ボツプロット「狂い果実のポーエット」③

【13】
そんなある日、京野は設楽とファミレスで会って話をしていた。
「あれのおかげでほんまモテモテやで!女友達出来たし!」
自慢げに語る京野に設楽は悲しい目をする。
「最近、詩は?」
「詩?」と聞き返した京野は、「あんなん、もう書くわけないやん。モテ
へんし。黒歴史やで」と嬉しそうに語った。
設楽はどう返せばいいかわからずに残念そうな目で京野を見る。すると、
設楽は驚いた顔をして京野に言う。
「鼻血。それに、何やその顔?」
「え?」と京野は指で鼻を触り、そこに着いた血を見る。「何これ?」
トイレに駆け込んだ京野は鏡に映る自分の顔を見て驚愕した。鼻血が垂れ、
顔には無数の吹き出物が出来ていたのである。
「嘘だろ…?」

【14】
家に帰った京野は、災害跡から持ち帰った狂い果実(最初に一口カジった
やつ)を見つめた。そして、震える手でもう一口カジる。すると、元気が
漲り京野の身体は元通りになるのであった。もちろん、驚異的な身体能力
と知能を身につけて。

【15】
一ヶ月後、京野は家で果実をカジり外に出て驚異的な力で住宅街を飛び越
え、設楽の元へと向かった。
「おまたせ」
と、ファミレスの前で待っていた設楽に言い、「何やねん話って?」と問
いかける。店内に入り、飯が到着してから設楽は真剣な表情で京野に言った。
「もう、果実を食べるのはやめろ」
「は?何言うてんねん」
「聞いたねん。研究所の人に」
「俺の事言うたんとちゃうやろな?」
「言うてへんよ。あれな、突然変異誘起物質が含まれとるんやって。遺伝
子を変異させてしまうらしい。驚異的な身体能力と知能が身につくけど、
食べ続けると危険やと言うてたわ。だから、もうやめとけ」
「やめるわけないやん。これないと、俺はまた前みたいになってまう」
「ええやんか、前のままで」
「ええわけないやろ!!遊助には俺の気持ちがわからへんねん!!」
「そんな事ないよ」
「ある!」
イスから立ち上がった京野の鼻から血が垂れる。
「……おい」
設楽は京野の顔を指さす。また京野の身体がボロボロになったのであった。
「もうええわ!鬱陶しいねんお前!!何もしてへんくせにチヤホヤされや
がって!!カッコつけんなよ!」
そう叫んだ京野は伝票を取りレジへ向かい金を払う。そして、急いでファ
ミレスを出た。京野は持続時間が短くなっている事に焦りを覚えるのである。

【16】
深夜、災害跡へと進入した京野は再び樹木の前へと行き、果実を手に取る。
ちょびちょびカジっとるからアカンねん。丸ごと食えば、永遠の力が手に
入るのかもしれへん。と勝手な妄想で京野は果実を一気に食べてしまう。
そして、再び…いや、前以上の力を手に入れた京野であった。そして、果
実をいくつも盗んでいく。

【17】
数日後の朝、目覚めた京野は身体の違和感に気付き洗面所へ行く。そして
鏡を見ると、前とは比べものにならないほど、身体が変異している事に気
付く。どう見ても人間には見えない。どう考えても化け物である。どうす
ればいいのだろう?病院に行くか?だけど、きっとパニックになるに違い
ない……考えた末に京野は再び果実を丸ごと食べるが、効果がない。
こんなんじゃ、親にも顔を見せる事が出来ない。フードを被り、出かけて
くると家を出る京野。もう家に居る事も出来ない……

【18】
1ヶ月後、家に帰れなくなった京野は、失踪者扱いとなり人探しの張り紙
が街に配られていた。街でひっそりと暮らす京野は、何度か人に姿を見ら
れて逃げられたりしていた。京野は孤独を恐れていた。それ故恋人を求め
ていた。でも恋人が出来ず、そんな京野の心の支えとなっていたのは設楽
の存在だったのである。孤独に苦しむ京野は、設楽に会いたかった。
しかし、会わせる顔が無い。そんな時、公園のゴミ箱を漁っていると偶然
にも設楽を見かけた。
何をしているのだろう?と様子を伺うと、なんと設楽は公園で、あの時の
女性と会っていたのである。再び設楽に対して嫉妬心を抱いた京野、そし
て孤独感に襲われる。居たたまれなくなった京野はその場を去るのであった。

④へ続く

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