ボツプロット「狂い果実のポーエット」①

登場人物)

主人公:京野 純(25)フリーター 
    生年月日 1991/7/13
    低身長で、顔は普通より下。
    女の子にモテない。
    だけど、性格だけはよくあろうと
    善行に励む。詩を書くのが好き。
    モテる設楽に嫉妬心を抱く。

友 達:設楽 遊助(25)ニート
    生年月日 1991/9/4
    高身長のイケメン
    しかし、超無気力で生きるのも
    苦痛に感じている。
    世の中の事がどうでもいい。
    しかし、純の書く詩を見るのは楽しみである。
    女に興味なし。面倒くさい

プロット)

【1】
1987年5月6日 五葉市双見町
閑静な住宅街で遊ぶ子供が、空を指さし母親に言う。
「ねぇママ、見て、お星様」
母親は子供の指さす方向を見て、目を見開く。空には昼間だというのに、
強烈に光る物体が降ってきていた。これは危険だと直感的に思った母親は
子供を抱き上げてその場を離れようとする。すると、衝撃が住宅街を襲い、
母親は子供を抱いたままその場にうずくまった。いったいなにが起きたの
か?母親が子供をその場に残して現場を見にいくと、まさにそこは地獄絵
図となっていた。家屋は倒壊し燃えている。

【2】
タイトル「狂い果実のポーエット(仮)」

【3】
2016年 繁華街

「ここら辺か~?」
京野は服が汚れるのも気にせずに溝へ入り、道路で心配そうにこちらを見
ている男児にそう問いかけた。
「たぶんそこらへん。早く見つけてよ、マッチョマン人形」
急かすな何様だよと思いつつも、京野が笑顔で探し続けるのには二つの理
由があった。一つは単純に善意のため。しかしもう一つは、京野の様子を
見ている2、3人の野次馬の中にタイプの女性がいるからであった。その
女性はボーイッシュでギターケースを担ぎ京野を見ている。
「遊助も一緒に探せよ~」
女性の横には中学からの付き合いで今も友達関係が続いている設楽遊助が
いた。遊助は京野の願いに冷めた目を向けて一言、
「めんどくさい」と吐き捨てる。
「ひっでぇなぁ、お前ってやつは~」

【4】
「もう落とすんちゃうぞ」
とマッチョマン人形を男児に渡して「じゃあ行くか」と設楽に目で合図し
て二人はその場を去ろうとする。すると、「あの、すいません」という声
が聞こえて京野は振り向いた。声をかけてきたのは先ほどの女性で、きっ
と自分の活躍を見て声をかけてくれたのだと京野は思い、顔が若干ニヤケ
ている。しかし、女性が見ていたのは設楽の方だった。
「良ければ連絡先教えてくれませんか?」
ショックを受ける京野を知ってか知らずか、設楽は面倒くさそうにスマホ
を取り出して女性に見せる。そして、女性はありがとうございますと礼を
言って「メール送っても良いですか?」と確認をとった。
「勝手にすればええんちゃう?」
設楽はぶっきらぼうに答え、京野の元へと歩み寄る。京野は少し設楽に嫉
妬心を抱くのであった。

【5】
「彼女出来たら言えよな」
京野は設楽に笑顔でその言葉を向ける。
「女とか興味無いし、彼女とか面倒くさいだけやん」
今まで女性にモテたことのない京野は、モテる設楽のその言葉に複雑な感
情を向ける。
「世の中の99パーセントがどうでもええねん。どうせ皆いつか死ぬんや。
必死に生きる意味なんて無いやろ」
世の中を悟りきった虚しい目で設楽はそう呟く。
「残りの1パーセントは?」
京野の疑問に設楽は「お前の詩」と即答して言葉を続ける。「新作は?」
京野は笑顔になり、ポケットからB5ノートを取り出し設楽に渡した。
ノートの表紙には「詩集 ⑤」と書かれている。
設楽はそれを受け取りノートを丁寧に開いて、新しく書かれた詩に目を通
し、微笑む。「良い詩やな」
「いつか、これを唄にするのが夢やねん」
「夢か、羨ましいわ」

【6】
住宅街にやってきた二人は、五葉市双見町隕石災害跡のクレーターの横を
通りかかる。何故この場所に来たのか?単に二人の家への通り道だったか
らである。災害跡のクレーターの周りは厳重に塀で囲いがしてあり立ち入
り禁止となっていた。塀の二カ所ほどに扉が設置されており、そこに白衣
を着た人が入っていくのが見え、
「よう見るけど、中で何しとんやろな」
とふいに湧いた疑問を京野は口にする。別に何をしていようがどうでも良
くて、とりあえず話題にでもなればいいかなぁという軽い感じだった。
それを聞いた設楽は「クレーターの中心部」と塀の向こう側を見るように
して知識を語る。
「つまりは隕石の落ちた箇所に、未知の植物が生えてきたんやって」
「植物?」
「その植物は今や巨大な樹木となっとるらしいわ」
「あー、もしかして、その樹木を研究するためにあれが?でも大げさやな」
二人は歩きながら会話をしており、塀のあった方を見て京野はそう言った。
そして設楽は答える。
「その樹木に果実が成ったんやって、狂い果実と呼ばれるそれを食べると
な、自分の願望が叶うとも、化け物になるとも噂されとるらしいわ。それ
を研究しとるんちゃうかって」
「噂やろ?」
「あくまでな」
「おっと」
と京野は別れ道で立ち止まり、「んじゃまた」と設楽に手をふった。
「おう。新作、楽しみにしとるわ」
設楽と別れた京野は、“願望が叶う”という言葉に惹かれてしまう。
それを食べれば、女の子にモテるかな?

②に続く


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