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卓上遊技再演演技 楊範・鄭令蔓伝

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本作は2000年8月から2004年12月にかけて発行された、卓上遊技再演演義シリーズ「楊範・鄭令蔓伝」(巻1~10)、サークル25周年記念として加筆修正・挿絵等のイラストを大幅に…
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2022年6月の記事一覧

楊範・鄭令蔓伝 壮途編 三「私も楊範と呼ばれるより、本名のヤンと呼ばれたほうが」

三「私も楊範と呼ばれるより、本名のヤンと呼ばれたほうが」  翌朝はさすがのテレマコスも昼近くになって起床することになった。昨夜あれだけ痛飲して、さらにいろいろな食客とあってという宴会である。長旅の後ということもあるが、疲れきってしまったのはしかたがない。  布団から起き出したテレマコスに気がついたリンクスが、どこからかお粥をもってあらわれた。湯気があがっているところを見ると、おそらくわざわざ暖め直してもらったのだろう。 「すまんなリンクス。おまえは朝飯を食ったのか?」 「

楊範・鄭令蔓伝 壮途編 二「あの方は楊範殿ですよ。あの武礼撫の」

二「あの方は楊範殿ですよ。あの武礼撫の」  というわけでテレマコスは気の進まないような、しかし料理は魅力的なという夕食会に出ることになった。既にすっかり夜である。家宰に呼ばれて着慣れない黒ローブで会場へと赴いたこの魔道士は宴席の豪華さに目を見張ることになった。  宴席には主人である関子邑と主客であるテレマコスのほかに十数人の客が着座していた。その風貌は様々である。やくざらしい大柄の男、怪しい白髪の道士風の男、やせた文人風の男…まさに雑多な人々が客人として招かれていたのである

楊範・鄭令蔓伝 壮途編 一「歴史をたずねるものとして、これくらいは当然のこと」

第1章 会稽山一 「歴史をたずねるものとして、これくらいは当然のこと」  会稽の関氏というのは、随分立派な豪族らしい。少なくともテレマコスの目にはそうはっきりと感じられた。なにせ邸宅が大きいししっかりしている。そう、成金者によくある金ぴかの、どこかいやらしい趣味の邸宅とは違って、地味だが重厚なつくりなのである。古い貴族の家なのだろうか、壁もしっかりしているし塀などは小さな要塞のように頑丈だった。  いや、考えてみれば豪族の私邸というものはもともと要塞なのである。豪族同士のト

序 楊範・鄭令蔓伝

序 楊範・鄭令蔓伝 楊範は九原の人である。字は獅猴。幼いときに一家を略奪者によって失い、その後龍法戦士の一門に引き取られ、竜門山にて修行をつんだ。その才能を師である霊元道人に認められ、龍法戦士の技を若くして収めた。霊元道人については伝がある。  楊範は中原塞外の人でも珍しく、金髪碧眼であった。身の丈は七尺で筋骨たくましく、不思議なことに頬に堅い髭が生えていた。額には塞外の人の風習で奇妙な刺青を施していた。このため彼は龍三眼[i]とあだ名された。  少年のころから武術にすぐれ

楊範・鄭令蔓伝 壱 壮途編 もくじ

本作は2000年8月から2004年12月にかけて発行された、卓上遊技再演演義シリーズ「楊範・鄭令蔓伝」(巻1~10)を、サークル25周年記念として加筆修正・挿絵等のイラストを大幅に増やし、再版したものです。 現在(2022年夏)時点で巻1~7までを文庫本3冊にして、同人誌イベント等で少数頒布しています。 今回、「参 登龍編」の発行を機に、その最初にあたる旧巻1(壮途編 第1章 会稽山)をここnoteで無料公開することにしました。主人公ヤン・ハヌマットと仲間たちの出会いと初めて