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vs清水エスパルス

ガンバ大阪との大阪ダービーを制した我らが桜軍団。コロナの影響でシーズンが中断したこともあり、その余韻に浸る暇もなく次の試合がやってきた。相手はホームで滅法相性が良く、アウェイで滅法相性が悪い(特に北川航也)清水エスパルス。そんなエスパルスはセレッソと同じ2016年にJ1昇格を果たした後、思い描いていたようなシーズンを過ごしていない。そこで今季は横浜F・Mのポステコグルーの下でヘッドコーチをしていたクラモフスキー(と補強力に定評のある大熊GM)を招聘。未勝利が続いているが、対戦相手のツイッタラー達は口を揃えて「不気味」、「スコア差ほど弱くない」、「良いサッカーをしている」と評価していた。タイトな日程のなか、相性が良いから勝つとは限らない、と前節でセレッソが証明している。そうとは言ってもこちらはロティーナ体制2年目だ。どちらが熟成しているか見せてやりたい、と思いながら試合開始を待っていた

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まず清武⇒柿谷、木本⇒瀬古の2枚以外は前節通りのセレッソ。対するエスパルスは立田⇒ファンソッコ、奥井⇒六平、金子⇒ドゥトラ、後藤⇒ティーラシン、カルリーニョス⇒西澤と5枚を変更。3試合続けて大阪で試合ができるセレッソと静岡⇒大阪⇒静岡と移動を挟むエスパルスの負担の差かもしれない。

キックオフ直後はセレッソが、次にエスパルスがチャンスを作る展開でスタートした。エスパルスはマリノスと同じ流れを汲んでサイドバックが内側のレーンに入り、ボランチが外のレーンへ入れ替わって斜めの動きでセレッソの目線をずらそうとする。それに対してセレッソは今まで同様に内側のスペースを圧縮して冷静に対応。そのためエスパルスはボールを持つことはできるものの、近距離パスに終始してセレッソの陣形を左右に揺さぶれない。

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よってボールは回るが、回っているだけというロティーナの塩漬け戦法そのままだった。塩漬け戦法では最終的に相手が苦し紛れのシュートを放ったり、ミスによってセレッソボールに移る。ボールを奪ったセレッソはエスパルスのFWの枚数に応じて藤田がDFラインに吸収されるかどうかを判断してビルドアップを開始。エスパルスは攻撃時に1.5列目にいた鈴木が守備時にティーラシンと横並びの4-4-2へ変形するのが基本形。そこで後出しじゃんけんのように、FW2枚がセットされたら藤田はDFラインに吸収され、鈴木が前へセットするのが遅れると藤田はDFラインに吸収されずにDF2枚でビルドアップを開始。

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前回のダービーでは前から速いプレスで来る可能性があったため、セーフティに都倉を目がけることも多かったが、今回はエスパルスが構えてセットするタイプの守備から入ってくるチームだったため、奪った後のビルドアップを丁寧に紡ぐことができた。右サイドで対峙する相手がスピードのある藤春ではなく六平だったので、前節より坂元が仕掛けやすかったこと、左CBは木本に変わって瀬古が入ったことで、縦へ鋭く付ける選択肢が加わったことも大きな違いだろう。大きく開く右SHの坂元に対して、左SHの柿谷は内に絞り左右非対称な形を作っていたのも2人のドリブルの質が違うため。2人とも日本トップクラスのドリブラーだが、坂元のドリブルはスピードで相手DFラインを押し下げることができるドリブル、柿谷は常に相手の逆を取れるドリブル。そのため坂元のいる右サイドは相手を押し下げる役割、柿谷がいる左サイドは相手を剥がしてFWやオーバーラップしてきた丸橋へボールを回す役割を担っていた。

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しかしデザインされたビルドアップで攻め込むものの、最後に取られて逆にスピーディなドゥドラがカウンターを発動する。個の力が脅威であることを改めて実感した。エスパルスは食いついたら背後を取られることがわかっているので、なかなか出てこない。そこで藤田や坂元もいつも以上にミドルシュートを狙って相手を前に誘い出すが、相手に当たったりで不発弾。こういう展開ではやはりソウザの力技の重要性を感じてしまう・・・一方のエスパルスはビルドアップがデザインしきれていない印象だった。4-4-2のセレッソに対して構えた時点で数的優位を作れていないからだ。かと言ってGKから鋭いボールが前へつけられる様子でもない

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そのため後ろのCBから繋ごうとしても、安全なタッチライン側に逃げるしかない。しかし貰う側は後ろ向きでボールを受けることになる。そうするとどんどん逃げ道がなくなってしまう。そうして苦し紛れに下げたところを狙われ、危ないシーンを招いていた。

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このシーンの解決方法はセレッソのボランチ2枚に対してエスパルスの中盤3枚をどう活用するかに尽きる。ここの数的優位を活かして鈴木にボールが入れば、高い技術によって大きく前進できそうな匂いがした。そのためにはWGはSBを押し下げ、SBが幅を取り、中盤のスペースを広げる必要がある。そうすることで藤田は竹内に付くために前へ出るのか、鈴木をケアするのか迷いが生じる。

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このパス回しがうまくいっていないエスパルスを観て、ちょうど1年前の2~3節の名古屋戦、広島戦を思い出していた。あの頃は本当に歯痒かった・・・しかし何とかビルドアップ出来たあとのエスパルスのデザインは垣間見ることもできた。まずはハーフスペース上のDFのギャップにSBやFWが入ってくさびのパスを受けて大外への展開、中へのクロスを狙うことだ。

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ただ元々1トップなので中で合わせる枚数が少ない点を解消する、という別問題は解決しないといけない。そのために金井や奥井のような前へ出れるDFを獲得したのだろう。またティーラシン(鄭大世)に加えて逆サイドのWGが勢いよく入ることも求められるが、これはシーズンが進んで身体が動けば可能な反面、これから夏を迎えると続けられるか不明だ。いずれにせよ、原型はできつつあるので、新監督がどこまで深化できるかにかかっていると言えるだろう
後半、セレッソは最高齢にしてミッドウィークの試合にもスタメンで出ていた都倉に変えてメンデスを投入。ターゲットになることに強みがある都倉とは違って前へ出るスプリントを駆使し、より深さを取るためにエスパルスのSBの裏を取ってCBを引きつける。

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しかし後半開始直後は前からアグレッシブに取りに来たエスパルスに引っ掛けられ、取り返したらひっくり返そうとしたので、ややオープンな展開になりかけた。最初の10分くらいで解説も「何か試合が動きそう」と言っていたことからもその雰囲気はどちらのサポーターも感じただろう。そんな中で受けた瀬古のイエローカードを含めて審判もまだ休み明けな印象が拭えない。スローのハイライト映像なら全く問題ないシーンに見えたが、通常スピードではイヤな音もしたので、審判はその音に影響されたのかもしれない。イージーに奪われる時間帯、ファールを与えたりしていた時間帯で失点していたら試合の流れは変わっていただろう。しかしそのピンチも後半開始から15分だけ。その後は不用意なロストが減って、普段の落ち着いたセレッソへ戻すことができた。前半同様にSHとSBが違うレーンに位置を取り、相手を躱して前進し、フィニッシュの時にはSBやCHまでがペナルティエリアまで入ってくる。柿谷、奥埜、松田と惜しいシーンが立て続けにあったが決まらず、ここで清武、片山が柿谷、坂元と交代。片山は坂元のようなドリブルを持ちあわせていない一方で驚異的な身体能力や複数ポジションをこなせる特徴を持っている。特に5人交代制であれば、昨シーズン以上に存在感がある選手となるだろう。そんな右SH片山は坂元と違ってワイドレーンで待つのではなく、FWの脇のハーフスペースに侵入してボールを引き出す役割を担い、大外は松田に任せていた。この立ち位置はボールを引き出す役割だけでなく、中央に入ってより高い位置でプレーすることで最後はゴール前に入っていくこともできる。得点が入らない中で前へ圧力を強めるためにシンプルに中央の枚数を増やしたのだろう。またセレッソが主導権を握る中で最もあり得る失点パターンはセットプレーだった。これも坂元より片山のほうが高い身体能力で対応できるため、坂元を片山に替えたのだろう。2017年の山村、とまでは言わないが、攻守のユーティリティ性はとても心強い

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押し込む展開が続く中、先制シーンはなぜか奥埜がマークから外れていたのでフリーだったため難なくゴール。オフサイドにも見えなくもないが、副審が旗を上げていないのでゴールだ。とは言うものの、ここまでチャンスがあったのに中々入らなかった。そしてさらに押し込み続けること10分、2人に挟まれながらもヒラリと躱した清武から矢のようなスルーパスが入った豊川に差し込まれる。シュートは若いGK梅田に反応されたが、こぼれ球を拾った片山が押し込み追加点。片山にとってはこれが嬉しいJ1初ゴールとなった。ゴールが決まった瞬間、決めきれなかった豊川はすぐにガッツポーズ。For the Teamの精神が垣間見えたゴールシーンだった。(ただし片山のインタビューにあった通り、短い時間で結果を出したいFWとしてはとても悔しかったそうだ)

2020年に入って公式戦4連勝と波に乗っている。シーズン前に優勝を公言して「セレッソが?」と思った無知なJリーグファン、識者もいたが、これまでしっかりとした結果(開幕3試合で早くも首位!)で見返している。ただ今首位にいることは何の意味もない。大事なことはシーズン終了後に同じ位置にいることだ。早くも週末には同じく無敗の名古屋グランパスが長居にやってくる。しかもセレッソ戦で得点を決めまくる阿部という嫌な存在もいる。しかし再開から3戦続けて県を跨ぐ移動をせずに大阪でプレーできる点を活かし、しっかりと勝って足場を固めておきたい。個人的には来週の18(土)A広島⇒22(水)H神戸⇒26(日)A鳥栖の移動、ミッドウィーク、移動が立て込む3連戦の週が鬼門と見ている。広島や神戸が強豪であることは間違いなく、鳥栖には前回のホームでおかしな敗戦をくらっている。名古屋に勝ってこの週に勝点を5積み上げられれば御の字だ。(そんな簡単にいかないのがJリーグの面白いところ…)

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