腹減った。もうだめ」  ポリーニが玄関口へと姿を消すと、ほぼ同時に初老の男性の声がリビングにまで聞こえてきた。 「ただいま。お客さんがきてるのかね?」  どうやらあれがポリーニのお父さんらしい。声だけ聞いている限りはよくいる普通のお父さんという感じである。大病院の理事長先生というえらそうな肩書きとセットで考えると、「貫禄のあるお父さん」というのが想像図になる。  ところが、ポリーニが早口で何かを言うと、お父さんらしき声の主は大慌てでこんなことをいったのである

炎の魔神みぎてくん おみまいパーティー⑤「お嬢様。お帰りなさいまし」

5 「お嬢様。お帰りなさいまし」  ということで、三人はポリーニの案内で、いよいよ目的地…「自宅」を訪問することになった。といっても彼女の自宅がある「西病棟」というのはお隣のビルなので、外をぐるりと回ると意外と距離がある。昼間ならばそれも悪くないのだが(この病院の周囲は庭園である)、こんな時刻になってしまうとあまり面白くない。ということで今回は中央病棟を大突破して西病棟へと向かうことになった。 「みぎてくんって病気しらずってことだし、病院見るのも初めてじゃないの?社会見学

炎の魔神みぎてくん おみまいパーティー④「やだみんな!こんなところで何」

4 「やだみんな!こんなところで何」  『セント・レジオネラ記念病院』というのは、このバビロンではかなり昔からある私立の大病院で、特に胃腸関係ではバビロン医科大付属病院よりも有名である。名前が「聖レジオネラ」とついていることからもわかるように、伝説上の医者で聖職者でもある聖レジオネラを記念して作られた施薬所が元となっているということである。まあこの辺はバビロンの歴史のお話になるので、コージやディレルもあまり詳しく知っているわけではない。  病院の周りはちょっとした緑地となっ

炎の魔神みぎてくん おみまいパーティー③「…それもある。それも…」

3 「…それもある。それも…」  さて、それから二日たったのだが、どうもポリーニの風邪は一向によくならないようだった。結局翌日(今日から見れば昨日なのだが)はお休み、そして今日もまだ(そろそろ始業時刻なのだが)姿を見せないのだから、これはかなりひどいようである。 「あ、コージ。ポリーニ今日もダウンだってさ。」 「やっぱりなぁ」  受話器を置いたディレルの報告に、コージは納得したようにうなずく。どうやら今の電話はポリーニの自宅かららしい。本人なのか家族の人なのかはしらない

炎の魔神みぎてくん おみまいパーティー②「おとうさん理事長だし…」

2 「おとうさん理事長だし…」  ポリーニ・ファレンスは先ほども少し説明したが、コージたちと同じ講座の同級生で、理系学部である魔法工学部では数少ない女性である。決して魔法工学が女性に向いていないとかそういうことは無いと思うのだが、どうしたことか人気が無いのである。大体コージたちの学部では女性の割合はせいぜい一割か、もっと少ないのが実体だった。ちなみにコージたちの講座の教授であるセルティ先生も女性なのだが、これはもうきわめて少数派である。  さて、理系女性というのは男性陣の

炎の魔神みぎてくん おみまいパーティー①「……まあそうだな。お好み焼きなら」

1「……まあそうだな。お好み焼きなら」  バビロンも十一月になると、秋の終わりにふさわしく肌寒くなってくる。たとえ日中はぽかぽかと汗ばむような陽気でも、日が沈むと同時にたちまちセーターがほしくなってくる。ましてや曇りや雨の日には、昼間から外出したくなくなるほどの寒さとなることもある。街路樹が冷たい雨にぬれて、街の景色までが寒々しいのだから気分的にもめいってくる。  さらにこんな寒い時期になると、当然のことながら街中に厄介なものが流行し始める。風邪である。  バビロンに限らず