noteまぜこぜ対談

くらげ×内田 まぜこぜ対談 第2回 「MAZARIBAのコンセプト」

登場人物

くらげ:聴覚障害(2級)とADHD(診断あり)と躁うつ病患者の三重苦な自称作家のサラリーマン
内田:障害者と健常者が一緒に暮らすシェアハウス「MAZARIBA」の運営者。ニュース番組のディレクターもしている

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[く] さて、「MAZARIBA」についての対談第2回目です。前回はシェアハウスの基礎知識というものも話しましたけれども、今回は「MAZARIBA」ができた経緯について聞いていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

[内] 今日はよろしくお願いします。

[く] まず、内田さんがを「MAZARIBA」を始めようとした経緯を教えていただきたいと思います。

[内] きっかけですね。2017年に知り合いの不動産屋の人から「シェアハウスの空きはあるか」というと問い合わせがあったんです。空きがあると言ったら続けて「聴覚障害あるけど大丈夫?」って聞いてきたんですね。これ、私、びっくりしました。確かに車椅子だったり寝たきりだとか、そういう人は確かに厳しいなと思うんですけどなんで聴覚障害のあるってぐらいで断らなきゃいけないのかなと思いました。それで、知り合いの聴覚障害のある人に「実際、断られるの?」と聞いたら「普通に断られますよ」と。

[く] やっぱり自分の知り合いにも障害のある人は多いのですが、実際にアパートを借りようとして断られたというケースはありました。私もこの度引っ越しをしたんですが、私も妻も障害がある、というところで保証会社をつけらず家を借りられないかも、という瀬戸際まで行きました。なんとか借りられたんですけど、心臓によろしくはないですね。

[内] それは大変でしたね。私はもともと理不尽なことに対して我慢がならないたちで、そういう問題があるなら「じゃ、障害のある人たちでも住めるシェアハウスを作ろう」と考えました。

[く] それまで、障害のある人がアパートを借りたりするのが難かしい、ということすら知らなかったわけですよね。

[内] はい、そんな問題があるとは思いもしなかったです。不動産屋としては、障害があるとトラブルが起こりやすいとか、トラブルがあったときに連絡が難しいとかあるのはわかるんですけど、ちょっとどうなのかな、と。軽度でもどんどん断られているみたいですね。

[く] 実際、きついです。だから、「MAZARIBA」は障害のある方の住居選択の幅を広げるという意味で貴重ですよ。

[内] 「MAZARIBA」は福祉施設ではなく、あえて営利目的のシェアハウスとして運営しています。その方が自由度が高く柔軟に対応することができると思ったからです。反面、どうしても手厚い支援が必要だったり完全なバリアフリーが必要な方を平等に受け入れられるのは無理です。

[く] スマート家電(Amazon Echo,Google home)とかも導入したんでしたね。

[内] 手が不自由な方な人を想定して導入したんですけど、結局、私が一番使っています(笑)リモコンをなくしてしまうので(※現時点では一部照明のみ対応)。

[く] 自分で人体実験している感じですね(笑)でも、それがダイバーシティというか、バリアがある人が生きやすい空間は普通の人でも生きやすい、というバリアフリーの概念ですよね。

[内] 同時にバリアフリーについては「MAZARIBA」を作ってみて切実に難しさを感じました。車いすの方が座ったままトイレに行くことが物件的に難しかったり、階段が急なので視覚障害の方の安全性確保が難かったり・・・。

[く] 聴覚障害者は比較的「ソフトウェア」的な支援でなんとかなるんですが、ハードウェア的な支援はやはり改装まで踏み込まないといけないので、いろいろ難しくなりますね。

[内] でも、僕、今はMAZARIBAで寝泊まりすることが多いんですが、入居していただいた障害のある方と「MAZRIBA」で生活すると意外と「普通」だなぁって。

[く] 想定していたより「支援」しなくていい、ということでしょうか?

[内] そうですね。僕たち健常者が「障害者と暮らす」というとどうしても「あれもしなきゃこれもしなきゃ」と考えがちなんですけど、聴覚障害の入居者とかコミュニケーションはチャットを使えば困りませんでしたし、ほかの方も「障害があるから」という意識で暮らしてはいないですね。

[く] あまりそこまで重度な方は受け入れられない、という事情があるにしても「いざ暮らしてみると想定より障害を意識しなくていいかも」というのは入居したい障害者にとっても安心材料かもしれませんね。また、シェアハウスというのは自由度が高いというか「多様性の最先端」とのイメージがありますので、ぜひいろいろチャレンジしていただければと(笑)

[内] 予算の範疇でがんばっていきたいです(笑)

[く] 実際のところ、障害があると「家を出て暮らす」というのがどうしても難しくなります。

[内] それは不動産屋から断られる、ということですか?

[く] もちろんそれもあるのですが、やはり金銭面の問題が大きいです。まず、仕事がないのですが、障害者雇用とかで仕事ができても給料が安く、一人で暮らすのは無理、という。もちろん、無理に実家を出る必要もないのですが、実家から出て暮らす、という選択肢が極端に狭いのもどうなのかな、と。

[内] 「MAZARIBA」は基本的な家具・家電はシェアして使ってもらいますから、初期費用(初月家賃含め約5万円〜)と着替え、布団などを持っててきていただければ入居していただくことが可能です。ただ、障害の有無に関なく、事前に相談していただく必要はありますが。

[く] 私は今回の引っ越しで100万円近く吹っ飛びましたよ。もう死にそう(笑)それで、一ヶ月はいくらからでしたっけ?

[内] 相部屋だと2万5000円からですね~。相部屋になるか個室かとかで変わります。

[く] 家賃がそのくらいだと障害年金とかがあれば関東圏でも何とか暮らせる額ですね。お試し上京じゃないですけど、MAZARIBAを拠点にして仕事を探したり次のステップを探すみたいな使い方ができるといいですね。

[内] そういう使い方も大歓迎ですよ!

[く] さて、今回はこれくらいで、次回は「MAZARIBA」のこれから、みたいな話ができれば、と思います。お疲れ様でした!


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