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「BCLの楽しみ方」 大村清・知子

「眠い目をこすりながらラジオのダイヤルをまわして、何がおもしろいんだって、キミは思うかもしれない。でも、だまされたと思って、真夜中にラジオのダイヤルをゆっくりとまわしてみてほしい。」



「BCLの楽しみ方」 大村清・知子


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中学生の頃、ラジオが大好きでした。
ラジオ全般です。聴くのも触るのも。


深夜にラジオのダイヤルをまわしていますと、海外の放送が雑音にまぎれて入ってきました。


モスクワ放送や北京放送。普通の中波のラジオでも雑音にまぎれて音が聞こえるのです。それも日本語で。


それらの放送局は、日本語の放送をしていました。ザーっという電波の波の音のはざまに、耳をすませて聞いていました。


今のようにインターネットがなかったので、「世界と繋がっている!」という実感がこの上ない喜びでした。


今はもうありませんが、神戸三宮にあった星電社にはBCLラジオのコーナーがありました。(短波の放送が聴けるラジオ)


そのラジオのフォルムを見ているだけで心が躍りました。


何度も何度も星電社に行きました。
行ったときには必ずBCLコーナーに立ち寄りました。


今は亡き父に、BCLラジオをねだりました。


まさか、まさか、買ってくれるとは思いませんでしたが、父はBCLラジオを買ってくれました。(たぶん自分のこづかいの中から)


本当に今思い出しても、あのときほど嬉しかったことはありません。


まるで星電社の蛍光灯が、何倍にも光り輝いたように思えました。下りのエスカレーターを駆け昇りたくなるような気持ちでした。


それから、短波放送を毎日毎日聴きまくり、受信報告書を丁寧に書き、放送局からきれいな写真のベリカード(正しくはベリフィケーション・カード)が届きました。


その頃に買ったワニの豆本「BCLの楽しみ方」 


「BCLって知っているかい」

(中略)

BCLというのは、BROADCASTING LISTENERS(ブロードキャスティング・リスナーズ)の略なのだ。

日本語にそのまま訳せば、「放送を聞く人」っていう意味だけど、BCLはただ放送を聞きっ放しの人には使わないことばだ。熱心に放送を聞く人だけがBCLとよばれる。


久しぶりにこの本を読んでみると、タイムスリップした感覚になりました。当時のワクワク感が甦ってきます!


著者は、ラジオオーストラリアで日本語放送の番組「サンデー・サザン・エコー」を担当されていました大村清さん、知子さんご夫妻。


リスナーのお手紙や、Q&A、スタジオのお写真や番組の内容など、実際の放送は本を読んだ時には終了していたので、文字を追って想像で番組を楽しみました。


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この本を読んでから、「ラジオオーストラリア」をよく聴きました。ワライカワセミの声を堪能しました。


当時のワニの豆本は、深夜放送を紙面に落とし込んだものが多かったですね。


紙面で読んで、実際のラジオを聴く。またその逆もしかり。ラジオの人気コーナーも、ワニの豆本には収録されていました。


ラジオで楽しみ、本でも楽しむ。


両輪で価値が上がっていくような、そんな感覚でした。


本で読んだラジオ番組を、夜の静けさの中で聴くことは最高でした。とても神秘的で多少の雑音がかえって耳に心地よく、その雑音の音さえも懐かしく思い出されます。


現実と非現実が同居しているような部屋の中で、夢のような素敵な時間が流れてました。


静まりかえった深夜にラジオのダイヤルをそっと、慎重にまわし耳をすませてみると、海外からの声が聞こえてくる!

「こちらは○○放送局です」というアナウンスが聞こえてくる。どこの国のことばかな。なんだか波の音まで聞こえてくるような気がするぞ。



【出典】

「BCLの楽しみ方」 大村清・知子 ワニの豆本


いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。